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痛みと共感のダブルパンチ

読書の秋ですね。普段は食に全振りしてますが、そんなわたしも「あ、久しぶりにあの本読み返したいな」と本棚から引っ張り出すことが増えるのがこの季節です。

最近、こんなことがありました。
電車に乗っていたときのことです。女子大生と思しき2人組の話し声が耳に入ってきました。AちゃんとBちゃんとしておきます。

Aちゃん
「ねぇ、この間彼氏と別れたって言ってたけどさ、今でもたまに連絡取ってるんでしょ?確かヨリ戻そうって言われてなかった?」

Bちゃん
「うん、まあ連絡は取ってるけど、別に大した内容じゃないよ。あと復縁は絶対ないかな。」

Aちゃん
「え、なんでよ。」

Bちゃん
「うーん、うまく言えないけど、読み終わったあとにまた読み返したくなる本と1回読んだらもう十分かなっていう本あるじゃん?そういうことよ。」

失礼を承知で思わずBちゃんを穴が開くんじゃないか、というくらい見てしまいました。
なるほどなあ、と思いました。そしてBちゃんがどんな人生を歩んできたのかとても気になりました。(もちろんいい意味で)

ということで(?)わたしが最近読み返した本を紹介します。
綿矢りささんの『かわいそうだね?』に収録されている『亜美ちゃんは美人』です。
(先日、高校からの親友が彼氏と入籍したよ~と嬉しい報告をしてくれたので、女性同士の友情系が読みたくなったのです)

表題作の『かわいそうだね?』と『亜美ちゃんは美人』の2篇からなるこの本ですが、わたしは断然後者のほうが好きです。

さかきちゃんは美人。でも亜美ちゃんはもっと美人。


この書き出しから物語は始まります。
さかきちゃんと亜美ちゃんは高校時代に仲良くなり、大学、社会人になっても付き合いが続く親友同士。
高校時代、さかきちゃんの隣にはいつも亜美ちゃんがいて、さかきちゃんも美人なのに亜美ちゃんの隣りにいるとどうしても引き立て役になってしまい、周りからは「よっ亜美ちゃんのマネージャー!」「亜美ちゃんをしっかり守れよー!」と完全にネタな存在として扱われてしまいます。

このお話は、大体の女性が通る(と言っても過言ではない)女性ならではの複雑な友情が丁寧に描かれていて、友だちと自分を比べて悩んだことのある人なら刺さるポイントが多いのではないかなと思います。

かくいうわたしも、大学生のとき初めてこの本を読んだとき、主人公の「さかきちゃん」という呼ばれ方に圧倒的共感を覚えて胸が痛くなりました。
同じ経験を何度もしたことがあるので、読み進めるのが辛いくらいでした。

初めて読んだときはとにかく「さかきちゃんの気持ち分かる〜〜」とさかきちゃん視点しか見えてなかったですが、数年経った今は亜美ちゃんや周りの人の心の機微も感じ取れてまた違った楽しみ方ができました。

純粋な友情物語ではなく、あえてこの本を選んだ理由ですが、物語の最後に亜美ちゃんの結婚式のシーンがあります。当然さかきちゃんは参列し、友人代表のスピーチをします。
わたしはさかきちゃんのそのスピーチが好きで、親友が結婚するというのも相まってこの本を読み返したくなったというわけです。

これ以上はネタバレになってしまうので、気になる方はぜひ読んでみてください。


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