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東洋医学とリラクゼーション


ならまち月燈

治療か慰安か?

治療院を名乗ってはいけない?

アカウント名の『ならまち月燈』は、奈良市ならまちに開く、女性専門の鍼灸指圧院の名称です。

正式名称は『女性臨床鍼灸 ならまち月燈』といいます。

私自身は40歳を越えてから、専門学校に入学し、50歳を前に鍼灸師とあん摩マッサージ指圧師の国家資格を取得し、開業し、今7年目になりました。

7年前に奈良市の保健所に開設届を出すときに、

「治療院」という名称は使えませんよ・・と言われました。

行政区によっても違うのでしょうが、古くから届け出ている治療院に改名しなさいというまでの強制力はないものの、新規に開設する施設に関しては、「医療施設と誤認させるような名称は認めない」ことが徹底されているようでした。

わたしは当時から、

自分自身がしようとしていることが
治療
という言葉にあてはまるかどうか?は、疑問だったため、あまりそこにはこだわりはありませんでした。

専門学校在学中に

治療か?慰安か?

というワードは耳にしていて
ニュアンスとしては、国家資格者たるもの、慰安となる技術に甘んじることなく、治療行為を目指すべきである・・という風に教示されていると、わたしは受け止めていました。

きっと私がいた専門学校は、鍼灸と、あん摩マッサージ指圧の両方を学ぶ学校であったので、あん摩マッサージ指圧という手技に対する戒めであったと思います。

鍼灸単体なら、慰安でなく治療であることは明白ですから。

あん摩・マッサージ・指圧は、それぞれ考え方も、技法も、歴史も違う技術なのですが、受けて気持ちがよいものであるのは共通です。

でも気持ちがよいだけでは、リラクゼーションの
もみほぐし
と一緒ではないか?

『もみほぐし』というのは、すごいパワーワードです。

わたしは、指圧を専門としているので、もんでほぐすわけではないのですが、一般の方にその違いはわからないでしょうし、あん摩ともみほぐしのどこが違いますか?といわれたら、少なくともわたしはその違いを技術的にみせることはできません。

だからこそ、慰安に陥らない、治療ができる施術者になるべきである・・という雰囲気のもとに学び、卒業しました。

治療というからには、診断ができなければなりません。
でも、診断という言葉は西洋医学の枠組みで使われる言葉なので、あん摩マッサージ指圧師が使うことはできません。

あくまで、アセスメント。診立てです。

訪問マッサージなどで、医療保険の範疇でお仕事をされているあん摩マッサージ指圧師は、もっとセンシティブに用語を使われるでしょうが、わかりやすいといえば、わかりやすい。

医師の診断のもとで、同意書がある患者さんに、東洋医学的なアプローチを医療保険の範疇でする。

とても自然な職域であると思います。

でもそれを自費治療の範疇で、リラクゼーションと競合する土俵でしようと思うと、いろいろな論理矛盾がおこるのです。

大手予約サイトに変更したら・・


オイルマッサージ

開業当初から使っていた、鍼灸院専門予約サイトから大手予約サイトに6月から変更しました。

鍼灸院専門のサイトはとても使い勝手がよかったのですが、従来掲載できなかった大手予約サイトに、鍼灸院や指圧院のプランができ、リラクゼーションと同じ土俵でお客様の目に触れることができ、選択していただけるようになったので、迷いながらも移行いたしました。

ところが大手だけあって、医療広告ガイドラインに沿った表現にはとても厳格で、とまどうことも多かったです。

たとえば、『治療院』という語句は、正式名称として保健所に登録されている名称なら掲載可ですが、通常の用語として治療という言葉は使用できません。

それどころか、『女性臨床鍼灸ならまち月燈』の『臨床』は掲載不可でした。

保健所の審査を通過した正式名称なのに、「医療施設として誤認を与える」という理由での不可です。

NGワードは、他にも婦人科、患者、問診票・・などで、今まで普通につかっていた用語でしたので、正直困りました。

とくにわたしは、『臨床心理学』と同じ意味で、『臨床』をどうしても使いたいこだわりがあったので、抵抗しましたが虚しく却下でした。

でもそれは、治療とはなにか?

を考える絶好の機会となりました。

オッケー、わたしがしていること、わたしがしようとしていることは

治療ではない。

では、わたしののアイデンティティはどこにあるのか?

カウンセリングルーム

治療院でもなくリラクゼーションでもない

『ならまち月燈』は、私以外にも女性鍼灸師、女性セラピストが曜日ごとに施術を担当してくれているシェアサロンですから、わたしの立場は大きく二つあります。

ひとつは現場で臨床を重ねる施術者としての立場。

女性専門のサロンなので、10代から80代までの女性のさまざまな「こころとからだ」のお悩みに、今まで真摯に向き合ってきました。

東洋医学的なからだの観方と、西洋医学的なからだの診方、心理学的なこころの観方は、哲学的なこころの観方はそれぞれ地続きであり、どこからどこまでという分け目がありません。

たとえば、頭痛でお悩みでいらっしゃる女性。

東洋医学的…梅雨に入って、湿邪によって水のめぐりが悪くなってできているのではないか?

西洋医学的…PCやスマホの長時間使用により、首肩の緊張で血行不良がおこることによって、引き起こされているのではないか?

心理学的…一人暮らしの老親の介護度が上がり、現状が立ちゆかなくなっており、なんらかの方策を立てるべき時期だが、リソースが割けず、頭の痛い問題である…ということの身体表現ではないか?

哲学的…子育てが終わるまでは、先のことを考える時間も余裕もなく突っ走ってきたが、これから私はどう生きるべきかの岐路に立っているのではないか?

