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茶の間の孤独

最近、急須でお茶を飲んだことありますか。
お茶といえば、ペットボトルのお茶。自販機やコンビニで買えて便利だし、冬にはホットもある。なにより美味しいですよね。なので、急須でお茶を飲むことなんて、めっきり減ってしまったのではないでしょうか。そんな中、急須でお茶を飲むことをおすすめしている企業があるんです。

株式会社宇治田原製茶場

緑茶の祖「永谷宗円」が生まれた宇治田原町にある京都のお茶屋さんで、「こいまろ茶」という緑茶、煎茶、抹茶をブレンドしたお茶を作っています。「こいまろ茶」は、とても美味しくて私もファンなんですけれど、その売り方が少し面白いんです。

急須でお茶を飲みましょうと勧めるとき、普通どんな勧め方をするでしょう。ペットボトルは環境に悪いから、茶葉は健康にいいから、ざっとそんなところではないでしょうか。宇治田原製茶場の勧め方は少し違っていて、「茶の間」を前面に押し出して来るんです。

「茶の間」をgoo辞書で引くと、

ちゃ‐の‐ま【茶の間】
1 住居の中で、家族が食事やだんらんなどをする部屋。

と出てきます。家族が居間に集まって、お茶をすすりながら、みんなで談笑する、そんな姿が思い浮かんできますよね。そこで出てくるお茶は、やはり急須で淹れるお茶なんでしょう。

そんな茶の間をタイトルに掲げた「月刊茶の間」という雑誌を発行しているのが、宇治田原製茶場なんです。中には、「お茶の間拝見」というコーナーもあって、おじいさん、おばあさんが、元気いっぱい趣味に没頭されている姿なんかが紹介されたりしています。

でもね、居間でお茶をすすりながら、けらけら笑い合っている家なんて、今どき、おじいさん、おばあさんのお家以外ないでしょう。もしかすると、おじいさん、おばあさんも忙しくってそんなことしていないかもしれない。

それでも、私は、ふとした瞬間に自分で思い描いた「茶の間」というありもしない空間に身を置きたくなることがあるんです。家族みんなで、他愛のないことをしゃべりながら笑い合ってる。実際にはないんだけど、そんなシーンを思いながら、急須で淹れたお茶を飲んでほっとしたい。そんな時、ふと、ページを開きたくなるのが、「月刊茶の間」なんです。

「月刊茶の間」には、京都の話題がわんさか載っています。大晦日、お正月、節分、桃の節句に端午の節句。京都を撮り続けている写真家中田昭さんの写真とともに季節ごとの京都の伝統行事が紹介されています。どの記事も、誰かと連れ立って、その写真の現場に来ている。隣の人と手をつないで風景を見ている。そう思えるだけかもしれないけど、そんな感じのする記事ばかりなんです。

「月刊茶の間」には、また、京都の商店街のお店の紹介や、定食屋さん、喫茶店、バーの紹介なんかも載っています。ありふれた記事なんだろうけど、そこに出てくる大将や女将さん、マスターや奥さんたちも、みんな笑顔で語りかけてくる。私には、そういう風に見えるんです。

「月刊茶の間」を一人で読んでいても、ひとりぼっちじゃない。それこそ、読んでいる私のそばで、あれがいい、これもいいと言うおじいさん、おばあさん。ぎゃあぎゃあ騒ぐ子どもたち。いらっしゃいと迎えてくれる大将や女将さん。そんな声が聞こえてくる感じがするんです。

加えて「月刊茶の間」には、茶道、華道、陶芸など、お茶に関わる人たちの紹介や、お茶の淹れ方、急須に関する知識、お茶といっしょにいただくと美味しそうなお菓子の販売など、「茶の間」に必要なありとあらゆる知識や情報、商品が載っています。

今はもう忘れかけている「茶の間」。その「茶の間」が、この雑誌を読むと目の前にぱーっと広がってくる。一人で読んでいても、ひとりぼっちにさせない。みんなに囲まれて「茶の間」で和んでいる感じがする。街の中に笑顔がいっぱいある。そんな「月刊茶の間」が大好きです。

「月刊茶の間」を読みながら、「こいまろ茶」を急須で淹れて、ほっとする。そんな時間をいつまでも持っていたいと思います。だから、「月刊茶の間」発行している株式会社宇治田原製茶場を応援したいんです。いつまでも、全国のお宅に「月刊茶の間」を届け続けて和ませてください。「茶の間」が忘れ去られてしまわないためにも。

サポート代は、くまのハルコが大好きなあんぱんを買うために使わせていただきます。