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中国における香水のビッグチャンスとは [VOGUE BUSINESS 2021年7月21日]

VOGUE BUSINESS の記事を翻訳しています。

記事に出てくるScent Library社は中国語では「気味図書館」というそうです。漢字が読めるので、なんだか面白い。

つくった香りも、とてもユニーク!
白湯の香りってどんな香りなのでしょう。

「涼白開」と「姜絲可楽」を開発した。80~90年代生まれの若者にとって、前者は(水道水を飲み水にするために)沸かした後に冷ました白湯、後者は風邪をひいたときに母親が作ってくれたショウガ入りホットコーラという子どもの頃の記憶を引き起こすものだった。

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中国における香水のビッグチャンスとは

中国では国内のビューティ・スキンケアブランドが台頭しているが、香水においては長らく国際的な大手企業が独占してきた。しかし、Z世代の新しさと地元企業への関心がこの状況を変え始めている。

BY EVELYN WANG
2021年7月21日

中国の美容・スキンケア産業は成長を続けているが、規模的に遅れているカテゴリーが香水だ。

顧客は、中国で理想とされているシャネルの5番のようなクラシックな香りに惹かれたり、グローバルブランドのニッチな香りを試したりする。国内のブランドはまだ定着していないが、Z世代が地元企業や新しいブランドへ関心を示しており、盛り上がりを見せ始めている。新規参入のブランドは、VCの関心を集めている。中国の香水販売会社であるScent Libraryと中国のフレグランスブランドであるTo Summerは、過去5年間に資金調達を行っており、投資を受ける新しいフレグランスブランドの数は昨年からさらに増えている。

このような成長にもかかわらず、中国の香水市場はまだ普及率が低いのが現状だ。iResearch社のレポートによると、中国の香水消費規模は、2017年の61.6億人民元(約8億6700万ドル)から2020年には125.3億人民元(約17.6億ドル)へと急速に拡大している。しかし、今日世界の人口の20%近くを占める中国が、2019年の世界の香水消費量に占める割合はわずか2.5%だ。

現在中国の香水市場は、エスティローダー、ロレアル、コティなどの国際的なグループによって支配されているが、まだ眠っているポテンシャルは十分にある。近年では、ジョーマローンやフレデリックマルのようなニッチな香水も登場し、バイレードディプティックのような人気ブランドもManzanita Capitalの力を借りて参入している。確かに、原料や職人技術、さらにはグローバルマーケティングなど、海外ブランドが築き上げた障壁は国内の競合他社が参入するのを困難にしている。

中国の香り

ハイエンドの王座は簡単には揺るがず、ニッチなパフューマーは希少だ。しかし、この両極端の間にある広大な市場が突破口となっている。ローカルブランドは、中国の美容製品の台頭を教訓に、コストパフォーマンスの高い製品で足場を固め、「中国的なストーリー」で市場との距離を縮めている。

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Beastのフレグランス「Panda Poo-poo」 


評価額3億元(約4225万ドル)の「Scent Library」に、アメリカ版のお手本が見つかった。ニューヨークの香水ブランド「Demeter Fragrance Library」だ。1993年に設立され、価格が手ごろなことで知られている。これに対応して中国のScent Libraryは、より軽い香りで低価格のルームスプレーとオードトワレのカテゴリーを推進し、マスマーケットにアピールすることを選択した。

Scent Libraryがブレイクしたのは、2017年に発売した「Liang Bai Kai(涼白開)」という香りがSNSで話題になったことがきっかけだった。翌年のTmallの「独身の日」のセールでは40万個を売り上げ、Scent Libraryは子供の頃の記憶につながる香りを開拓することになった。

フレグランススタジオRue de VilliersのオーナーであるDu Mangmang氏によると、中国スタイルの香り、「東洋的な」香りは、今後も国内の主流になるという。つまり、「感情的に共鳴する嗅覚の記憶は共有されている」ということだ。古代から受け継がれてきたアロマセラピーの処方や、文学者の詩の中の香りの描写など、西洋のライバルがまだ手をつけていない、無尽蔵のインスピレーションの宝庫なのである。

中国国内の化粧品メーカーの成功は、Z世代の消費のコアに「アーリーアダプターになりたい」という願望があることを証明している。ディオールのサドルバッグとキャンバスのVANSシューズを自由に組み合わせ、ドレッサーをジョーマローン、イヴサンローラン、アルマーニの香水で埋め尽くしながら、「中国の香り」を探している世代だと言えるだろう。

