ドラマ『モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~』が素晴らしいので、魅力をプレゼンしたい!(後編)
閲覧いただきありがとうございます。
「前編」に引き続き、ここからは「後編」として、
『モコミ』という作品の魅力について、一視聴者の視点から熱く語っていきたいと思います!
「前編」はこちらからご覧いただけます ↓
https://note.com/you_tachibana/n/nd3d6a545a49c
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(注)これから先の内容については、必要に応じてより詳しい説明を挟みますので、多少のネタバレを含みます。
筆者的には、一人でも多くの方に「このドラマを見て欲しい」という想いからこの記事を書いていますので、最後まで読んでもらった上でもドラマ自体を楽しんでいただけるような構成にしたつもりです。
中には、予備知識を入れることなく、一から自分の目で楽しみたいという方もおられると思いますので、その方は一度この記事から離れられることをオススメします。
~ なお、これより先は一視聴者として、作品の中で僕が感じたことが主になります。
色々な解釈の仕方があると思いますので、その点をあらかじめ念頭に置いて読み進めていただければ助かります。~
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●モコミにとっての「おじいちゃん」と「お母さん」
僕は、「前編」の最後にて、
モコミから見て「おじいちゃん」と「お母さん」は対極をなす存在
だというようなことを述べました。
これは、いったいどういうことなのか。
ここでは、そのことについて掘り下げていこうと思います。
基本的に「おじいちゃん」は、モコミにとっての唯一の理解者であり、彼女が唯一無条件で心を許して本音を話せる存在として登場します。
対して「お母さん」はというと、モコミを心配するあまり、モコミの「物の気持ちがわかる」という’’普通ではない’’彼女の発言に難色を示し、彼女と相容れない存在として描かれています。
ここまでは、誰がドラマを見ても明らかに感じ取れることだと思います。
では、そもそも何故モコミが「おじいちゃん」にのみ無条件で心を開いているのかというと、
それは、家族も含めた中で「おじいちゃん」だけが唯一モコミの話を’’嘘’’としてではなく真面目に聞いてくれたからでした。
「物の気持ちがわかる」という俄かには信じがたいモコミの話を’’本当のこと’’として聞いてくれる人は周囲にはおらず、
それは、「モコミを想い、優しく接っしようと努めてくれる家族」ですら、彼女の話にどう取り合うべきか慎重になってしまう程でした。
感性が人より鋭いモコミにとっては、自分の発言に対して向けられた「疑いや戸惑いの感情」というのは、どんなに上手く取り繕うとも敏感に感じ取ってしまうものだったのでしょう。
ある種のファンタジーとしてしか取り合ってもらえなかったモコミの存在を本心から認めて、「会話」をしてくれたのが「おじいちゃん」だったのです。
そんな「おじいちゃん」ですが、実は「お母さん」との共通点があると思っています。
それは、
「おじいちゃん」も周りの人と同様に、「物の気持ちが分かるわけ’’ではない’’」
ということ。
もっと嚙み砕いた言い方をすれば、
モコミが’’本当に’’物の気持ちが理解できるのかどうか、それは、おじいちゃんにとっても、同様に’’分からない’’ということです。
つまり、モコミにとっての’’理解者かどうか’’は、最初の共通の段階から、どう分かれるかで決まるということなのです。
そして、このことから、あることが分かります。
おじいちゃんにとっては、モコミが言っていることが’’本当’’なのか、’’嘘’’なのかはどうでもよかったのです。
「おじいちゃん」にとって重要なことは、それが’’本当か’’どうかではなく、
自分の常識として理解できないことであっても、
他者の気持ちを汲もうという意識を持つこと
だったのではないでしょうか。
理解できなくてもいい。
ただ、「そういう考え方もあるんだね」と認めてあげれば、それで良かったのです。
