校則ってどうあるべき?〜1番身近な「法律」を考えよう〜
皆さんは「ブラック校則」という言葉を知っていますか。
学校現場の頭髪指導をめぐり、2017年に、当時高校3年だった女子生徒が地毛の黒染めを強要されて精神的苦痛を受けたとして大阪地裁に提訴した事件をきっかけに、全国的に広がりました。
男子は丸刈り、女子は肩に髪がついてはいけない。
カーディガン・タイツ禁止。
下着の色指定や水分補給の禁止。
不純異性交遊禁止。
現在では、Twitterや様々なメディアを通して、世間広く知られるようになったトンデモない校則たち。私たち生徒・学生にとって最も身近な法律である校則とどう向き合っていけばいいのか、一緒に考えていきましょう!
⒈ なぜ細かな校則は存在しているのか
第二次世界大戦直後までは一部の宗教系学校を除き、頭髪や身だしなみに関する校則はあまり存在していませんでした。しかし1980年代にかけて「生徒・教師間の暴力沙汰」「不純異性交遊」「いじめ自殺」などの校内暴力が全国的に蔓延し、生徒管理・学力保障の観点から細かな校則が多くの学校で定められるようになりました。
これらの厳格な校則は、確かに学校の秩序を維持する意味では効果を発揮しました。しかし遅刻指導を目的に門限時刻に閉鎖しようとした校門に頭が挟まり1人の女子生徒が圧死した『神戸高塚高校校門圧死事件』などをきっかけに校則及び校則指導の厳格さが問題視されるようになっていきました。
そして1990年代の子どもの意見表明権などを規定した「子どもの権利条約」の制定や、2000年代の「コミュニティスクール」などの新たな学校経営の形、そして2010年代の「ブラック校則」批判などにより現在では校則及び指導内容の全国的な見直しが行われています。
2. 校則はなぜ必要なの?
校則の法的根拠として「部分社会論」が挙げられます。つまり、学校は一般社会とは少し距離をおいた「部分社会」と見なされており、そこでの内部規律は法や人権が犯されない限り学校外からは干渉すべきでない、と考えられているのです。
生徒管理という観点からもある程度合理性を見出すことは可能です。松岡亮二著『教育格差』によると、
高校受験を軸にして形成される偏差値ランキングが課題が集中する「教育困難校」を作り出している
高校ランクによって生徒集団としての文化・規律・モラルが異なる(Knipprath 2010)だけでなく、学校適応(吉田2012)・内発的な学習意欲(荒牧2002)・学習努力量(刈谷2001)・学校外教育利用(Enthrich)・大学進学期待(Matsuoka2015a)などにも学校間格差がある。
上記が明らかになっています。
また教員が長時間労働に疲弊し、生徒1人ひとりに対して向き合う時間と気力がなくなっていることも原因の1つとして挙げられます。2016年に行われた調査では、過労死ラインといっても過言ではない「1 週間当たりの学内勤務時間数60 時間以上」の教員は小学校で 33.5%、中学校で 57.6%にのぼります。これにより、生徒管理に時間を割く余裕がなくなり時間短縮のため指導のマニュアル化が進んでいるとも考えられます。
3. 校則をどのように考えていくべき?
こうした経緯・背景を持つ校則をどのように考えていけば良いのでしょうか。「ツーブロック禁止」「上下の下着の色を白に統一」といった人権侵害が明らかな校則は今すぐに淘汰されるべきことは大前提ではありますが、校則そのものを廃止することは難しいでしょう。校則問題は単なる「生徒 vs 学校」という二項対立に収めることができる問題ではありません。
なぜならば、学校の周りにはあらゆる利益関係者が存在しているからです。生徒、教員、学校経営者はもちろん、それを監督する教育委員会、ひいては文部科学省等の省庁、地域住民、保護者など、それぞれが異なる利益関心を持ち、校則に影響をもたらしています。これらのステークホルダーと対話を重ね、納得ができる妥協点を見つけなければ根本的な問題解決には至りません。
これは現実社会で実践されている「民主主義」そのものです。1番身近な「法律」を考えることで民主主義を学ぶ、そんな校則の見方もあるのではないでしょうか。
4.参考文献
・松岡亮二. 教育格差 : 階層・地域・学歴 /. 東京: 筑摩書房, 2019. Print.
・荻上チキ, and 内田良. ブラック校則 : 理不尽な苦しみの現実 /. 東京: 東洋館出版社, 2018. Print.