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人間って

人間は寝転がってるとリラックスしてる
ようだけど、神経は過敏になってるのか
も知れない。

我が家のすぐ近くの小さな川の向こうの
宅地を工事車両が整地するのに行き来す
るたび、寝室のベッドが揺れる気がして、
眠りの沼に浸るのを躊躇する神経細胞が
センサーの感度を最大にして、しかも六
本目のセンサーも設置してしまったので、
全身が敏感になっているのだ。

シーツの小さなシワを感知した肩甲骨は
なんとかシワを伸ばそうとムズムズ運動
をしてるけど、さらにシワが増えてるよ
うな気がして、だけど起き上がって両手
の平できれいに整地する気は起こらない。
人間ってそういうものだと思う。

枕元で誰かの選曲した曲をなんとなく流
すと、2曲はマービン・ゲイだった。
六本目のセンサーが過剰に反応して、工
事車両の音も揺れもシーツのシワまでも
が気にならなくなる。
やっぱり人間は何事も自分の都合に合わ
せて生きているのだと思う。

昨今の音楽は音数が多すぎて聴き疲れし
てしまう。
60〜70年代の洋楽は音がスカスカで、い
や、スカスカは言い過ぎで、すき間がい
い感じでバラけている感じか。
個々の音量バランスも適当で、音がきれ
い過ぎていないところに魅力を感じる。
そしてアナログ感たっぷり目のリズムの
揺れも心地いい。

なんて言うと、それは年寄りだからだと
言う若者。それは正しいと素直に思う。
それはかつて、自分が若かった頃に年配
の人に向けた言葉と変わらないから。

こうして人間は同じ場面を、言った方と
言われた方が入れ替わって体験する。
でも今となってはもう、かつての自分が
言った辛辣な言葉に、ふわっとした甘い
ものを添える事はできない。

工事車両にうるさいと思っても、昔住ん
でたマンションの下の階の人はそれ以上
にうるさいと思っていたに違いない。

そう思うとシーツのシワに、肩甲骨の存
在を知らせてくれてありがとうと、シワ
の位置を確かめたくなる。
やっぱり人間は身勝手だな。

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