「おじいちゃん」はモコミの話に対して耳を傾けて、それを受けて、今度は彼の中の言葉で返した。
ただ、それだけだったのです。
モコミからしてみれば、自分の言ったことに対して、相手の感性を添えた言葉が返ってくるという、何気ない「会話」の形が成り立ったことこそが、自身の存在を受け入れて貰えたことの何よりの証だったのではないでしょうか。
理解できないものを認めることは、居心地悪く感じることかもしれない。
これまで自分の中になかった「未知の世界の価値観」を認めてあげること。
モコミの大好きな「おじいちゃん」は、それが出来る人だった。
モコミから見た「周囲の人達」との、この「対立構造」こそが本作の’’見どころの一つ’’なのだと、個人的には強く感じました。
モコミの気持ちが’’分からない’’のは皆同じ...。
実は、そこからが分かれ道。
その心配を口に出し、自身の常識に’’当てはめよう’’とする「お母さん」
例えわからなくても、相手の価値観を’’尊重し、受け入れる’’ことができる「おじいちゃん」
おじいちゃんだって、モコミの気持ちを「理解している」訳ではないのかもしれません。
だけど、それでも、モコミにとっては「’’唯一の’’理解者」だったのです。
それは、そういう「おじいちゃん」のような考え方を持った人が、広い世の中であっても「とても稀有な存在」だったからなのではないでしょうか。
●「理解すること」と「認めること」の違い
モコミが「人から見て変わっている」ことは、
モコミ自身が一番よく分かっています。
だから、なかなか本音が言えない。
モコミはきっと、別に相手に対して「理解してほしい」と望んでいる訳ではないと思うのです。
ただ、相手に「こういう自分の存在」を「認めてほしい」だけなのではないでしょうか。
ここでいう「理解」と「認める」は近いようで、実は異なるものだと個人的には考えています。
「理解する」とは、
自分の解釈として、自身の中に落とし込むこと。
理解することで初めてその原理に基づいて、自身の意思で行動することができるようになる。
「認める」とは、
自身の中に落とし込んだり、その考えに基づいて自身が行動することができなくても、その考え方があることを受け入れ、尊重すること。
だと、僕は思っています。
「理解すること」の手前に「認める」という行為があるのだとドラマを見て感じました。
そのきっかけをくれた、とても印象的なシーンがありました。
ー 「2話」の、ファミレスで、「おじいちゃん」とモコミがラーメンを食べるシーン。
’’フォーク’’でラーメンを食べるおじいちゃんを見て、
モコミが「どうして、"フォーク"でラーメンを食べてるの?」と聞きます。
それに対して、「フォークでラーメンを食べちゃいけないって’’ルール’’でもあるのかい?」と返したおじいちゃん。
続けて、「いいかい、モコミ。」
「チカコ(母)がバイトを辞めちゃいけないと言ったことは、チカコが’’勝手に決めたルール’’なんだからね。」
とモコミに伝えます。
その後、すんなり、「おじいちゃん」はフォークを’’箸’’に持ち替えて、
ラーメンを食べて一言、
「ラーメンはやっぱり"箸"で食うのがうめぇな~。」と笑うのでした。
そのシーンは正に、「おじいちゃん」が多様な価値観を受け入れ、許容することが出来る人であることを示唆していたと思います。
そして、その様子を見た’’モコミ’’もまた、自身の箸を’’フォーク’’に持ち替えて、ラーメンを食べて満面の笑みで笑うのでした。
お互いがお互いの価値観を受け入れて、笑い合うというそのシーンには、思わずグッとくるものがありました。
このシーンは正に、「理解する」ことの一歩手前、お互いの価値観を「認め合う」ことの良さが詰まった素晴らしい演出だと感じました。
この他にも、作中には、心揺さぶられるようなシーンがいくつもあります。
それらについては、敢えて、ここでは触れないこととします。
是非とも、皆さんの目で見て、感じていただきたいのです。
●「物の気持ちが分かる」が表すことの意味って何だろう?
ここでは、少し作品を「俯瞰」して見てみたいと思います。
「物の気持ちが分かる」という設定を聞いて、皆さんは率直にどう思われたでしょうか?
