【エッセー】スナックのカラオケ
そういえば緊急事態明けに実家に帰ったときに、父母と行きつけのスナックに行った。
田舎なんで田んぼのど真ん中にある一軒家みたいなスナック。そんな場所なので近所には蛙くらいしかいないので、壁も薄くて、車で近づくだけで音が聞こえてくる。
なんのへんてつもない田舎のスナック。でもママも気さくだし、やっぱりスナックで飲む角ハイボールってのはなんであんなにうまいんだろうといつも思う(笑)
僕はカラオケが好きで、たまに世の中にシャウトをしないと頭がおかしくなりそうになる。昔は両親とカラオケに行くなんて恥ずかしかったけど、いつからか一緒にお酒を飲みだして、いつからか一緒に歌うようになって、そっからどうでもよくなった。
実は僕は高校一年生まで音大を目指していて(?!)、幼少期からずっとピアノをやってたしブラスバンド部でトランペットを吹いていたしパーカッションもやってたし、そして声楽も少し齧った。
でも、結局才能もないし努力も全然足りなくて、行けたとしても音大と名のつくだけの大学にギリギリ入れるかどうかだろうと、その道を泣く泣く諦めた。両親とも喧嘩しまくったけど諦めた。今思うとそっちの道に行ってたらまた僕の人生も色々変わってたのかなとも思う。
才能の話でいうと父は超絶音痴で(そのくせ歌うのは好き)、母も音楽のセンスは極普通。母方のおばあちゃんがまだ歌うのが上手な方かな?と思うくらいで、でもレーザーカラオケでご近所さんと歌っている時が一番ゴキゲンで僕もその真似事で全然幸せになれるのでとっても安上がりなアーティストである。
そこのスナックのママも自粛明けでやり方を模索しながらの感じだった。でもやっぱりお客さんがきてくれたのはとっても嬉しそうで、僕のことをいつも通り「あら!男前の息子ちゃん!また来てくれたのね♡」と褒めてくれて、僕は別にオバサンwに褒められてもどうでもいいけど(笑)、母がそれを横でだまってニコニコと聞いているのが嬉しいので『いえいえ』とか謙遜してみる。父は馬鹿なので「俺に似て・・・」とか言うので『いや、違うし!』とツッこむのがうちの十八番。
いつも通り「カラオケするか」と父が言い出し僕が「うん」と言うとママが『歌って歌って!』と煽る。
『自粛明けのカラオケ、初めてだわ!ちょっと待って!準備する・・・でも嬉しい。ちゃんと動くかな?あー、付いた付いた!マイク拭くね。』
『嬉しいわ。誰かの歌を聞けるの!』
ママがとっても楽しそうで、僕もうれしくなった。
カラオケの機械も歌ってもらうために生まれてきたのだし、それを一生懸命開発した人がいて、組み立てた人がいて、運んでくれた人がいて、それがここにあって、ママがスイッチを押して、そして最後に僕が歌うことで、その生涯を全うするというもの。誰が抜けても駄目。浮かばれない。
ママが少し泣きそうになっててうけた。
♬~僕の歌声にそんな力、あったっけか?
いやいや。カラオケがちゃんと動いてくれて嬉しいだけ。
クスっと笑えたら100円!(笑)そんなおみくじみたいな言霊を発信していけたらと思っています。サポートいつでもお待ちしております。