マガジンのカバー画像

youkiの読書記録

7
読んだ本についてまとめていく。
運営しているクリエイター

記事一覧

ネタバレ無しで「エレファントヘッド」を語る

Amazonでも書いてあるが、本作は「謎もトリックも展開もすべてネタバレ禁止!」である。なので私の所感を表面的に述べるだけにとどめる。 妙にグロテスクなのさえ我慢できれば本作は傑作。感想としては以上。 白井先生の作品は本作に加えて「名探偵のいけにえ」と「名探偵のはらわた」しか読んでいないが、どれも面白い。 本作「エレファントヘッド」も圧倒的な面白さを持っている。万人受けする作品ではないだろうが私は本作が今年の最優秀ミステリとして選抜されても驚かない。 ただ、白井先生の

「名探偵のいけにえ」を雑にレビューする(ネタバレあり)

本稿では「名探偵のいけにえ―人民教会殺人事件―」をネタバレありでレビューする。トリックやシナリオにも言及するので未読の方は注意されたし。 繰り返しになるがネタバレありである。 クッションを入れておく。 面白い推理小説に珍しく遭遇したのでレビューする。 というよりも、まずはこの一言でレビューを開始したい。 「この作品をつまらないって言い切る人はいるの?」 本作は特殊設定ミステリーである。 病気や怪我が存在せず、失われた四肢すら蘇る、奇蹟の楽園ジョーデンタウンが舞台…と帯に

理系大学生向け推薦本を段階的に紹介する その1「理科系の作文技術」

高校までの教育課程とは異なり、大学ではアウトプットの機会が多く設定されている。実験レポート、研究室(ゼミとも呼ぶ)や学会での発表、論文といった具合に年次が上がるにつれてより高度なアウトプットを求められるようになる。しかしながら私が思うに、現行の大学教育ではアウトプットのトレーニングを学生に十分に積ませていないために研究室に所属してからの指導教員の負担が増加しており、かつ研究室によって学生の質にばらつきが生まれてしまっている。 本稿では理系の大学生が自らアウトプットの訓練をし

記憶に残る児童書たちを書き連ねておく その1

子供の頃は浴びるように本を読んだ。図書館から5冊本を借りて、その日のうちにすべて読み終えてしまったこともある。現在はさすがにそこまでは読めていないが、時間を見つけては新聞や本、webの記事に目を通すようにしている。読書の習慣は現代では勉強の習慣に置き換わってしまっているが、悪いことではないと自分では考えている。 児童書はいい。たった千円ちょっとで一流の人間が書いた一流の文章を読めるし、将来の糧になる。私は国語の教科書を読むのも楽しいと感じていた。学校の宿題で教科書の音読が課

記憶に残る児童書を書き連ねておく その2

前回は日本人作者の作品を紹介したので今回は外国の方の著作を紹介しよう。前回のnoteはこちら。 デルトラクエスト児童書の中で眼の惹く装丁といえば本作、デルトラクエストである。オーストラリア人の作者エミリー・ロッダ氏によって書かれた本作は現代的な内容の剣と魔法の物語だ。少年少女の冒険心をくすぐりつつも、時として血なまぐさい展開もある。だが、ハラハラドキドキする展開を望む子供たちが本作のきらめく宝石のような表紙を見かけて手に持ったら、ぜひそっと後押ししてあげてほしい。そう思わせ

記憶に残る児童書を書き連ねておく その3(完結)

児童書紹介シリーズの第3回兼最終回である。あまりだらだら続けても仕方がないのでいったんここで打ち切ろうと判断した。 さて、これまでは読んでて面白く、印象に残るというテーマで本を紹介してきたが、今回は少し毛色が違う本を紹介する。内容は忘れるかもしれないが、読んだという記憶だけは確実に残るような本を2冊だけピックアップして紹介しよう。 二十四の瞳第2次世界大戦前後の動乱を教員の目線で描いた小説が本作「二十四の瞳」である。教育的価値が高く、話としても面白い。映画化、アニメ化、ド

経済と生命と知性の共通点は?~「複雑系科学入門-知のフロンティアへの冒険」書評~

表題部分の画像を見たときにあなたは何を思い浮かべるだろうか?不思議な形だという素朴な印象を持つ方もいれば、おしゃれな模様だと判断する美意識のある方もいるだろう。私がこの類の図形を見ると真っ先に思い出すのは某大学の数学の過去問である。正三角形の一辺を3等分する2点を定めて、その2点を1辺とする正三角形を作る。この操作を繰り返していく数列の問題を解いたな…という記憶がある。部分的に見れば正三角形に過ぎないのだが、この操作を繰り返した際に現れる図形は(私からすれば)奇妙な性質を持つ