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LGBTカミングアウト経験談|ここから始まるオープンストーリー

カミングアウトって緊張しますよね。それはもう本当に。あの緊張感っていつになっても慣れないというか…初めてカミングアウトしたのが21歳の時だったので、もう10年以上たっているのですが、今でもめちゃくちゃ緊張します。

もちろん「カミングアウトはした方がいい」ってことはないです。カミングアウトって別にしなければならないものではないし、それがその人にとって必要なものならすればいいと思うんですよね。強制されることではないし、その人ができると思ったタイミングでするべきことだと思います。ずっとしないのも選択のひとつ。

ただ自分は、やっぱり自分の大事な人には自分の本質的な部分は知っておいてほしいと思ったからカミングアウトすることにしたんです。

さて、前置きが長くなりましたが今回は「初めてカミングアウトした時の話」を書いていこうと思います。

はじめてのカミングアウト

自分が初めてカミングアウトをしたのは、大学3年生の時。可愛がってもらっていた大学教授でした。先生は、一般的な教授イメージとかけはなれたアウトローな方でした。何をするにも豪快で、基本的に怖いイメージを持たれがちでしたが、なぜか自分は懐いてよく先生のもとに話をしに行っていました。

それはもう研究もしないままに何時間も小部屋で語り合いました。サシで何度も飲みに行っていろんな話をしたりもしました。

そして、いろいろと話すなかで、

アウトローすぎるこの人なら話しても大丈夫かも…。

という謎の感情がわいてきて、カミングアウトをすることになったのです。

はじめてのカミングアウト…正直めちゃくちゃ緊張しました。月並みの表現だけど、心臓が口から出そうなほどに。きっとこの緊張感って当事者しか分からないと思うんだよなぁ…。カミングアウトってホント清水の舞台から飛び降りる覚悟でするもんなんですよね。

気持ち悪いって言われたらどうしよう…

嫌われたらどうしよう…

この人との関係が切れたらどうしよう…

そんな負の感情がぐるぐるぐるぐる頭を巡り巡って…吐きそうになります。どうでもいい人にはそもそもカミングアウトしないし、自分が大切だって思うからするわけなので、その分恐怖心は強いんです。

いつもの小部屋で先生と話をしている時…自分は意を決して話し始めました。

あの…自分は…その……女性が好きなんです

たどたどしく、よわよわしく…先生の表情を見ることが怖くて直視することはできなかったから、うつむきながら伝えました。

・・・

・・・

・・・

・・・

多分数秒の間だと思うんですが、ホントめちゃくちゃ長く感じて、おそるおそる顔をあげました。

すると、先生は

え?それで?😃✨

みたいな顔しているのです。(笑)

???????

え?????

なにその顔…。(笑)

一瞬状況が飲み込めない自分に、先生は言いました。

教授「その続きは?え、誰かが好きって話じゃないんか。」

自分「いや、そういう事じゃなくて、それでずっと悩んできてですね。」

教授「そんなん悩む必要ない、普通普通。なんだもっと面白い話かと思ったわ。」

…いやいや、ちょっと待て。ポップすぎんか?(笑)

こっちの悩みとのギャップがすごすぎて、逆に面白い。いい意味で期待を裏切るこの感じ…「さすがだな」って思いました。もうこんな反応だったので、一瞬で緊張はなくなり、いつもより寒く感じた小部屋はいつもどおりのフランクな空間に早変わりしました。

自分「いや、結構悩みますよ。友達に言ったら嫌われるかもって思って、誰にも言えてないんです。」

教授「え、そんなことで離れていくやつなんて友達じゃないだろ。離れていくなら、こっちから友達やめてやる!って思えばよくない?」

いや…マジか。やっぱすごいな…!!!なんなんだこの人は。自分の今までの悩みを一気に吹き飛ばしてしまいました。(笑)

確かにそうかもしれない…そう思ったのです。マジで目から鱗落ちてたんじゃないかってくらい「目から鱗」を実感しました。(笑)

こうして想像していたよりも何千倍もあっさり終わった初カミングアウト。この経験によって、自分のカミングアウトが始まっていきました。

友達へのカミングアウト

あっさり終わった初カミングアウトとは一変、やはり友達へのカミングアウトはなかなかの勇気がいりました。面と向かって言う勇気がなかった自分は、当時一番仲の良かった女友達に手紙を書くことにしたのです。

