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尊敬する人に雇われるということ


私は今37歳で、パン屋でアルバイトとして働いている。
ここで働くことが今までになく気分がいいので、文章にしてみたくなった。


生き方を変えたくて仕事を辞めた


13年間家族だけの潤滑油メーカーで働いてきたが、個人的な転機を感じ、2019年末に辞めた。
仕事の当てはなく、自然で納得して生きられる状態を目指すことを優先することだけ決めていた。

会社を辞めて、このパン屋で働くまでの一年半。
全く仕事をしなかった期間があり、心を殺しながら、心を鍛えながら、しっくりっこない仕事をしていた時期があった。前職の経験を活かさずに済むような、いろんな仕事をするのは興味深くて満足感もあるが、"なりわい"になるような予感はしなかった。

私が仕事を辞めた時期にオープンしたそのパン屋には週に一度通い、そのうちにHPのライターとしての役割を貰ったりしていた。
どんどん新しくなる面白いパンや接客を体験し、たくさん話を聞き、店主やマダムの生き方に尊敬や憧れを実感していた。

ある日突然このパン屋を手伝うオファーをもらい、働き始めて2週間のパン工場をやめる連絡をした。

次にしたことは、オリジナルのエプロンを作ることだった。友人に布を染めてもらうよう頼み、エプロンの試作をした。完成したのは入店して4ヶ月後。その原動力はただここで働くことが嬉しかったからだ。
心から出る行動は自然で気分がいい。


プレッシャーと、いいものがある仕事場


パン屋での仕事は時間的に不規則で、製造も接客も慣れない時期はある程度あった。
潤滑油を作るのとは全く違い、うまく行かないストレスはこれまでにないものだった。

「自分はこの店に相応しくない、好きな店に迷惑をかけている」

そんな思いがよぎることは何度もあった。

それでも続けてこれたのは、店に対するリスペクトがあったからだ。
しんどさやストレスよりも、収入の少なさ(勤務時間が多くない)よりも、与えられるものや得られるものの方が上回っている実感は常にあった。

尊敬する人からかけられる期待、好きな店に貢献できる充実感、苦手なことができるようになる喜び、オーナーの家族とのふれあいなど。
他の職場には全くない、いいものが溢れていた。


発見が足りないのかもしれない

ここまでお読みいただいた皆様は、仕事に対してどんな収支計算をしているだろうか。

・やりたい仕事だから満足している。
・会社の事業が安定していて、給料が十分で、人間関係も悪くないからプラスだ。
・給料はいいが、色々なストレスを差し引きすると収支はマイナスだ。
・仕事があって、働けるだけで御の字だ。

「仕事は厳しくて当たり前だ」という意見もあるが、自分で選ぶ自由があるなら、自分が納得できる基準で選んで悪いことはない。
ある程度持続可能な自己満足ができるなら、それは正しい選択だ。
より良い状態を目指す自由を使わないのは、疲れているか弱っているか、心から満足しているかだろう。


「生きているだけで丸儲け」と言われるが、その儲けを上回る損失もあり得る。そしてこの世界や仕事が自分にもたらす、プラス面とマイナス面を評価し比較する感性は人それぞれだ。

今回、私がした体験は珍しいことではないだろう。しかし、気づいていない価値基準を発見することが、人生を豊かにするかもしれないことはことあるごとに伝えていきたい。

発見は勇気を出して、踏み出した先にある。




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