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【夏らしい編曲】🎸昭和の女性歌謡ポップス。夏のオススメ名曲3選。

もうすぐ、夏ですね。

昭和の女性歌謡ポップスの中で、「夏にふさわしいアレンジ」をビンビン感じる3曲をご紹介します。

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■夏木マリ「夏のせいかしら」

イッキにテンションをアゲてくれるアッパーなパーカッション・ブレイクで突き抜ける和DJ定番の真夏のグルーヴィー歌謡名曲"夏のせいかしら"!!


B面の"砂の女"も唸るベースが轟くグルーヴィー歌謡でどちらも馬飼野節炸裂でオススメ!

さりげなく、ボーカルにエコーをかけているのも洋楽っぽさを醸し出している。

作詞:安井かずみ、作曲/編曲:馬飼野康二

ラテンパーカッションとドラムスが激しく絡み合い、出だしから情熱的な世界に引き込まれるイントロで始まります。 若く精力溢れる女性の恋する気持ちを表現した歌詞で、当時の夏木マリの独特の魅力が十分に詰まった名曲!

サザンオールスターズの桑田佳祐が、曲づくりの上で強い影響を受けた名曲であるのは有名。

どこか「勝手にシンドバッド」に似ている?!

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■黛ジュン「天使の誘惑」

サウンド面の最大の特徴は、歌謡曲へのロック・コンボ風アレンジ(エレキサウンド)のダイレクトな導入である。歌謡曲は黛ジュンの登場によって、やっと本格的和製ポップスあるいは歌謡ポップスという領域を獲得したのである。

わざと「雑なエンジニアリング」を施して、「ライブ演奏」のようなサウンドに仕上げているのも成功の秘密であろう。

作詞:なかにし礼 作曲・編曲:鈴木邦彦


黛ジュン以降、歌謡界は次々といしだあゆみ、奥村チヨといった和製ポップス・シンガーたちを百花繚乱のごとく輩出した。それはあたかも白黒テレビがカラーテレビに変わったがごとき眼にもまばゆいカラフルな様相だった。

まずレコード会社と担当ディレクターがよかった。

会社は東芝音楽工業、ディレクターは例の「ビートルズを日本で売った男」高嶋弘之。(高嶋ちさ子の父)

東芝が日本コロムビアや日本ビクター、テイチクなど老舗のレコード会社でなかったこともラッキーだった。当時全盛だったGSブームの煽りも受けて、歌謡界はじょじょにレコード会社専属作家ではない新進のフリーの作家たちに眼を向けはじめていたのである。日本の歌謡界に大きな変革をもたらす作家たちがこの群雄割拠の時期に次々とデビューできたのである。「恋のハレルヤ」から、この「天使の誘惑」と初期の黛ジュンの代表作を書いたなかにし礼は『翔べ!わが想いよ』(新潮文庫)のなかで、デビューしたての頃のこの辺の事情をうまく説明している。


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■いしだあゆみ「太陽は泣いている」

作詞:橋本淳 作曲・編曲:筒美京平

いしだあゆみはいずみたく率いるオールスタッフ・プロモーションの所属とし て、脚本家の向田邦子や演出家の久世光彦の出世作となった森繁久彌主演『七 人の孫』(1964年1月~TBS系列)でドラマ・デビュー。

『七人の孫』は『ただいま11 人』とともに大家族ホーム・ドラマの先駆けとなった作品で、後の『時間ですよ』 『寺内貫太郎一家』はこの系譜にある。  
1964年4月にはビクターから「ネェ、聞いてよママ」で歌手としてもレコード・ デビューを果たし以降24枚のシングル盤をリリースしたが、大きなヒットには 恵まれなかった。

心機一転コロムビアに移籍した第1弾が「太陽は泣いている /夢でいいから」である。担当デイレクターは前述の泉明良。  

泉明良は橋本淳が作詞を手がけたジャッキー吉川とブルーコメッツの担当 ディレクターで、「青い瞳」(66年7月)、「ブルー・シャトー」(67年3月)とヒットを連 発。

「ブルー・シャトー」は67 年のレコード大賞を獲得した。筒美京平の初ヒット となったヴィレッジ・シンガーズ「バラ色の雲」(67年8月)も泉明良によるもので ある。

橋本淳・筒美京平コンビと泉との最初の作品は黒沢年男「ふたりの汐風」 (67年3月)だった。


さて、「太陽は泣いている」へ話を戻そう!

