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「あなたの沖縄」読書会レポート

山本幸大(93年生まれ 兵庫県出身)

こんにちは。
今回の投稿は、現在東京メンバーで行なっている読書会のレポートです。

現在、約30名いる「あなたの沖縄」のメンバーのうち、3分の1は東京に住んでいます。上京した沖縄県出身者や沖縄にルーツを持つ人、県外で生まれ育った人など、その出自は様々です。
そんな東京メンバーが、「せっかく近くに住んでいるんだから、顔を会わせて話し合ってみたいよね」ということで始めた読書会。

昨年の秋に第一回目を行い、その後は月に1度のペースで、これまでに3回実施をしてきました。

始まったばかりのこの取り組み。まだまだ方向性を模索している状態ではありますが、メンバー同士で話し合いながら、読む本を選んだり、運営方法を考えたりしています。そんな、少しずつ充実していく会の模様をお伝えできたらと思います。

第一回目(11/13)

テーマの本:『はじめての沖縄』(岸政彦/新曜社/2018)

一回目というものの、実はそれ以前に顔合わせの飲み会がありました。
高円寺の沖縄料理屋で泡盛を飲みながら誰かが呟いた、
「どうせなら飲むだけじゃなくて、読書会とか何かテーマを決めて定期的に会おう」
という言葉がきっかけでした。

そして昨年11月に行なった一回目では、社会学者の岸政彦さんが執筆された『はじめての沖縄』を取り上げました。
沖縄県外で生まれ育った岸さんが沖縄と出会い、「ナイチャーとして」どう沖縄と関わるのかということを綴ったエッセイです。

「東京在住のメンバーが沖縄を語り合う」というのは、沖縄で沖縄のことを語り合うのとは、やはり選ぶ言葉もその受け止め方も変わってくるように思います。
メンバーも、これまで沖縄以外の場所で暮らしてきた時間の方が長いという人が大半でした。

初顔合わせの飲み会でふと話題に挙がったこの本が、自然と一回目の課題本になったのも、私を含めたメンバーの多くが、「自分に引きつけて考えたいけど、そう考えるには一歩先に進まないと見えない”何か”を感じている」人たちだったからなのかもしれません。

緊張からか、最初は言葉少なに感想を述べ合っていたものの、自分と同じ感想を抱いた人がいることを知ったり、あるいは全く異なる視点からの意見に驚いたりと、終わりを迎える頃には話し足りない気持ちでいっぱいになっていました。

初回のぎこちなさが残る読書会ではありましたが、「語った意見を受け止め、一緒に考えてくれる相手のいる心地良さ」をひしひしと感じながら帰途につきました。

第二回目(12/10)

テーマの本:『つながる沖縄近現代史』(前田勇樹・古波藏契・秋山道宏/ボーダーインク/2021)

二回目の課題図書は『つながる沖縄近現代史』。

この選書のきっかけになったのは、”シブヤ大学”です。
”シブヤ大学”とは、渋谷の公共施設などを利用して行われている市民講座のこと。
昨夏、この書籍をテーマに、著者の3人を招いて講座が開催されました。
私ともう一人の読書会メンバーは、その講座で当コラム主宰の西さんと出会い、「あなたの沖縄」に誘ってもらいました。

そんな経緯もあって選ばれたこの本。
沖縄に関する本を読んでいく上で、やはり沖縄の歴史を知る必要性があると皆が感じていたことも大きかったと思います。

この日は冒頭で、本書の第5章とコラムをご担当された萩原真美さんにもお越しいただきました。

一回目の『はじめての沖縄』の時はエッセイという文体だったこともあり、自身と重ねて(あるいは重ならない部分の)意見を語る人が多かったのですが、この二回目は「学びの会」といった印象の濃い回になりました。

正直、歴史の本というのはエッセイに比べると、現代に生きる自分に重ねて考えるのは難しくもありました。
でも、文字で書かれた史実も、私たちの祖父や祖母、その先の祖先にとっては「その時を生きてきた現在史」。
どうやって想いを馳せていくのかを改めて考える良い機会となりました。

第三回目(1/14)

テーマの本:『ヤンキーと地元』(打越正行/筑摩書房/2019)

そして先週行ったばかりの三回目。
著者の打越正行さんを招き、『ヤンキーと地元』をテーマに話し合いました。
また前回に引き続き、萩原さんにもご参加いただきました。

『ヤンキーと地元』は、暴走族や地元の先輩後輩関係の中で生きてきた沖縄の若者を対象に、社会学者の打越さんが10年以上に渡り聴き取りを行なってきたフィールドワークの記録です。

参加者は今までで最多の8名。
これまで4〜5名で行なっていましたが、人数が増え、ゲストも招いたりと、回を重ねる毎に少しずつ充実した内容になってきていることを実感できる日となりました。

この日の読書会で一番多かった感想は、
「中学の時に隣の席にいたあの子はどうしているだろう」
というものでした。
確かに、『ヤンキーと地元』で描かれている人たちは、中学までは私たちの隣の席に座っていた”彼ら/彼女ら”でした。
しかし高校、大学と進学していく中で、次第に”彼ら/彼女ら”との接点は少なくなっていったように思います。

思い返すと、この日多くの意見が交わされた話題は、どれも根底の部分で繋がっていたように思います。
つまり、「自分の周囲の見えやすいものだけを世間と思い込み、そのほかを見ようとしないこと」への気付きです。
昔、隣の席にいた”彼ら/彼女ら”は居なくなったわけじゃない。近所に、同じ社会にずっと住んでいるということ。
見えなくなっていたんじゃなく、見なくなっていただけだということ。
そんな当たり前のことを、改めて振り返らせてくれた本でした。

最後に

私は、母は沖縄生まれであるものの、自身は関西で生まれ育ち沖縄に暮らしたことはありません。
ルーツとして気になるけれども、ウチナーンチュではないという微妙な距離感。
沖縄との向き合い方は、これまでも模索してきましたし、これからもそれは続くと思います。

しかし、この読書会に参加して出自も年齢も経歴もバラバラのメンバーと出会い、それぞれが自分の距離感で沖縄を語っていく姿を見てきました。

他人事として突き放すのではなく、かと言って自分事として安易に踏み込むのでもない。
そうではなく、コラムの名の通り、「自分にとっての沖縄」を今いる場所から考えていくことから始めたらいいんだというヒントをもらったように感じています。

来月以降も読書会は続きます。
時には映画の会をしようという話も出ています。

この記事を読んで下さった方のおすすめの一冊を、是非教えてください!

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