(詩) 「淀川 五月 (叙景)」



鉄橋に断続する唸りが
耳につきまとう
薄い膜になり
かが んで流れる
川の表面 おもてを小刻みに
振動させては
火花のように散った

のし掛かってくる
重い潮の
満ち引きのように

厳格に空間を切り込んだ
市街にそびえる建築群が
膨大な町々を押し広げて

垂れ込む空と複雑に交わりながら
とにかくも調和してゆく

淀川の風の圧力を受け止めながら
私はひとしきりそれを見た

道行く人々が水面に反映し
鉄橋の振動がそれらを崩す

川辺に群生する葦原もまた
そこで頻りに風を受け
波打っていたのだ

離れて立った私は しばらくの間
裏に隠れた葦原の中で
はげしく啼き交わす
多くの鳥の声を聞いた

だが葦原へは近づく事ができない
葦原も鳥の姿も遂に見えなかった