不登校変化グラフ

不登校ってそもそも何? 不登校の定義論 3

当事者から見る不登校の定義

ここまでは教育行政が決めた不登校の定義について考えてきました。
 ここで視点を変えて、当事者である本人や親御さんから不登校の定義を考えてみたいと思います。
 当事者から見た不登校の定義というのは、学校を休むことでどれくらい不利益を受けるか、あるいは不利益と感じるかではないでしょうか。
 では、どのくらい休むと本人や親にとって不利益になるのか。これはその人個人個人によってだいぶ変わります。
 極端な話、中学卒業後は家業を継がせる、もしくは知り合いのとこで働くことが決まってる、そんな人にとっては何ヶ月かの中学校の残りを休んでもほとんど実害がありません。たまにそういう状態の生徒を見かけることがあります。もちろん親には義務教育を受けさせる義務があるのですが、本人が行く気がなくて、そのまま卒業式まで来ないなんてこともありえるわけです。
 学校は休んでるけどフリースクールなど別の居場所がある人も、前の人と同じように学校を休んでるからといって、不登校として何か損をしてるということはあまりないでしょう。今はフリースクールや適応指導教室といった別の場所での学習を学校の出席としてくれることも当たり前になってきましたので行政的な定義の上でも不登校でなくなりそうです。
 では、どこにも行ってない、卒業後の行くあても特に決まっていないという人はどうなるのでしょうか。
 日本ではほとんどの中学生は高校進学を目指すことになります。ではその高校進学の為に不利益にならない欠席のラインはどこになるのでしょうか。
 これも本当に人それぞれになります。学校との距離があっても大丈夫な方から順に見ていきましょう。
 今は中学で不登校だった生徒の受け入れに重点を置いた高校がかなり増えてきました。サポート校というのは通信制の高校と新しいタイプの学校がタッグを組んだようなもので、既存の通信制高校の卒業の資格を新しいスタイルの学校で勉強していく感じです。こういう学校で勉強したいという人には不登校による不利益は少ないかもしれません。ただし、サポート校は授業料が比較的割高になるというマイナスもあります。
 公立でも不登校の受け入れに強いところがあります。また、不登校の生徒の為の枠を用意してくれている高校もあります。これらは場合によっては倍率が高く狭き門となることがあります。逆に入りやすいところもありますので、事前に地域のそういう学校をよく調べておく必要があります。
 それ以外の高校に行きたい人にとっては成績に影響するほど欠席が多いと不利益になります。そういう人達にとっては成績に影響する欠席数が不登校かどうかの境になるでしょう。
 中学校ではある程度の欠席があると成績がつかない☓の状態になります。斜線が引かれることが多いようです。こうなると成績が一というのとも違い、高校入試に成績が反映されず、正規の高校入試がかなり難しい状態になります。中学生や保護者の方はご存知かと思いますが、現在の高校入試は筆記や面接の試験だけでなく、成績等からなる書類審査が加味されますので、成績がつかない状態ではかなり難しくなるのです。
 当事者にとって不利益になるという意味での不登校の境の一つはこの成績がつくかつかないかだと思います。そしてこれは何日以上休むとというラインがつけづらいものです。不登校期間があっても三年生になってちゃんと出てるとかなり挽回できることもありますし、逆に今まで出ていても三年生の二学期にかなり欠席が続くと成績に大きく響く場合もあります。
 もちろん、学校を休むことによって勉強や部活、友達と学校生活を過ごす機会は失われるわけですから、そういうものが大切なほとんどの人にとって学校を休むこと自体が不利益であり、それは休めば休むほど大きくなるものでしょう。
 

不登校の定義はどうあるべきか

 では不登校の定義はどういう形だと望ましいか。私の考えた不登校の定義を述べます。
 まず欠席日数ですが、その学校である科目の成績がつかない欠席日数であった場合に不登校と定義するようにします。成績がつくかつかないかが当事者のその後の進路にとっての一つのターニングポイントになりますので、これを不登校の一つの基準とするのが望ましいと考えます。
 不登校の定義でもう一つ大事なのは欠席理由です。現在は病気や経済的な理由を除いた欠席を不登校としていますが、私はこれを全ての理由の欠席を不登校にするよう変えるべきだと思います。
 これまでに書いてきたように、欠席理由はこうとはっきりできないものが多かったり、いくつもの理由が複合的にあるものが多いのです。
 そもそも不登校というのは学校に行けないでいる児童生徒がどれくらいいるかを見るものです。そして、欠席理由に関わらず全ての教育の機会を失っている子ども達に対して、何らかの手を打たなければいけないことには変わりありません。
 ならば、全ての欠席理由を不登校と考えるべきです。不登校というのは学校がうまくいってるかどうかの指標ではなく、教育の機会を失ってる子どもがどれくらいいるかの指標であるべきなのです。
 不登校改善政策を述べる第三章では、さらに踏み込んで欠席の定義をどうするかという話をします。そうなるとここで書いた不登校の定義も根本から変わってしまうのですが、それは後ほど。
 

 この章では不登校という言葉そのものを追っていきました。実は不登校というのは必ずしもはっきりしたものではなく、あやふやなものであることが見えてきたかと思います。
 特に九十年代初頭に欠席日数の変更によって不登校の定義が変わったことは大きなトピックでしょう。
 次章では、九十年代になぜ不登校が急増したのかを追っていきます。

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