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7月上旬に上海初の旗艦店をオープンした中国の高級フレグランスブランド「Documents」


マーケットへの参入

Transparency Market Research社の発表によると、フレグランスオイルと香水の世界市場では、4つの主要グループが約50%のシェアを占めている。その4つのグループとは、スイスのジボダン社とフィルメニッヒ社、アメリカのインターナショナル フレーバー&フレグランス社(日本法人はアイ・エフ・エフ日本株式会社)、ドイツのシムライズ社だ。Jumeili社のデータによると、中国国内ではヨーロッパの上場企業が中国のフレグランス市場の80%を占めている。

これらの大企業は、顧客に合わせた製品をダイレクトに提供することで、中国人ファンの獲得に取り組んでいる。2019年には、フィルメニッヒが世界初のワンストップ高級香水センターの構築を目指して「上海パフュームクリエイティブセンター」を完成させたほか、昨年10月にはジボダンの最大規模の工場が完成し、常州で生産を開始した。これにより、ローカルブランドとの協力関係を強化することができる。7月上旬に上海初の旗艦店をオープンした中国の高級フレグランスブランド「Documents」は、ジボダンと協力して香料含有率が15~25%の6種類の香水を開発した。

ジボダンの中国マーケティングマネージャーのZhai Yujia氏によると、ジボダンでは同時に、Tmallイノベーションセンターと協力して中国の顧客にアピールする香水を作ったという。また、中国にデジタルチームを設置し、市場機会に対応している。

業界的には現状は徐々に変化している。ジボダンは、国内ブランドのフレグランスを作る際に中国企業を起用している。Zhai Yujia氏は次のように話す。「調香師やマーケティング担当者は、中国の文化や現地の消費者の嗜好をどのように製品に取り入れるかを議論している。また、アジアや中国の才能ある人材をより多く育成している。例えば、ジボダンの中国におけるチーフパフューマーはJasmine Liuのような。」

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フランスのフレグランスブランド「Diptyque」キャンドルからディフューザーまで全てを網羅する


Zhai氏が懸念しているのは、「チャイナスピード」が、香水業界のスローなビジネススタイルに影響を与えるのではないかということだ。「国内市場の発展や、新世代の製品が発売されるスピードが速すぎて、現地のブランドがきちんと研究開発する時間がない。この壁を乗り越えるのは難しいだろう。」と彼女は述べている。

今後の課題

小規模なブランドにとって、香水の生産はより困難なものとなっている。10年前に設立されたブランドFu-xiang Wangは、2019年に閉鎖することを発表し、中国国内の香水業界に打撃を与えた。同ブランドは声明の中で次のように述べている。「Fu-xiang Wangの知名度は高まっているが、3月または4月以降、供給が需要を満たすことができず、毎週限られた量しか商品を供給することができなかった。」

Uttoriの創業者であるLi Le氏は、「メイクアップやスキンケア製品に比べて香水のボリュームは非常に小さく、HuaxiziやPerfect Diaryのような規模を短期間で構築することは困難だ。」と語る。「香水は必要のない商品であるため、国内の消費者の意識はまだ未熟である。新しいことに挑戦しなければならないし、消費に関して安定した習慣を形成するには至っていない。」

消費者の信頼を得るには時間がかかり、ニッチフレグランスが需要と供給の矛盾を解消するのは容易ではない。そのため製品は「スローワークが良い結果を生む」という格言を心に留めておく必要がある。インディペンデントパフューマーのYiliは、自分のブランドを立ち上げる際にありとあらゆるフレグランス会社に連絡を取ったが、どこも注文に応じてくれなかったという。To Summerにも同じようなジレンマがあった。共同創業者のShen Liは次のように話す。「To Summerは香りのする石で作られており、その石は世界中から運ばれてくる。今のところ中国国内でスムーズなサプライチェーンを構築できる工場はなく、販売数が限られている。」

Fu-xiang Wangと比べると、To Summerや同様の企業はコミュニティを構築するために利用できるソーシャルメディアの数が多く、WeChatのミニプログラムで直接販売を行うことができるため有利な立場にある。比較的簡単に普及させることができるため、ブランドは実際の製品に磨きをかけることに注力できる。しかし、この時代に成功するためには、香水ブランドはチャンスをつかみ、製品の完成度を高めることに専念し、特に消費者の信用を育む必要がある。

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原文はこちら

画像:VOGUE BUSINESS


参考
https://chinamktginsights.com/a-slow-marketing-strategy-fragrance-brand-to-summer-leverages-scarcity-marketing-authentically/



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