というようなことを観ているわけです。

それは、どこからどこと切り分けられるものではないので、患者さんの物語としてとらえ、患者さんご自身が語られる言葉と、患者さんのおからだを診せて頂き、触れさせていただくことで、自分の中の感覚と照合させるような作業です。

私自身の興味の本丸はここにあります。

こころとからだ。

心身一如。

noteの一番の主題もここです。

もうひとつは、シェアサロンを経営する経営者としての立場

『ならまち月燈』は今、2部屋5人の施術者で運営しています。

1部屋は、保健所認可の治療院として、もう1部屋はリラクゼーション施設としての運営です。

従来の治療院は、保険診療が主であったり、徒弟制であったり、もちろんそこにはメリットもたくさんあったわけですが、現代ではなかなか課題も多い制度が残っていました。

昔は、偉い先生のもとに弟子入りして、勉強をさせていただきながら修行させていただくという有難いシステムが有効に働いていましたが、今はそんな余裕のある場も少なくなりました。

一方で、リラクゼーション業界という世界もまた違う課題を含む業態で、施術者に時間的、報酬的にも余裕のある働き方がしにくい場であると感じていました。

雇用されるか、開業するか…の二択ではなく、第三の選択肢があるのではないかと永年思っていました。

今は働き方も多様になっていて、フルタイムでしっかり生活費を稼ぐ必要がある方、子育て中で昼間の限られた時間しか働けない方、本業は別にあって夜だけパートタイムで働きたい方、定年退職して、年金も受給できるけれど、まだまだ元気、社会貢献も兼ねて働きたい方など、幾通りもの仕事観があります。

でも、ご自身の都合で働こうと思うと、大手のチェーン店で雇用されるか(低リスク低リターン)、開業して自分一人の看板で食べていく(高リスク高リターン)。

その間はないのでしょうか?

リラクゼーションは、大きな投資がいる業態ではないので、自宅サロンという形態もよく選ばれます。

わたしも卒業したてのときは、京都の自宅マンションでご紹介の方は診ていました。

でもやはり商業用でない施設は、生活感を消すことがまず大変で、よく知らない方を自宅に招くことのストレスもまたお互いにあって、施術に入るまでの空間づくりという点で、ヘトヘトになりました。

なので、そこに不特定多数の方を集客しようというフェイズに入るのは無理と諦めておりました。

もちろん、生活そのものが美しく、お手本になるような方は自宅サロンそのものがディスプレイになるので、そういう演出ができる方はもちろん問題ないわけですが、わたしと同じような課題を持つ方もたくさんいるという認識を持っていました。

それと比べると、今の業態はほんとうに楽です。

商業地のテナントであるので、堂々と広告宣伝ができ、駅近で複数の交通手段をご選択頂けるので、広範囲からご来院いただけます。

観光地なので、人の氣が集まりやすいということもあります。

私も週3日ぐらい働ければ・・という希望だったので、家賃やホームページ、予約システムなどの固定費を、自分一人で払わなければ・・という重荷なく、時間、空間をシェアできるのは本当に有難いことでした。

そして、一番意識してなかったことで、一番有難かったことは、仲間がいることで、複数の視点から患者さんをとらえることができることです。

同じ鍼灸師、指圧師といっても診立ては様々です。

自分には観えていなかった違う角度から観る視点に救われるという経験は何度もあります。

カルテは全員で共有しているので、患者さんの症状が動かなくて停滞しているときに、他の先生の施術を受けて頂いて、また違う視野からの意見を聴くという贅沢なことができるのです。

たとえば、わたしの指圧では刺激が強すぎるのかも・・という、気力体力が低下して、敏感な方に刺さない鍼をお薦めする。

刺さない鍼という治療法は、まだ世間的にはあまり知られてないですから、その新しい選択肢に同じ場所で出会っていただくということは、患者さんにもとても喜んで頂けます。

東洋医学は、西洋医学と違い、施術者の個性が強く施術に影響します。

同じことをしていても、それぞれの持つ氣が違うため、全く違う結果を生むことがあるのです。

誰が施術しても、同じ効果がいつも同じだけある・・ということを求めていらっしゃる方のご期待には沿えません。

でも、施術者それぞれの個性が真に発揮され、患者さんの個性にピタッと寄り添えた時に、いのちが歓喜する愉快な時間が流れている・・『ならまち月燈』はそんな場所を目指しています。

【告知】巡る整う・東洋医学のおはなし

さて、東洋医学の面白さを教えてくださる同志が、名古屋の梅村先生です。

今回zoomでの講義を初開催です。


開催日は7月7日ですが、申し込みは6月30日までです。

東洋医学ってなんだろう?という方から、指圧師ってなにを考えて、患者さんのお身体を診ているの?という方まで、是非ご視聴ください。

世の中には、身体療法のメソッドがあふれるようにあって、症状を一度で治す神の手メソッドとか、ここだけでいいとか、これだけ知っていればどんな痛みにも対応できます・・みたいなセミナーが耳目を惹きつけます。

主催されている方はそれぞれ真剣に命がけでメソッドは追及し磨き続けていらっしゃるでしょうから、本当にすごいと思います。

でも梅村先生や私がしようとしていることは、もっと地味な映えないことで、暮らしの中でじわじわと効いてくるような、セミナーを受講してくださった方の日々の滋養になるような講座にしたいと思っています。

どうぞ軽い興味本位で充分なので、遊びにいらしてくださいね。







最後まで読んでくださって有難うございます。読んでくださる方がいらっしゃる方がいることが大変励みになります。また時々読みに来ていただけて、なにかのお役に立てることを見つけて頂けたら、これ以上の喜びはありません。