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だれでもできる、体育授業のつくり方

 今回は「体育」の授業づくりについて考えていきたいと思います。私は今でこそ体育を専門に研究をしていますが、初任の頃は体育と言えばとりあえず隣のクラスがしていることと同じことをしてみたり、試合形式の体育ばかりさせていた気がします。授業づくりという視点がなく、「とりあえず子どもたちが楽しそうにしていればいいか」といったような感覚だったと思います。しかし、それは楽しそうにしているだけで「体育を通して学んでいる」ということはなかったのだと今になって思います。今回はそんな自分の苦い経験をもとに「体育が得意ではない先生に向けて、授業をどのようにつくっていけばいいのか」という視点から考えていこうと思います。

①体育科で目指すものとは

 体育で目指すゴールとは何のか。それは人生において健康に過ごし、スポーツに親しんで生活していくことです。かなりかみ砕いた内容になりますが、これが体育でのゴールだと考えています。では最終的に授業ではこの目標に向けて学びを深めていく必要があるわけです。しかし、実際に考えてみてください。世の中の人が常に健康を意識し、スポーツに親しんで生涯をおくっているでしょうか。大人になるにつれ、そういう面とは離れていく人も多いかなと思います。全員に強制はできないのです。しかし、そのきっかけは提供すべきだと思います。体育の学習を通して、私が考える体育科のゴールを意識できる子が1人でも増えれば、それだけで万々歳です。私が授業づくりで大切にする大きな目標の1つは、子どもたちがこのようなことに気づくきっかけとなる体育にしたいということです。

②授業づくりはどうすれば

○まずは領域を知る!
 では、実際にどのように授業をつくっていけば良いでしょうか。体育には領域が存在します。体つくり運動系・器械運動系・陸上運動系・水泳運動系・ボール運動系・表現運動系・そして保健の学習。たくさんの領域があり、体育に慣れない方は「よくわからない」と考えるのも当然です。なので今度行う学習がリレーであれば「陸上運動系に分類されるんだな」という感覚で、その都度この単元はどの領域になるんだろうと考えることが大切です。そう意識することでどの単元がどの領域なのかは自ずと頭に入ってきます。

○次はゴールを知る!
 では次の段階です。次はその単元でどのような姿が子どもたちのゴールになるのかを考えます。学習指導要領を参考に、2学年ごとの学習内容が記されているので、そこから理想の姿をイメージします。例えば中学年の内容で壁倒立が記されています。その壁倒立がどんなものなのか、イラストや動画で確認してみましょう。まずは教師が目指す形をイメージするのです。そこから児童の実態を考え、どこまでの内容ができれば良いかを判断し、自分のクラスのゴールを設定します。これは他の領域でも同じことです。

○とりあえずゴールから逆算して細かく分ける
 次に行うことは、活動を「これでもか!」というくらいスモールステップ化していきましょう。例えば先ほどの壁倒立なら「カエルの足うち」「両手をマットについて右足と左足を順番に振り上げる」など、できる限りその活動にいくまでに苦手な子ができるレベルまで落として考えていきます。「何をやっていいのかわからない」という方も当然おられるでしょう。そんな時には「○○運動 学習カード」なんて調べれば、細分化されたカードがたくさん出てきます。それを参考にして考えましょう。いきなり「壁倒立をしましょう!」なんて、声掛けをしてもできる子は一部です。これはボール運動などの領域でも同じです。サッカーの単元でテレビでよく見る「サッカー」を想像してはいけません。サッカーがゴールではありません。サッカーという行いを通して、目標に近づき、達成させることがゴールです。スポーツに近づけていくのではありません。結果としてスポーツに近づいていくのです。なので、サッカーを細分化していくと「3対3の人数・コートは人数に合わせて小さく・ゴールはラインにする」など、スポーツのスモール化をしていくことが大切です。

○調味料をかける!
 さて、何をすれば良いかだんだんわかってきたら、その活動を楽しくするにはどうすれば良いのかを考えましょう。例えば壁倒立なら「壁にガムテープを貼っておく」だけで子どもたちの意欲は格段に上がります。テープに向かって足を伸ばしていったり、友達と見合い学習をするきっかけになったり・・・。子どもたちが楽しんで活動ができる味付けをしてあげるのです。先ほどのサッカーでいうとルールの工夫が味付けにあたります。あえて攻撃側と守備側の人数を変えてみたり、コートを斜めにくぎってみたり。ラーメンをそのまま出すのではなく、メンマをのせてねぎをのせて、子どもたち好みの味付けをしてあげるのです。この内容は自分で考えたオリジナルのものでも構いませんし、調べてみても良いかと思います。例えば私は以前ハードルに恐怖心を抱く子が多かったので、コーンに3段階ほど高さを変えたテープで印をつけて自分のレベルにあった高さに調整してゴム紐をつけさせ、自分のコースをつくって活動に取り組んだことがあります。ハードルを跳ぶのが嫌でずっと後ろで見ていた子どもたちも「これならやってみるか」と挑戦していたのを思い出します。必ずしもネットや本にのっている形でなくても良いはずです。自分なりに「おもしろいかな?」と思う教材をスモールステップの段階でも取り入れてみましょう!

○徐々に難しくしていく
 いつまでたっても内容が変化しない体育の授業は面白くありません。単元の後半に向けて内容を少しずつ難しくさせていきます。ボール運動ならば試合形式をAとBに分けてたりして、Bはよりルールを緩和して自由度の高いものにしてみたり、逆に追加のルールを制限することで目標にあった試合の難易度にしていきます。水泳運動ならばクロールや平泳ぎに近づく活動を入れていくような形です。単元を通して変化を生むのです。その内容は子どもたちの実態に合わせて変化させていって構いません。オリジナルの活動を考えていきましょう。

③終わりに

 体育の授業づくりは難しい面が多々あります。専門性が問われることも多いですし、やはり手だてを知っていると知っていないとでは学習効果も大きく変わってきます。しかし、その差で子どもたちが「運動嫌い」なるのは寂しい気がします。最終的に子どもたちが少しでも運動に興味をもち、自分の人生の中に健康を意識してくれればと考えているのが私の願いです。それはもちろん他の教科でも同じことです。まずは1つの単元からで良いので「体育、これはやってみよう!」と思えるきっかけとなれば幸いです。

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