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詩集「揺曳」

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「緑風橋 吹田」より「断層」までの二十七編。
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#詩

(詩) 「断層」

底流の反響 岩壁に降り立つ鳥の影 向きを変えてながれる風 遠退いてゆく震動 潮目

臨  機清
10か月前
17

(詩) 「嵐の記憶」

私達は 強大な嵐が到来する先に 既に時の流れをあらかた掴む 十分な備えと用心をして 庭を片付…

臨  機清
10か月前
26

(詩) 「上り坂」

眠ったままの朝の鼓動と 凍ったままの夏の陰影と それは何時もと同じだったか 何をするでもな…

臨  機清
10か月前
29

(詩) 「灯火のそばで」

干からびた芯棒が 書斎の本棚を支えている 漂泊への想念が消えぬようにと 酷暑の湿気に容赦な…

臨  機清
11か月前
26

(詩) 「祝祭」

午下の陽光を受け止めた大気が 白く霞む 野を刺す新緑が 輪のように静寂を描く 湖畔 剥がされ…

臨  機清
11か月前
34

(詩) 「鼓動」

大らかに羽をおさめて 土に還ってゆく春の鳥達の 高い鼓動に耳を澄ました あの稀な静寂が光源…

臨  機清
11か月前
26

(詩) 「常夏へ」

海辺の砂 砂粒の色 風の色 色と匂い 雲の彼方 心に射す影 影に響く 音の色 高き香り 風に揺れ 夏に揺れ 水面に消える 消える煌めき 夏の影 あらう風 日々の影 樹々の影 影の声 声を聞き 夏を聞く 常夏の音 風の音

(脚韻詩三編) 「夏へ向かって」

ヒペリカムヒデコート 初夏の虫たちにあふれ 近づいた雨を聞こうと 町を染む赤き実に触れ ※ …

臨  機清
1年前
33

(詩) 「季節の余韻」

五月と夏の境界は 影の谷のように沈む 道々を支えた杖が 手の中でくずれ 土に環る たたまれ…

臨  機清
1年前
42

(詩) 「緑風橋 梅雨期」

季節の大気は影をもこもらせ 何もかも壜越しに見渡すようにした そして裏路地を白くくすませて…

臨  機清
1年前
17

(詩) 「無題」 (作品16)

帰る道を見失った 晩秋の荒涼 空をひとつの兆候が覆う 立ち尽くしたわれわれを 変わらずに見…

臨  機清
1年前
23

(詩) 漂泊のフォルム

割れたガラスの欠片に立つ時 ただことりと響いた羽の量感 空中をしなやかに舞いながら 体を尖…

臨  機清
1年前
23

(詩) 「淀川 五月 (叙景)」

鉄橋に断続する唸りが 耳につきまとう 薄い膜になり 屈んで流れる 川の表面を小刻みに 振動さ…

臨  機清
1年前
10

(詩) 「黄昏」

終わらない斜面の道程 裏手で澱んだ河 醒めた記憶の底 薄靄に照る灯り 伸びきった影 浮く疲労 嗅いでいる日没の匂い