無意識に不安をかき集めていた
世界は似ているものが引き寄せ合うらしい
人間は似ている人同士が集まる
お金はお金持ちのところに集まるし
朝食べた小麦はお腹の中で『また小麦が食べたいなぁ』と次の小麦を呼ぶ
私は今日、少しだけ不安になった
大切にしている人は、もう自分のことが大切ではないのかもしれない、と、ぽつりと思った
その小さな不安がまた不安を呼んで、大きな不安の塊になってしまう
不安になる理由を探しては、それをかき集め
部屋いっぱいに、不安が砂の山を作りそうになったときに気がついた
意識的に、このループを断ち切らなければならない、と
不安に目を向ければ不安が増える
ならば、別のことに意識を向ける必要がある
今私が意識を向けているのは『人間の心』だ
つまり、『人間の心』から一番遠く離れたものについて考えればいい
人間の心から一番遠いものって、なんだろう
生き物ですらないとするならば
……水?
いや、人間もほとんど水でできている
70%だったか
じゃあ、石とかはどうだろう
石はかなり人からは遠い気がする
私は家の中にある『石』を探して、手に取った
いわゆる天然石、みたいな青くてきれいな石だ
たしかこれは青メノウだったか
石を握ってぼんやりしてみる
人と石は遠い存在かもしれないけど、人と石は長い年月をかけて共存していると思う
宝石だったり
信仰の対象としていたり
石は不思議と、落ち着く
そういう意味では、もしかしたら太古の人類も人と人との何かに悩んで、『人間から一番遠い存在は……』などと考えたのかもしれない
石を介して、結局は人類に思いを馳せてしまったものの
私の不安は、それ以上大きくはならなかった