何度も書き直した手紙…「どう伝えれば嫌われないだろう」そんなことを思いながら、うんと悩んで書きました。

その手紙には、

「今まで隠しててごめん。でも〇〇には知っていて欲しかったから伝えました。もし受け入れられないなら、正直に言ってもらっていいし、友達をやめてもらってもいいからね。」

と書いて渡しました。本当に怖かった。とても恐怖だった。泣きそうなくらいに。

途中で渡して気まずくなるのが嫌だったから、友達と遊んで別れる間際に渡しました。「帰ってから読んでくれ。」と。その日は、どんな反応が来るのかわからず、怖くて眠れませんでした。そして、翌日。学校は休みだったけど、彼女は返事の手紙を書いて家まで持ってきてくれました。

渡してくれた時の感じから、嫌なことは書いていないだろうなと思いながらも、「友達やめる。」って書いてあったらどうしよう…震える手で手紙を開けました。

手紙には

「言ってくれてありがとう。勇気が言っただろうけど、初めて話してくれるのが私で嬉しいです。友達やめてもいいって書いてあったけど、そんな浅い関係を○○と作ってきたつもりはありません。これからもずっと仲良くしてください。」

と書いてありました。読んでいる途中から、次々涙があふれてきて、「あぁ、この子に話して本当に良かった…。」と心から思いました。

はじめての友達へのカミングアウトがこんな感じじゃなかったら、きっと自分は今でも完全に心を閉ざして生きていたと思います。もしかしたら、絶望して命を絶っていたかもしれません。

絶対にこの日のことは一生忘れることはない。

そう言い切れます。

カミングアウトの意味

たかがカミングアウト、されどカミングアウト。とかく初めてのカミングアウトは、その人の一生を左右する一大イベントです。受ける側の反応で、命を左右するといっても過言ではないのです。

もちろんカミングアウトをする側も、受ける側のことも考えてしなければならないと思います。受ける側にとっても、相当な驚きとストレスをかけるものだと思うので。

ただカミングアウトを受ける側の人にどうか分かってほしい。「カミングアウト」の意味を。単なる事実の報告ではないんです。あなたに向けた、大事なあなただからこそ言いたい「自分の本質の告白」なんです。そのカミングアウトをするまでに、死ぬほど悩んで、最大限の勇気を振り絞って言っていることをどうか知ってください。

そのあなたの反応ひとつで生きる希望にもなれば、命を絶つほどの絶望にもつながるものなんです。

だからカミングアウトに対して「そんなことどうでもいい」と軽く流したり、「気持ち悪い」と冷たくあしらったり、「私のこと好きにならないでよ」って笑えない冗談で返したりする前に一度考えてほしいのです。今まであなたと築いた関係のことを。その関係が「セクシャリティ」によって全て変わってしまうのかを。

もちろん全ての人に受け入れてほしいと言っているのではありません。なかなか受け入れられない人もいると思います。それで関係が変わるのは仕方ないこと…強制できることではありません。でも、勇気をもってした「告白」に対して、最大限の思いやりで返してくれると嬉しいのです。そのカミングアウトが後悔に変わらないように。

現に自分もはじめてしたカミングアウトがこの2人でなければ、今のように色んな人にカミングアウトできる自分にはなっていなかっただろうなと確信しています。

カミングアウトについてもっと知るために

カミングアウトをする側、される側…はじめてはどちらも緊張するものです。

今までカミングアウトをしたことがある人、ない人、されたことがある人、ない人。色んな人がいると思います。どんな人でもカミングアウトについて詳しく知るためにとてもいい本があります。

カミングアウト・レターズという本。

この本はカミングアウトをした側とされた側の手紙のやり取りを載せている本です。両方のリアルな気持ちが書かれていて、終始半泣きで読みました。

カミングアウトを受ける側も、初めてであれば「どう受け止めたらいいのか」と悩むもの。カミングアウトを受けた親の葛藤などもこれを読んでよく分かりました。カミングアウトを受けた側の孤独や苦痛も、これを読めば少しは和らぐのではないかと思います。

する側も、される側もお互いに思いやりをもったカミングアウトになることを願っています。少しでもこの記事があなたのカミングアウトに役立つと嬉しいです。

今日も最後まで読んでいただきありがとうございました。

それでは、また!

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