オフグリッド建築家として生きる (前編)
エピローグ
「私には固定の住まいはありません」。
このように言うと、多くの方に驚かれます。
平均2日おきにホッピングしているので、日本全国が私の住まいです。
今までに全都道府県は勿論のこと、日本列島の東西南北の端まで訪れています。
様々なところで出会った人は、定住せずに生活していることにまず驚かれるのですが、仕事道具からワンシーズンの生活用品がすべてこのバックパック一つに納まっていると言うと、さらに驚きを隠せない様子です。
10Lのバックパック一つさえあれば、オールシーズンの生活は十分可能なのです。(ワンシーズンでは4L)
私が定住しないという選択をした理由の一つが、「魂にしたがう」という思いからです。
幼いころから社会に対して違和感を持っていました。
洗脳という言葉を聞き、その意味を知ったときには、テレビこそが洗脳そのものではないかと考え、違う角度から物事をみるクセがつきました。
今でこそSDGsなどと騒がれていますが、人と地球すべてが健康であることを以前から願っていたことも、魂にしたがい、刺激を求めて街を飛び出した経験がそうさせたのかもしれません。
小さい頃は都会に住んでいて、喘息に悩まされていました。おそらく大気汚染が原因ではないかと考えられます。夜寝る時になると、横にもなれない程咳込み、非常に病弱な子どもでした。
それが、親の転勤をきっかけに徳島の漁師町に引っ越した途端、ウソのように体調がよくなりました。
その頃、夜、砂浜に身を置くと、何というか心まで洗われる感覚を覚えています。
海で砂遊びをしたり、川で泳いだり、河川敷の竹藪で秘密基地をつくったり、ノコギリをナップサックに入れて山の道なき道を散策したり。家のお手伝いとして、自宅の庭のコンポストで生ごみを土に戻したりと、田舎での生活が自分自身の心身を非常に変えてくれました。
当時は「シックハウス」などの概念もなかったのですが、自分がこのような体験をしてみると、やはり身をもって、化学物質は人間の体にはいい影響は及ぼさないことが分かります。
その様な経験と、デザインやアート、物をつくるのが好きだった事もあり、大人になって建築家という道を選択しました。
実際の仕事の中では、日々経験する矛盾や葛藤などの忸怩たる思いが頭をよぎります。そのような経験をする中で、本当の自分として、人間本来の住空間とは何なのかを意識するようになっていきました。
「魂にしたがう」
全てはそこから始まると考えたのです。
私の基本的な考えとして、SURVIVAL(生存) HEALTH(健康・衛生) MINIMAL(最小)の三つがあります。
この三つにおいて、現在の「家を持たない生活」は、自分で実践・体験をしていることになります。
現在の住宅事情も、三つの理念に沿った考え方になってきています。
例えば、高級なものから質素で本来の価値を持つものへ、本当の意味での自分の健康や、環境に優しい住まいとしての考え方へ移り変わってきています。
とりわけ、今までゴージャスを求めてきた富裕層でさえ、質素で簡潔で本当の価値ある住宅の考え方に移り変わってきている状況があります。
このような流れを見るとき、「魂にしたがう」という概念は、世界のリーダーたちによっても証明される形となり、今後の世界の主流となっていくと考えています。
前述した考えや生活を実践してきた一つの節目として、自分の考えや体験を整理してnoteに記してみようと思いたった次第です。
「10Lバックパック一つで日本列島生活」を通して、本当の暮らしとは何なのか、価値ある生き方とは何かを再考してみたいと思います。
クリエーティブの力で人がもっと本質的に豊かな状況を作り出す活動費に使っていきます。 先ずは自分自身で体系化出来た事などをお伝え出来ればと思います。 次に、過去にクリエーターズシェアオフィスや、デザインアートの実行委員長をしていたように、周りの人と共に新たな活動をしていきます。