(詩) 「季節の余韻」




五月と夏の境界は
影の谷のように沈む

道々を支えた杖が
手の中でくずれ
土に環る

たたまれた疲れが
道端に斑点のような影をつくる

この道は前も通った気がする
光彩は花々の内に
吸い込まれ
そのまま朽ちていった

息吹はすぐに
消え失せてしまうのだろうか
少しずつ 潮のように
退いていく

だが それは
死ではなかった
扉は再び 開かれる

花は空の中にあって
焼菓子のように練られた
可憐な葉を
風に散らしている

それはいくつかの輪になって
道端におちてゆく

水の流れる先には
陽光の射す道が開けてくる

季節は新たな意匠を纏い
再生されてゆく