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ナチュラルフレグランスの定義いろいろ [NEZ 2021年6月9日]

NEZ Magazineに掲載されたNatural Perfume特集を日本語に翻訳しています。

8名のナチュラルパフューマーのインタビューを読んでくださった方は、「ナチュラル」というものの定義が実に様々であると感じられたことと思います。

今回の記事には、その様々ある定義がまとめられています。
ずっと疑問に思っていたことだったので、とても勉強になりました。

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By Jeanne Doré, Anne-Sophie Hojlo
2021年6月9日 

様々なナチュラルフレグランス:役立つ定義の紹介

私の香水は100%ナチュラルです。はい、でもそれは何を意味するのでしょうか。正確には何が含まれていますか。実は状況によって異なるのです!

これは、ナチュラルフレグランスの概念にさまざまな考え方があるためです。だから、さまざまなブランドを比較した際、表示される香りが様々あるのです。実際、香水ブランドは自分たちの製品に何を適用するか、いくつかの基準と認証から選択することができます。

最も制限の厳しいものから最も柔軟なものまで、主な選択肢は次のとおりです。

Cosmos Organic コスモスオーガニック
この認証はヨーロッパで化粧品やフレグランスに適用され、Ecocertによって付与されます。この認証において、調香師はエッセンシャルオイル、CO₂エクストラクト、天然単離香料、および天然由来のエタノールを使用して得られたアブソリュート(バニラやトンカビーンのアブソリュートなど)のみ使用できます。
また、GMOでなく残留溶媒を含まない限り、天然原料のバイオコンバージョンから得られた成分も使用可能です。(たとえば、植物油で脂肪酸を発酵させて作られた特定のラクトンなど)
動物から採取される成分は、動物を殺すことは認められません。(これはビーズワックスの場合で、カストリウムの場合は該当しません)
最終製品の20%以下の成分が、植物ベース成分の95%と同様に、オーガニック認定を受けている必要があります。
これは調香師のパレットの約20%に相当します。

Cosmos Natural コスモスナチュラル
Cosmos Organicによって認可された香料に追加して、さらにヘキサンなどの石油化学溶剤で得られたすべてのアブソリュート、コンクリート、レジノイド、およびバイオコンバージョンから得られた成分が使用できます。このバイオコンバージョンには合成溶媒が含まれますが、オーガニック成分の割合が最小でないものに限ります。

ISO 9235
100%ナチュラルフレグランスのIFRA定義に対応する規格です。
Cosmos Naturalによって認可された香料に追加して、すべての動物香料とバイオコンバージョンから得られるすべての成分が使用できます。
これは調香師のパレットの約40%に相当します。

ISO 16128
この基準は化粧品とフレグランスの両方に適用され、除外する香料はありません。これにより、企業は天然または天然由来の成分の割合を明記することができます。自然界に存在しなくても、再生可能な炭素(クラリセージを使用して合成されたアンブロキサンなど)が50%以上含まれていれば、合成で入手できます。

 ブランドが主張するナチュラルの概念は、詳細な説明がなくても、見た目よりもはるかに複雑(場合によっては柔軟)であることがこれらの定義によってわかります。

 これは、従来の香水(IFRAの規則に従ってすべての成分が許可されている)からエッセンシャルオイルのみを含むものまで、さまざまな処方の可能性を示す図です。
使用できる成分の種類と調香師のパレットの割合が、オプションごとに示されています。

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Authorized ingredients according to the category of natural perfumes vs. a conventional perfume. © Nez


各タイプの成分が何に対応するかを理解できるように、ここで定義しておきましょう。

Absolute アブソリュート 
コンクリートをアルコール洗浄することによって得られる、ワックス状の物質を含まない精製されたもの。(ワックス自体は天然原料の溶媒抽出から得られます)

動物性香料
現在使用されている主な動物性香料には、比較的まれではありますが、ビーズワックスアブソリュート(昆虫を殺さない)とカストリウム(海狸香:ビーバーを殺すこともある)があります。アンバーグリス(龍涎香)とシベット(麝香猫)は非常にまれに香水に使用されていますが、マッコウクジラや麝香猫を殺すことはありません。マメジカを死に至らしめた天然ムスクの使用は、香水製造において固く禁じられています。また、齧歯動物の石化した尿からできるヒラセウムは、ほとんど使用されていない成分ですが、動物を殺すことはありません。

Bioconversion バイオコンバージョン(生物変換)
微生物(酵素、バクテリアなど)の特性を利用して、天然原料を1つまたは複数の芳香化合物に変換するというプロセスで行われます。

CO₂ エクストラクト
CO₂抽出によって得られた生成物のことを指します。具体的には、高圧で高温の二酸化炭素は、植物の匂い化合物を抽出するための溶媒のように機能する際、超臨界と呼ばれる状態に達します。膨張すると、CO₂は気体状態に戻り、抽出物に残留物が残らないという仕組みです。

コンクリート

天然原料の芳香物質を揮発性溶媒抽出によって得られる、固体または半固体のワックス状生成物です。アルコールで洗浄した後、コンクリートはアブソリュートとなります。

エッセンスまたはエッセンシャルオイル
天然原料の蒸留またはコールドプレスにより得られる芳香化合物です。
蒸留にはさまざまな方法があります。水蒸気蒸留では、加熱された水が蒸気を生成し、有機物に強制的に通過させ、芳香化合物を一緒に運びます。そして熱水蒸留法は、沸騰したお湯に材料を浸し、加熱された混合物によって生成された蒸気が芳香化合物を引き出します。

単離香料
エッセンシャルオイルを他の成分から分離する分別蒸留から得られる芳香化合物です。たとえば、シトロネロールは、ユーカリのエッセンシャルオイルから分離できます。

レジノイド
植物由来の原材料やバルサム、樹脂、ガムの乾燥部分を揮発性溶媒抽出で得られるものを指します。


下記の方々の貴重な支援に感謝します。
Serge De Oliveira(Robertet)、Irène Farmachidi、Médrick Germain(Technicoflor)、Pauline Raffaitin(Ecocert)、Delphine Thierry(Inspiration libre)

Illustration by Marion Duval for Nez.

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原文はこちら
https://mag.bynez.com/en/reports/natural-perfumers/the-many-facets-of-natural-perfumery-some-useful-definitions/

(画像:NEZ THE OLFACTORY MAGAZINE)


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