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サウナしきじ

 あけおめ。

 今日は私の趣味の一つ、サウナについて。

 サウナに通い始めたのは今からおよそ一年前からだっただろうか。
 それまでもサウナは気になってはいたものの、持ち前の悪魔的フットワークの重さから、なかなか手を出せずにいた。
 
 そんな私がサウナに通うようになったきっかけは、去年の冬休みに名古屋と静岡に一人旅に行ったことからだった。
 なぜその二つを旅行したのかというと、名古屋へは大須商店街(あの筒井あやめちゃんも通っていたという)で古着屋巡りをしたかったのと、名古屋めしを無性に食べたくなったから。
 では、静岡に行った理由は何かというと、SBSラジオ(静岡ローカル)で毎週火曜日に放送している番組「チョコレートナナナナイト」(通称「チョコナナ」)の大ファンだったからであった。

 チョコナナは私の大好きなお笑いコンビ「アルコ&ピース」の酒井健太さんが出演していて、その酒井さんがこの番組を収録しに来た際、必ず寄るというのが今回紹介する「サウナしきじ」だったのだ。
 それまでサウナの本格的な楽しみ方を知らなかった私だったが、酒井さんが通っているなら自分も試してみよう、と奮起し、名古屋から鈍行で静岡まで行き、さらに静岡駅から徒歩で一時間かけて聖地「しきじ」へと向かったのだった。

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 しきじに入った瞬間、Corneliusの「サウナ好きすぎ」が流れているのがわかり、Corneliusファンでもある私は「ここは本物だ!」と本能的に感じ取った。
 
 しかし、店内の動線は酒井さんが通っている「聖地」という印象と、Corneliusという選曲の妙とはかけ離れ、受付から脱衣所までは人が二人並んで歩けないほどのスーパー・ジモティー・銭湯スタイル。
 なんせ本格的なサウナも静岡も(ほぼ)初めてだった私の脳内では、キング・クリムゾンの「太陽と戦慄」が再生され、全身を緊張で強張らせざるを得なかったのだった。

 脱衣所にたどり着き、恐る恐る服を脱ぎ、浴場に出ると、そこは箱根の旅館に併設されているようなこじんまりとした規模の平凡な湯船と並ぶ洗面台があった。

 しかし、その平凡な風景に見慣れない要素が二つ。
 立ち並ぶ一人掛けベンチと二つの密室。そう、サウナだった。

 しきじにはフィンランド・サウナと薬草サウナの二種類のサウナがあり、立ち並ぶベンチはサウナに入った後、水風呂に入ってから休憩で腰掛けるために用意されたものだったのだ。
 まさにサウナーのためを思って生成された異様な光景に戸惑いながらも、同じタイミングで入館した男性の後を追い、フィンランド・サウナへ。
 
 その瞬間、今まで感じたことのないほどの熱気、薄曇りの先に並ぶ男性の裸体、手前に座っていたおじさんからの「お兄さんごめんね、ドア閉めてもらえる?サウナの」の声、情報過多で、熱気と共に脳みそが蒸発していきそうな気分になった。
 
 とりあえず、その中で7分ほど耐えたものの、これまでスーパー銭湯などで経験したことのない暑さに体は悲鳴をあげ、無意識のうちに水風呂へと飛び込んでいた(サウナ中は周りの雰囲気に合わせることに必死で、ほとんど記憶がない)。
 天然水を使用しているというしきじの水風呂は、水風呂に入るという習慣になれていない私の体をも優しく包み、そのクリアな水質が心地よく、さっきまで暑さで悲鳴をあげた肌に馴染んでいくことを実感した。

 そして例のベンチに腰掛けた瞬間。どうだ。
 
 これがサウナだったのかと全てを悟った。
 血管の動きを、中学生の時の持久走以来に強く感じ、その脈の波が体からオーラのように溢れ、どこまでも広がって行くような感覚。

 今までに感じたことのない感覚と、頭の中のモヤモヤが一斉に晴れて行く心地よさ。
 見事、サウナと恋に落ちた瞬間だった。

 そして、私はサウナで言うところの「整い」を経験した「サウナー」として生まれ変わり、しきじを出る頃にはこう心の中で呟いたのだった。


「サウナ好きすぎ」

と。

・サウナ好きすぎ/Cornelius

・太陽と戦慄 パート2/キング・クリムゾン


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