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大垣サウナ

 みなさんこんにちは!
 今回はサウナの話。
 

 
 今回紹介したいサウナは「大垣サウナ」。その名の通り、岐阜県は大垣市にその店を構えている。
 このサウナに初めて訪れたのは、今年の1月。名古屋を旅行したときだった。
 
 私はこれまでに何度も名古屋へ出かけていたこともあり、その旅行の中盤には行きたいところを全て行き尽くし、時間を持て余していた。
 そんなとき、名古屋駅から30〜40分ほどで行ける岐阜県大垣市に、今回紹介する「大垣サウナ」があることを知った。
 時間を持て余していた私は迷うことなく電車に乗り込み、大垣を目指した。そんないきさつで、私と大垣サウナは出会ったのだった。
 
 初めに大垣サウナを訪れた感想は「なんだか懐かしい」というものだった。
 外観は幼い頃放課後に遊んだ児童館や市民会館のような、シンプルで無骨な建物といった印象。近くに寄らずとも、その年季を感じ取ることができる。
 内観も同様に、かなり前から引き継いでいるらしいカーペットやロッカー、休憩所など、全体的に年季が入っている印象である。
 少し古いものや建物に接することで、なぜか「懐かしい」と感じることは、人の営みの上で自然なことであろう。
 しかし、私にはその「人間の自然」の他にも、理由があるように思えてならなかった。
 

 
 私の出身は岐阜県であった。
 訪れた大垣市とは少し距離のある、片田舎と表現して間違いないような小さな町が、10歳まで私が過ごした場所だった。
 今から少し前までは、お正月になると毎年、まだそこに住んでいた祖父母を訪ねるのが習慣だった。しかし、祖父が亡くなり、祖母が私と一緒に住むようになると、私が岐阜を訪れる理由は無くなった。
 
 それから数年の時間が経ち、今。町こそ違うものの、かなり久しぶりに自分の出身地へと戻ってきたのである。
 大垣サウナの利用客や従業員の方々。久し振りに祖母以外の人が岐阜の言葉を使っているのを聞く。不思議な感覚である。
 初めてくる場所・町のくせに、私は居心地の良さや懐かしさの他に、安心感さえ覚えつつあった。
 心の中で一番繊細なものを司る箇所を、暖かいものでぎゅと包まれる。そんな気分だった。
 

 
 暑いサウナ室に敷かれたカーペットに腰かける。
 少し、暑さに疲れて壁に身体を預ける。多くのサウナで同じことを行うと、だいたい壁も暑くなっているため、跳ね返るように前の姿勢へ戻ることになる。
 しかし、このサウナ室ではそれがない。
振り返り、壁を見ると、壁もカーペット素材できていることに気づく。他の施設ではなかなかできない、もたれかかった体勢のまま、サウナを楽しむことができる。
 サウナ室に置かれたテレビには、地元の野球チームの試合が映し出されている。
 そのテレビの下には「われらサウナ人」と題された、詩のようなものが彫られた石版が埋めこまれている。内容はこうだ。
 
サウナは自然を愛する人に好まれている
サウナには野趣があるような気がする
サウナに入ると旅情を感じるときもある
なぜか仕事のできる人に好まれている
サウナは明日を考える人に向いている
サウナは人生を楽しむためにある
しかしサウナに入ったからと云って
いばる人はひとりもいない

 
 後で調べると、これはサウナストーブなどを製造・販売を行う株式会社メトスがポスターにて使用していたものだそう。
私が仕事ができるかは別として、サウナ好きとしてはこの内容には概ね共感できる。
しかし、私が今感じているこの特別な気持ちは果たして旅情なのだろうか。
少しの違和感を残しつつも、私はサウナを3セットほど楽しんだ。

大垣サウナ内食堂で食べた生姜焼き

*  

 施設を出る際、フロント横にグッズ販売コーナーがあることに気づく。パーカーやキーホルダーなど、魅力的な商品が多く、お土産もついでにとつい買い過ぎてしまった。
 ただ、購入した商品用の袋などは用意がないらしく、背負っていたリュックにも隙がなかった私はどうしようかと困っていた。すると、それを見ていた従業員の方が備品庫のようなところからどこかの百貨店(これも地元のものだろう)の紙袋を私にくれ、バス停までの道順を教えてくれた。

 *  

 グッズの入った紙袋を胸に抱え、バスの座席に深く座りこむ。夜の大垣駅までの道は街灯もまばらである。 
 旅行もほぼ終わり、私はまもなく東京へ戻ることとなるだろう。しかし、今回はなぜか東京へ「出かける」という気分に近いように感じたのであった。

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