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恐るべし、90歳の握力

祖母はもう90近くになるのでかなりボケてきていて、普段のお世話は主にケアマネージャーさんや母がしている。

そんなある日、母が祖母の家から青あざを作って帰ってきた。話を聞くとどうやらお世話されることが嫌な祖母に押されて転んだらしい。

母はいつも、

「実際に介護してみたらわかるけど、高齢者でも本当に力が強いんやぜ〜!」

といっていた。

そういった話を高校生くらいからたびたび聞いていたが、どうしたら年老いた祖母が母では抑えきれないほどの力を発揮できるのかいつも不思議に思っていた。

祖母は道端で軽く転んでは太ももの骨を折っていたし、それ以前からも痩せていて歩くのも手押し車がないと歩けないほどで、そんな姿からはとても想像がつかなかった。

そんな疑問が数年後の今年、1月1日に母と一緒に祖母に会いに行った時に解決することとなった。

まずは新年の挨拶を交わし、神棚や仏壇に家族と周りの人たちの健康を願う。

祖父が7年ほど前に亡くなってから、祖母は1人でずっとこの家に住んでいるのだが、正直、誤嚥性肺炎や急な病気で亡くなるリスクが大いにある年齢なので毎回会えた時は内心ホッとしている。

「ばあちゃん、俺の名前覚えとる?」

「ああ、覚えとるよ。元気け?東京はどうけ?」

「ああ、元気だよ。楽しいよ。」

そんな祖母との“僕のことや名前覚えているか”といった確認から始まり東京での生活の様子を報告していると、母が祖母に「握手でもして元気もらっておかれ。」と言った。

そこで握手をした僕は新年早々どころか1月1日の朝に今年1番であると確信するような衝撃を受ける。

え、ばあちゃんこんなに力強いの?


このヨボヨボな高齢者の体のどこにこんな力があるのか。エラーを起こしたコンピューターのように僕の脳は起きていることが理解できずショートした。そして同時に母が言っていたあの言葉を思い出した。

これか...。あの言葉はこういうことだったのか...。

その場ではなんともない顔をしたものの、あの力強い感触と早くも今年1番の衝撃が忘れられず家に帰って母に「ばあちゃんの力が強いと母さんが言っていた理由がわかったよ。」ということを話した。

そうしたら母は、

「そうやろ〜。しかもそれに加えて全体重かけてくるからもうこっちの腰が危ないよ!」

と笑っていた。

こりゃあ、母も存在自体が強いな。

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