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料理男子はこう育つーー⑪やっとできた「おもてなし」〜アップルパイからご飯まで〜

 こんどの週末も、先週の土曜日がまた来たらいいのにっ!!! ボクは先週の金曜日がずーっと待ち遠しくて、金曜日と土曜日が最高な2日だったんだ。前に料理男子⑥で話したんだけど、ボクのお母さんの友達は、料理が上手な人が多くって、それで、ボクもみんなのことが大好き! お母さんの友達は、ボクの友達だと思っているよ。

 先週金曜日、やっとお母さんの友達、いやいや、ボクがちっちゃいころからだぁーーーーいすきな友達のシタッチが来てくれることになった。金曜日、ボクは運よく学校がお休みで、朝からもううれしくてうれしくて。お母さんに「お客さんが来るんだから、片づけて!」と言われても、シタッチとこれで遊んだら楽しいなぁとか、こないだもらった鉄道大百科も見せたいなぁとか、次から次にやりたいことが浮かんじゃって、お母さんに怒られてばっかりだった。本当のことを言うと、月曜日ごろから楽しみすぎて、前の日の水曜日や木曜日も学校を休みたいくらいだったんだ。

 なぜって、ボクはシタッチに料理を作って、食べてもらいたかったから。ちょうどお母さんが買った北信ファームのりんごがたくさん届いていて、お母さんは「秋映」を注文したんだけど、運よくその中に「紅玉」が4つも入っていた!

 紅玉って知ってる? 「こうぎょく」って読むんだよ。りんごの種類。ボクはりんごの種類をいろいろ知っていて、ようちえんのとき(東京の府中にいたとき)も、いろんな種類のりんごを食べてみたくて、買い物に行って知らない名前のりんごが売っていると買ってもらっていたよ。スーパーのオオゼキってところには特にいろいろなりんごが売っていて、「世界一」っていうりんごもあって、大きかったなぁ〜。

 それでね、紅玉っていうのは、お菓子づくりにぴったりのりんごなの。なぜなら、すっぱいから! お菓子って甘いだけじゃダメなんだよ。甘みのなかに、すっぱいもあるから「りんごだぁ〜」って感じられるの。料理男子②にも書いたけど、ボクが漢字を覚えた、年中さんのときから大好きな本『りんごのお菓子レシピ』の最初にも「紅玉がおすすめ」って書いてある。紅玉は、りんごの中でも香りや酸味が強くて、加熱すると存在感を発揮するんだって!

 紅玉がおうちにある。それなら!「シタッチにアップルパイを作るぞー」って、りんごが届いたときから決めていた。だから、お父さんに「紅玉は使っちゃダメだよ。勝手にむかないでね」って頼んでおいた。お母さんはりんごを注文するだけで、むくのはだいたいお父さんだから。

 シタッチにアップルパイを作るって決めていたから、もうその前の週の日曜日には生クリームとバニラビーンズ、そしてラム酒を買っておいた。これはアップルパイの具になる、「りんごのクリームソテー」を作るため。ボクはりんごのクリームソテーなら、もう本を見なくても作れるよ。何回も作ったことがあるからね。
 早くりんごのクリームソテーが作りたくてたまらなくて、学校を休みたかったし、それで「放課後のスケートの練習、休みたいなぁ」って言っちゃったときもあるくらい。もちろん学校にも練習にもちゃんと行ったよ!

 木曜日の夜、お母さんがやっと「明日お休みだし、作っていいよ」って言ってくれた。生クリームを早めに買いすぎたなぁってちょっと後悔してたんだ。やっぱり新鮮さも大切だからね!

 りんごのソテーにラム酒を入れるのは初めてだった。本には「風味が豊かで、香りと深みがある味わい」って書いてあるから、ずっと使ってみたかったんだ。味見をしてみたら、うんオッケー! いつもよりおいしくできた。あとは、シタッチが来てからパイ生地を作れば大丈夫。
 
 シタッチが来た日は、お母さんがお手伝いしている田んぼの稲刈りだった。ボクは稲刈りもはざかけも、ちょっとは手伝ったけど、頭の中はアップルパイを早く作りたくってしょうがなかった。お母さんとシタッチに、「もう帰ろ〜、帰ろうよー!」、「帰ろうってばぁ!」って100回くらい叫んだ。

 稲刈りのお昼の休憩のときにパイ生地を作り始めたら、「あ!牛乳がない」って気づいて、急いでスーパーに買い物に行った。そのとき、「夕ご飯はお好み焼きにしよう!」、「明日はなめこ丼にしよう!」って思いついた。
 お好み焼きは、学校で『ばばばあちゃん』の絵本を何回も読んで3回くらい作ったことがある。なめこ丼は『きのこ図鑑』にのっていて、いつか作って食べてみたいなぁって思ってたの。料理はレシピ本だけじゃなくって、いろんな本にのっているし、スーパーにもちっちゃいカードがいくつも置いてあるから、作ってみたいなぁ、食べてみたいなぁってものがたくさんありすぎ。でも、お休みは土日しかないし、放課後は練習があるし。困っちゃうよ。

 ボクの「早く帰ろー」攻撃はまったく意味がなく、はざかけが夕方5時すぎにやっと終わって、ボクは家に一番先に入って、ちゃっちゃと手を洗ってすぐに冷蔵庫からまとめておいたパイ生地を取り出した。生地を2つに分けて、麺棒で伸ばして、きのう作ったりんごのクリームソテーをのせて、細長く切ったパイ生地をタテとヨコに並べて、そしてオーブンへ。
 アップルパイは温度を210℃、180℃、170℃ってちょっとずつ下げながら焼いていくんだよ。これは大事なこと。オーブンをセットしてくれたお母さんに「210℃で10分ね!」って頼んだら、「え、そんなにすぐに焼けるの??」ってビックリされて、こっちがビックリだよ。大事なこともちゃんと覚えてないんだからー!

 アップルパイがおいしそうに焼けたのを確認して、ボクはすぐにお風呂に入って、出てきたらすぐにお好み焼き作りに取りかかった。ああ忙しい、忙しい。ホットプレートでお好み焼きを焼いて、食べて。もう頭の中は、「はやくアップルパイを出したい! 食べてもらいたい!」の気持ちであふれちゃって落ち着かない。

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 食後のアップルパイは、本当に本当に最高だった。この作り方はパイ生地にバターを使わないから、サクサクでさっぱりしていて、そして紅玉の酸っぱい感じがとってもおいしいんだ。シタッチに「おいしいよ!」って言ってもらえて、しあわせしあわせ。にやにやがとまらなくって、夢の中でもにやにやしてたよ。
 
 はやくまた、だれか遊びにきてくれないかなぁ〜。今週の土日もだれか来てくれたらいいのになぁって、こないだ買ってもらった紅玉はもうクリームソテーにしてあるよ!


〈参考文献〉
吉川文子「バターなしでもとびきりおいしい りんごのお菓子レシピ」世界文化社
さとうわきこ「ばばばあちゃんの なんでもおこのみやき」福音館書店
「小学館の図鑑・NEO22 改訂版 きのこ」小学館
「JR私鉄全線 地図でよくわかる鉄道大百科」JTBパブリッシング


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なめこ丼はバターしょうゆで食べるよ!

料理男子⑥お母さんの友達はみんな料理が上手
https://note.com/youreditor/n/n031bf787801c
 
料理男子②ボクは料理本で漢字を覚えた
https://note.com/youreditor/n/nc445d48413ab


 
 

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