見出し画像

#31文字の空間  2023年 1月

金色の龍が生まれる朝焼けを
仰ぎ見るなり かたわらに君


「あけまして」の挨拶をしないことで
ふたりの道が離れたと知る


一度しか感じられないこの刹那
小瓶に詰めて永遠に眺む


一度しか、この海にはあらわれない
そんな奇跡にボクらは出逢った


だってさ。この道を進んだらもうキミに
会えなくなるよ、だからイヤだよ、


雪壁に遮られたしこの道は
わたしの孤独を愛してくれる


歩いても手をつなげない君のこと
だいすきだけど選ばなかった


洗車機の中から見えた水滴が
きらめきゆれて音になるよう


この頬を通り過ぎてく指先の
香り恋しや仄かな煙草


曇天の雲間をのぞく三日月は
白き風車をそっと見守る


この先は交わることのない未来
あなたの色にはもう染まらない


この瓶に今日の空色つめこんで
真夏の海でカンパイしましょ


教室で君とポチったイロチガイ
卒業してもオソロでいようよ


悪びれない嘘も本音も聞き飽きて
開かない窓にさよなら告げる


晴れた日はあなたに会いたくなる
雨の日はあなたが恋しくなる


あの子にも同じキスしたの?と拗ねるキミが可愛いから内緒


内臓を喰らうその唇をただ見つめ命を感じてドキリとする


アディダスの真っ赤な色したスニーカーお揃いにする くらいには恋


足の指ぶつけて小坊主悶え顔 それもかわいい。そんな夕暮れ


なんの話してたかなんて忘れたわ
だって蕾はもうふくらんでる


好きな色 食べ物 口ぐせ
覚えてる
そんな程度にはまだ想いびと


大好きな味噌ラーメンすら味気なく思えるほどに まだ想い人


どことなく似ているような眼差しに見惚れるくらい まだ想い人


タテマエで宝石みたいなチョコレート送るくらいは まだ想い人


街角で流れた恋歌口ずさむその程度には まだ想い人


星占いあなたの射手座を横目で見ちゃうくらいには まだ想い人


君にしか…と彼女に告げたくちびるで
わたしの肌をただ愛であげて


まなびやの陰が伸びてる昼下がり
キミとボクだけ非常階段


声だけでいいからもいちど聞きたくて
天へつながるコールを鳴らす


でもねまだ
あなたが好きよ
まだ好きよ
空が滲んで
悔しいけどね


沈黙を愛せるようになったとき
ボクらはひとつレベルが上がる


昔から好きと嫌いの真ん中で
揺れる心をこう呼んだ 「恋」


アドレスのあなたの名前にひっそりと寄り添っているわたしの気持ち


流し目でネクタイ緩めた首すじに
もう重ならないぬくもりを知る


雪空にひっそり浮かんだ三日月よ
伝えてください。
もう元気だよ…


掃除機をかけなくても死にはしない
ただ心だけ少し死にゆく


幸せなはずだよね今あの人と
雪も降ったしドーナツ食べたし


あの日からもう一年が経ちました
記憶のわたし笑顔でいるかな


いい出汁がでたよ
うどんかラーメンかいやいやこそは卵雑炊


不用意に投げつけられた理不尽は
ミルクの飴になる魔法など

受けついで吾子に伝えた春の味
だし巻き卵とお雑煮の味


ふたりきり
空が近づく18階で
雲みたいねって食べたマシュマロ


缶ビール最後の一滴仰ぐ空
まずいところを見られちゃったな


より添っていたとおもえば離れたり
姉弟(きみたち)、サクランボみたい


空色のソーダの上の赤いそれ
宝石みたいと見つめるふたり


細雪
色味をなくした街並みを
ぶらりゆきゆく雪見風呂


雪空の月夜を映す白肌に花びら咲かして口吸い残し


雪かぶるお墓がなんだか寒そうであなたの肩に首をもたげた


雪つもりみやまに夜が訪れて昔話の世界とつながる


しんしんと枝葉を染めたその白は言葉も灯さず重みを増して


黒雲と荒ぶる冬の波しぶき水平線はひかりを孕む


留守電のコールの先の沈黙にひとり佇む一輪挿しの


4コール
あなたと決めた留守電を切るタイミング暗号みたいだ


夕焼けに明らかになる孤独たち
あなたの残した留守録の声


誠実じゃないよね居留守するなんて
ごめんね、今は泣いちゃいそうで


留守録を残してくれた誠実と
不器用のまま向き合えなくて


「新しいメッセージを預かります」
機械の声に新しい花

この記事が参加している募集

私の作品紹介

よろしければサポートお願いします♡ いただきサポートを美味しいお酒という栄養に変えて進化していきます✨