モコミが「物の気持ちが分かる感性を持ち合わせた子」であることが、
作品の演出上で分かっている「私たち視聴者側」ですが、
「物の気持ちが目に見えて分かる」という設定は少々突飛だと思ってしまう人も、おそらく少なくないのではないでしょうか。
ともすれば、それこそが、まさに、このドラマで伝えたいことなのではないかと個人的には思ったのです。
ドラマの中で、「視聴者サイドの感覚」に一番近いのは、
実は、「物の気持ちを理解できる」という常識から外れた価値観に対して、理解が’’できない’’側の感覚、
つまり、「普通社会に生きる人達」の気持ちなのではないでしょうか。
それを、’’モコミの視点’’からストーリーを描くことで、
「周囲に対しなかなか理解して貰えないもどかしさ」だったり、
「本音を言ってしまいたいけど、口に出せない葛藤」だったり、、
行動として’’表にあらわれる面’’とは裏腹の’’内面の部分’’が、
「本来であれば、彼女を理解することが出来ない人たちにも」透けて見える構造になっているのです。
そこで、私たちは「選択」を突きつけられることになります。
「お母さん」や「周囲の人たち」のように、自身の常識にない価値観を「変だな」と思うか、
はたまた、
「おじいちゃん」のように、自分の中になかった価値観を「個性」として尊重するか
どうかを。
ドラマタイトルの『モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~』の
「ちょっとヘン」
という部分は正に、そういった私たちの’’見方の現れ’’なのではないでしょうか。
ほとんど無意識かもしれません。
人は、「自分の中にある常識」では推し量れない「存在」に直面した時に、無意識に「変だな」と思ってしまうものだと思います。
しかし、そういう些細な’’敬遠’’が、モコミのような人たちを生きづらく感じさせてしまっているのではないでしょうか。
きっと、「おじいちゃん」であれば、
’’「モコミはモコミなんだから、別に気にしなくても良い。だって、それが、モコミなんだから。」’’
と言葉をかけると思うのです。
もちろん、これらはあくまでも、筆者が’’勝手にそう感じた’’というだけのことなので、実際にはもっと別の意図があるのかどうか、それは分かりません。
しかし、個人的な感想をさらに付け加えれば、タイトルの最後が「だけど~」で終わっているところには、ほんのり希望を感じています。
●最後に
以上が、筆者が『モコミ』の魅力として、特に強く感じた部分になります。
ここまで長らく付き合っていただき、本当にありがとうございました。
現時点(2月19日現在)では、まだ「3話」までの内容なので、まだまだこれから先の展開が楽しみですよね!
個人的には、「お母さん」やモコミを取り巻く「周囲の関係」が今後どう変わっていくのかが非常に楽しみであります。
もちろん、何よりモコミ自身の変化も!
できれば、より沢山の人とこのドラマの行く末を見届けられたらなと思っています。
そして、「モコミちゃん」という一人の人間の存在を通して、"世の中には、たくさん「彼女のような人たち」がいることを、より一人でも多くの人に知っていただけたら"と思っています。
さいごに、もう一つだけ余談を挟んで、本記事を締めくくりたいと思います。
僕は、「前編」の最初に、「HSP」について触れました。
それは、実は、モコミの感想などを検索すると、
予測変換で「モコミ HSP」と高順位で出てくるからでした。
実際、モコミが抱えている葛藤や苦しみは、「HSP」が抱えるそれにかなり近いものがあると思います。
だから、「前編」の記事の冒頭で「HSP」について触れました。
ただ、個人的には、’’必要以上に’’「HSP」だから特別どうという意図はありません。(自身もHSPと思っているからこそ敢えて言いました。)
「HSP」というのはあくまで気質を’’一言で表現する言葉’’として、便宜上使っているものだという認識です。
それ以上、その「言葉」にすがるつもりはありません。
なぜなら、たとえ「HSP」であろうとなかろうと、等しく皆「同じ社会」で生きていかなければいけないからです。
だから、必要以上に’’「HSP」だから’’という基準を持ってしまうことは、むしろ、自分自身の可能性を狭めてしまうことにもなりかねないと、僕は思っています。
だけど、どんなに心を強く持っていたとしても、’’生きにくい’’と感じてしまう瞬間はたくさんあって、それだけはどうしようもないのです。
そんな時に、『モコミ』などの作品を通して、抱えた苦悩に寄り添って貰えることが、どれだけ救われた気持ちになるか、、。
それを、今回僕は、強く感じたのです。
HSPは、相手が言ってくることは大体、予想がつきます。
幼い頃から他人と食い違ってきた経験上、自分がこういう行動を取れば、相手からはきっとこうやって否定されるんだろうなと分かってしまうものなのです。
日ごろから、それらを丸々分かったうえで、でも、そうするしか出来ない現状にいることがとても苦しいのです。
そのうえで、相手から’’予想通りの言葉’’が返ってくると、「そんなことは分かってる!!」と叫びたくもなりますが、そんなことが出来るわけもなく、’’本音も言えない悔しさ’’と’’どうしようもなさ’’で胸と頭の中がいっぱいになります。
「2話」でモコミが涙ながらに感情を吐露するシーンは、そういう切実さが滲み出ていました。
バイトを辞めれば、当然、母に否定されることは分かっていた。
しかし、’’自分を変えたい’’一心で自分の誕生日を迎えたことを皮切りに新たな決意をしたのです。
一連の彼女を見て、テレビの前の僕は、’’かつて自分が感じたことのある’’「もどかしさ」がそこにあるのを強く感じました。
誰にもわかってもらえないと思っていた感情が、遂に「分かってもらえた」ことに、何だか救われたような気持ちになれたのです。
きっと、あなたの心にも届くことを願っています。
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最後まで見ていただき、ありがとうございました。
『モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~』は、
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