朝
私の朝は、早い。
午前3時に起きます。当然、まだ、辺りは暗い。以前、妻が近所の人に言われたことがあります。
夫さんは、
漁師か。
うまいこと、言うもんです。でも、私は、釣りをしません。
何をしてるかって。
走っています。
2日に1回程度、雨の日を除いて走ります。
家を出て、駅前の繁華街を抜けて、大きな橋を渡り、ずっと続く湖畔の散歩道を走り、二つのホテルを越えて、観光船の泊まっている小さな港で折り返す。これが私のお気に入りコースです。
走るって不思議です。誰に教えてもらうことなく走ることができる。幼い頃、なんであれだけ一日中バタバタと走り回ることができたのでしょう。鬼ごっこ、かくれんぼ、ラジオ体操へ行くにも走ってて、それは、友達の記憶と伴にあります。
午前3時は、一日の始まりでしょうか。いえ、昨日の続きのような気がします。
たまにですが、駅前の繁華街で、酔っ払いが道端に寝転んでいるのを見かけます。頻繁には、路上にぶちまかれた反吐も。橋を渡って、散歩道を走っていると、公園のゴミ箱から溢れてもなお、その周りに積み重ねられた発砲スチロールの容器や紙コップ。自動販売機脇の空き缶入れに入りきれなかった空き缶の山。道に散らばった花火の燃えかす。港に行くまでの間、結構いろんなものを目にします。
そして、港に着くと、ちょうどその頃、対岸の山の合間から、太陽がのっそりと顔を出してきて、外輪船や学習船を逆光に映します。
朝。
新しい朝が来た 希望の朝だ
藤浦洸作詞・藤山一郎作曲「ラジオ体操の歌」の一節です。太陽がまぶしい朝が来た、さあ、素敵なことが待っている今日一日を始めましょうと歌っているのでしょう。
新しい朝より、昨日の続きの朝が好きです。
すっきり片付けられた朝よりも、残骸だらけの朝が好きです。すぐに捕まる鬼ごっこより、ずっと逃げてる鬼ごっこがいい。最後の一人になっても隠れていたいかくれんぼ。
酔っ払いがいなくなった。発砲スチロール、紙コップ、空き缶もどこかに行った。これからの花火はどうでしょう。
最近、道端にマスクを捨てる人がいます。
やめてくださいね。
(おわり)
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