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沖縄特撮ヒーローと僕

うえず(98年生まれ 宜野湾市出身)

 沖縄といえば何を思い浮かべるだろうか。海、エイサー、沖縄そば、のんびりとした雰囲気、米軍基地……。
 僕が真っ先に思い浮かべるのは、特撮ヒーローである。沖縄は世界でも有数の特撮ヒーロー王国なのだ(僕が勝手にそういっているだけ)。

 沖縄の特撮ヒーロー王国の礎を築き、盤石なものにした作品「琉神マブヤー」は2008年に沖縄県内で放送がスタートした。その後、外伝も含めテレビ作品シリーズを展開し、映画化もされ長く県民に愛されている。
 また、その後を追うように2011年からスタートした、「ハルサーエイカー」もテレビ3シリーズ、劇場版映画作品いずれも人気コンテンツとなっている。僕や友人たちのような濃い特撮ファンたちから熱い支持を受けていた。

 沖縄発のヒーロー番組「琉神マブヤー」のテレビ放送がスタートした時、僕は小学校の高学年だった。この年代になるとみんなが「仮面ライダー」や「ウルトラマン」といった特撮番組を卒業していくが、僕は卒業どころか年々夢中になっていた(今でも変わらず大好きです)。しかし、方言のセリフが連発され、安っぽい着ぐるみ感のある怪人が登場する予告映像を初めて見た時、「マブヤーダメかも~」と思っていた。
 というのも当時の僕は、沖縄文化にどことなくダサさを感じていたのである。テレビ番組に関しては、沖縄のバラエティーやドラマをチープだと感じたし、方言セリフやあるあるで笑いを誘うことが「内輪ノリ」のようで嫌だった。
 なので、「内地(特に東京)のドラマやバラエティーこそが最高で、ましてや特撮ヒーロー番組は内地でしか作れない」と思っていた。だが、いざ本編を観てみると、そのマイナスな気持ちは見事に吹き飛ばされた。 
 地元沖縄で制作され、沖縄が舞台となった「マブヤー」は、すぐに僕を虜にした。

 「マブヤー」のあらすじを簡単に紹介すると、悪の組織「マジムン軍団」に奪われた沖縄の文化や自然の力が宿った石「マブイストーン」を、ヒーロー「琉神マブヤー」が取り戻す、というものだ。
 ストーリーもキャラクターも全体的にゆるい感じで話は進んでくのだが、特に「マジムン軍団」は本当に敵か? と思うくらい、ゆるゆるでかわいげがある。
 例えば、リーダー格の「ハブデービル」はめちゃくちゃドジでよく失敗をするのだが、そのたびに部下の「マングーチュ」に正座をさせられて叱られる。その様子がとてもおかしくて、見ているこちらもニヤニヤしてしまう。

 そんなコメディチックなまま終わると思いきや、終盤の戦闘シーンになると、途端に雰囲気が豹変。当時の「仮面ライダー」や「スーパー戦隊」の戦闘シーンは、CGなどを駆使した派手なエフェクトやケレン味のあるアクションが主流だったが、「マブヤー」は戦闘中は常に太鼓の重低音が鳴っていて、エフェクトも必要最低限のモノだけで低い「ズシッ」「ドカッ」のような打撃音本当に飾り気が少なく、迫力や生々しさにあふれるアクションシーンだった。

 また、「マジムン」たちのテンションも変わり、さっきまでかわいげたっぷりだったのに、シリアスな雰囲気にな声のトーンも3段階くらい落ちて、近所に住むヤンキーのにぃにぃたちみたいで怖かったことを覚えている。
 というものの、親にマブヤーのソフビ人形を買ってもらったり、沖縄の総合スーパー・サンエーの玩具コーナーでと流れていたマブヤーのDVDを見続けたり(親の買い物を待ちながら)、サンエーで行われていた「マブヤーショー」をちびっこに囲まれながら見たりした。

 そんなマブヤー漬けだった僕に、また新たな衝撃が走る。なんとマブヤーとは別の新シリーズの沖縄特撮が始まるというではないか。しかも主役は女性だという。当時は今ほど女性ヒーローはがいなかったし、現在でもメジャー特撮作品で女性主人公の作品はほとんどない。
 僕の中で新しいシリーズの開幕に対するワクワクと「マブヤー」という高いハードルを超えられるのかという不安がせめぎあう中で本編を案の定、というか自分が想像していた以上に夢中になった。

 マブヤースタッフが再集結ということでクオリティーに関してはもともと不安はなかったが、今までよりもアクションシーンと日常パートの小ネタがさらに洗練されていた。特にデザイン面は僕の好みのど真ん中。
 主人公のハルサーエイカーのデザインは、かなり奇抜なマスクデザインながら、全体的にスタイリッシュでとてもカッコいい。敵対勢力の怪人のドブーとチリーはグロテスクさとカッコよさを兼ね備えていて、怪人好きの僕にはたまらないデザインだ。

 その頃、僕は中学生になっており、勉強や部活の合間を縫って録画を繰り返し観るくらいには「ハルサーエイカー」ハマっていた。その後も「闘牛戦士ワイドー」という新しい特撮シリーズが始まったり、「オキナワンヒーローズ」と題してマブヤーやエイカーたちをはじめとした沖縄特撮ヒーローたちがクロスオーバーしたお祭り的シリーズが放送されたりと、沖縄特撮番組は一大カルチャーへと成長した。

 ここまで長々語ってきたが、マブヤーをはじめとした沖縄特撮番組たちの魅力は何といってもその”誠実な番組作り”にあると思う。決して子だましではない、友人の言葉を借りるなら「子信じ作品」といえるだろう。
 僕が思うに、「マブヤー」をはじめとした沖縄特撮ヒーローたちは、作品を通して「対話」の大切さを伝えようとしているのだ。どの作品、敵勢力はの理由もなく人間を襲うのではなく、文化や自然をないがしろにする人間に怒っている。

 そんな悪役に対しヒーローたちは、時にこぶしを交えることもあるが、最後は対話を通じて解決に導こうとする。これは大人たちから次の世代に向けた希望であり、願いなのだと思う。平和で美しい沖縄を未来にも残していくために、沖縄の文化や自然をもっと愛せるように、大切にできるようになってほしい。そして、それを守るためには対話が不可欠だ。

 沖縄特撮は、誠実に子どもたちと沖縄の文化に向き合ってるからこそ、幅広い層に受け入れられ長く愛されてきたのだと思う。そしてぜひ、沖縄県外の人にも触れてほしい。そして、沖縄が誇る特撮カルチャーを通じて、沖縄の魅力を感じてくれると嬉しい。

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