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サランヘヨ(愛しています)

家の近くに韓国料理の店ができたので、男友達数名と乗りこんだ。

韓国料理屋だけど最初は生ビール。
おーい!これはドイツんだ。
なんて洒落を一発挟みつつ、おつまみの韓国海苔とチャンジャと共に乾杯。

韓国海苔の美味しい食べ方は、舌に乗せて擦り舐めること。
これにより塩気を余すところなく味わえる。
そして若干エロティックな気持ちにもなる(余談)。

サムギョプサルって日本の焼肉よりあっさりしてて美味いね。
本場のキムチは酸っぱさが濃くて癖になるね。
サムゲタンって健康的な食べ物だね。
ニンニク味が強いものばっかり食べたから、今日はナオンとスーキーできねえや。
いや、ニンニクフレーバーのキスで興奮するくらいじゃなきゃ、令和時代のギャルはダメっすよ。

などと男同士キャッハうふふと盛り上がっていたら、次はマッコリを飲んでみようと言う流れになった。

名前は知ってるけど、誰も飲んだ事がない。
試しに頼んだところ、何と壺みたいな入れ物でやってきた。
それを小さなヒシャクを使ってお椀に入れて飲んだ。

味は、、他の飲み物に例えちゃダメだけど乳酸菌飲料のピルクルみたいな味。
甘酸っぱいの。

こちとら全員甘い酒が苦手。
飲み会で最初の一杯のオーダー時「カシスオレンジィ〜」なんて声が聞こえようものなら、心の中で舌打ち百発くらいの連中。
一番の酒豪のKがこんな甘い飲み物なんて飲めない!
ここは年少組のお楽しみ会じゃねぇ!
と最初はブーたれたものの、すっかりハマった我々は3壺も平らげてしまい、まともに歩けない程に泥酔した。

韓国人の店主に肩を借り、何とか靴を履いてから「サランヘヨ〜(愛しています)」と覚えたての韓国語で挨拶して店を出た。

我々は一様に「このままだと急性アルコール中毒で死ぬ。水を飲まねば・・」と動物的本能で危機を悟り、道路を隔てたコンビニになだれ込んだ。

まるでゾンビの様な歩行で、さらに目が血走った我々を迎えた店員は、この辺に住む人間なら誰でも知ってる『深夜バイト界の川口春奈』ことE山さんだった。

下衆な情報通によると昼間は会社勤めしているらしく、所謂ダブルワークしているらしい。
なぜそこまでハードに働く必要があるのか。
それは我々の様な下層に生きる男達の中で^清純派AV女優^という言葉と匹敵するぐらいの謎が深い事だった。

私は酔った勢いもあり、かねてから気になっていたE山さんと話したい気持ちを抑えられずにいた。

何か話題のキッカケになるものは。。
と店内を一周してからミネラルウォーターをレジまで持っていき
「こんな遅くまでお疲れ様です。ところで、、おこわオニギリのおこわって何ですか?」
とアホ丸出しな切り口で話しかけてみた。

するとE山さん

「おこわは・・・おこわです」

と冷たたく、私と目線も合わさず吐き捨てる様に答えた。

私はこれがE山さんと金輪際最後の会話になることを男性的本能で悟った。

店を出て空を見上げると、満点の星空。
なぜかそれが滲んで見えてしまう。

「サランヘヨ。。」

と力なく呟いた私を沢山の星達が見下していた。

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