 チェンバロを全面に押し出した躍動感あふれる高速のイントロが、それ以前 の世界中のどこにも存在しなかった新たなポップスの誕生をエキサイティング に告げる。  

BPM128というテンポはそれ自体が充分に早いが、聴感上はもっと早く感じ られる。

全体に前のめりな演奏による効果だが、コード弾き打ちっ放しのエレ キ・ギターの「ジャ~ン」と掛け合いのチェンバロによるイントロは、実際に途中 からテンポが加速されている。

ギターとチェンバロのスリリングな響きにストリ ングスがアクセント・スタッカートで絡む。

12小節のイントロはいしだあゆみ・橋 本淳・筒美京平のトリオの織りなす斬新かつ高度なポップスの序章にふさわし く、素晴らしくスリリングで、かつ若々しさに満ちている。

歌詞も旋律もアレンジも演奏もすべてが完璧なこの作品を牽引するのはいし だあゆみのエモーショナルかつクールな歌唱である。

ビクターでのデビュー時は青春歌謡の延長にある作風で、後期に発売された シャッフルを取り入れた「恋のシャドー」、軽いシェイク・ビートの「星のタンバリ ン」といった作品はトレンドを反映したリズム歌謡の影響下にある楽曲だが、大 きなセールス的には結びつかなかった。

( ⇑ いしだあゆみ「星のタンバリン」。ビクター時代の大傑作)
作詞:
#有馬三恵子  作曲:#鈴木淳  編曲:#志賀太郎

歌唱にも際立った個性が感じられる作 品は少なく、どちらかといえば「無難に歌っている」印象が強い。

「太陽は泣いている」 におけるいしだあゆみのシャウトやパンチとはまったく異 なる、叫びにも似た歌唱スタイルはレコーディング・スタジオのマジックともい うべき効果である。

ヴォーカルのディレクションはおそらく橋本淳によるもの で、いしだあゆみの内に秘めた感情を前面に引き出すために、テイクを重ねな がら、追い求められたものだろう。

これ以降のいしだあゆみの作品でこのような テンションの高い歌唱は見当たらないので、沸点に到達するためにギリギリの ところで歌唱に挑むレコーディングのシーンが目に浮かぶようである。

 特にサビの「くーちづけの~」で顔を出すハーモニック・マイナースケール による半音の味付けがメロディーの注目箇所だが、いしだあゆみは㶉ち㶉や㶉ず㶉㶉 のぉー㶉の箇所にかなり強いアクセントをつけてヴォーカルを際立たせている。

A8小節B10小節の2コーラスというシンプルな構成。

キーはAmでレンジはほ ぼ1オクターブ。

ナチュラル・マイナー・スケールだが、サビではハーモニック・マ イナーが取り入れられている。

楽器の編成はドラムス、エレキ・ベース、エレキ・ ギター×2、チェンバロというベーシック・リズムに裏打ちのタンバリンが見え隠れする。

流麗ながらハネる大編成のストリングスが一方の主役で、グロッケンが 隠し味で配置されている。

 チェンバロ(ハープシコード)はバロック音楽で多く使用されたクラシカルな 伴盤楽器だが、「恋はみずいろ」の世界的な大ヒットにより一躍名を馳せたポー ル・モーリアによって新たな注目を集めた楽器である。

複弦楽器特有の倍音の 響きが大きな魅力で、イントロのエレキ・ギターのリヴァーヴとのコンビネー ションが相乗効果を醸し出している。

本作での筒美京平によるオーケストレー ションはポール・モーリアのイージー・リスニングとはまったくの別物で、ハネを 多様したロック・ビートをチェンバロが演奏するという斬新な発想である。  

大編成のポップス・オーケストラの録音を担当したレコーディング・エンジニ アはコロムビア・スタジオの岡田則男。

イントロはもちろん、随所に登場するド ラム・フィルでもみられる音圧の効いたリヴァーヴ感は聴きごたえ充分で、いし だあゆみのアタックの強いヴォーカルの彩りは確かなレコーディング技術の裏 付けがあって成立したものである。

橋本淳の描く世界はミケランジェロ・アントニオーニ監督の映画『太陽はひとり ぼっち』(62年)に描かれた南欧の乾いた風景や、あまり笑わない女優モニカ・ ビッティを想起させる。  

橋本淳の歌詞の特徴は心情吐露や心理描写が少ないところで、初期の橋本 淳には散文詩が多くみられるが、本作の「夏が来るたび 想い出す 小麦色 した 二十のあなた」も同様の手法である。

この時期の作風はヨーロピアン志 向と思われるが、橋本淳の特徴は同時代性を伴っているところで、キーは洗練 された「現在」にあって、そのひとつの手段としてヨーロッパ志向がある。

 作詞家橋本淳の最も大きな特徴は起承転結にとらわれないだけでなく、従 来の歌謡詞に多く見られる因果律を最初から排除しているところである。

○○ だからこうなったという手法から意図的に逸脱させるだけでなく、物語の要素 を極限まで制御して歌謡詞を散文詩として成立させている。

これが橋本淳の描 くポップスであり「くちづけのあとで 太陽は泣いている」はその初期の完成 型である。(まあ、初めて聴くと単なる「意味不明」なのだが)

※レコーディングでは、作詞家の橋本淳が徹底的に、いしだあゆみをしごきまくったと言われている。何十回も同じフレーズを歌わされたとか。

⇑ ピチカート・ファイブの連中は、「太陽は泣いている」が好きすぎて、ドイツのディスコに持っていってかけたら、ドイツの若者が異常に盛り上がったという逸話がある。

で、ピチカート・ファイブは、「太陽は泣いている」へオマージュを捧げて、
「モナムール東京」という曲をつくってしまった。
それほど、好きなのだ。


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