「私オバサンだからコンピュータわからなくて」

最近、専門分野や学歴がばらばらな老若男女が集う研修に参加する機会があって、そこで講師から聴講者に課題が1つ出た。課題の内容はGoogleMapなどPCやスマートフォンを使うことが前提となるもので、私はちょうど持参していたPCで粛々と解答準備を進めていたのだが、そこでこんなフレーズが耳に飛び込んできた。

「私オバサンだからコンピュータわからなくて、どうすればいいのかな」

発言者は40~50代の女性。今回はこのフレーズについて思うところを。

中高年の女性だからITはわからない、というのは理にかなっているのか、という話である。さらに言えば年齢や性別で、ITの習熟度に差が出るのか、という点にも疑問を投げかけたい。

私の意見を述べると、ITの習熟度に年齢や性別は関係ない。IT業界では中高年の女性が活躍しているし、歴史的な話をすれば世界最初のプログラマーはエイダ・ラブレスという女性である。年齢や性別の問題ではなく、前述の発言者がたまたまコンピュータを知らなかっただけだ、というのが私の意見である。

ただ、上記の発言を深堀りすると、コンピュータに詳しいのは若い世代で、特に男性に多いという前提があるからこの発言に至ったのでは、と推察する。

コンピュータを含め、新しい技術は若い人の方が詳しい、これって本当だろうか? これが私の長年の疑問である。20世紀に「クイズ!年の差なんて」というテレビ番組で、出演者が年代ごとにヤングチームとアダルトチームに分かれて、ヤングチームの世代では常識となっている事柄についてクイズが出題され、それにアダルトチームが解答する、という構成がとられていた。この番組の肝は「年寄りは若者文化を知らない」という前提があったのだと思う。

しかし、日々知識の習得に励んでいれば、単純な比例の話で、人間は生きてきた時間が長いほど、蓄積される知識は多いはずであり、年寄りでも若い人と同等以上の知識を有するはずなのだ。もしそうでないのならば、ある時点から日々知識の習得に励むことをやめてしまっただけであって、年齢は理由にならない。

もちろん長く生きていても、未知の情報に遭遇することはある。重要なのはそのときの姿勢だ。「年寄りだから」「女だから」という理由をつけて"だから知ろうという行為を放棄する"のは間違っている。「私にとっては重要な知識でないと思うから、習得するのを放棄する」というならわかる。年齢や性別を理由にしてはダメだ。年齢や性別を理由にすると、中高年の女性でITのスペシャリストとして活躍する方々に失礼だ。


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