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着物の着付けを学校教育に取り入れたい! - 先人たちがやってこられたコト、私ができるコト。

自分で着物を着られる人は、17%。今後、機会があれば着てみたいという人は、26%(内、着物を着たことがある人では40%、一度も着たことがない人では9%)。着物着用時に不安・困ることの第一位は、自分で着られない。(着物に関するアンケート調査:マイボイスコム2018年1月実施 n=10,918)

もともと日常着だった着物は、時代の流れと共にすっかりフォーマルなイメージが刷り込まれてしまった。

洋服に普段着からオフィスカジュアル・スーツ・ドレスなど、シチュエーションやその日の気分で着分けがあるように、和服にもさまざまなバリエーションがある。でも、これが案外知られていないんだな。ということを各SNSや知人の声から改めて実感している。

私はというと、母が日常的に着物を着ていたので、幼い頃からなじみがあり自然と興味を持つようになった。また、母の着物をすべて譲り受けたのをきっかけに、自身でも着物を楽しむようになった。

そして今、会社員との兼業で着付けの仕事をしている。

着付けを仕事にしようと思った理由

当初は、着物のかわいさに魅了されたのと、自身が楽しめられれば良い。という趣味程度の感覚だったが、思いのほか周りには、『着物=正装』『高価』『着るのもお手入れも大変』など、着物に対してネガティブなイメージを持っている人や、『母や祖母の着物があるので機会があれば着てみたいが、自分で着られない。』という人が多いことを知る。

であればそれらを払拭し、着物の着方とともにワードローブのひとつとして手軽に着物を取り入れる楽しさを伝えたい。と、考えるようになった。

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(↑浴衣+半幅帯で手軽なワンピース感覚の装い。木綿・麻素材なので、いずれも洗濯機で洗える。)

着付け教室は各地に数多く存在するが、それだけでは私のように着物が身近にあった人か、もしくはどこかのタイミングでたまたま着物に興味を持った人にしか伝えられない。

できるだけ早い段階から、セレモニー以外でも着物に触れ、着方を学ぶ機会があれば、もっと裾野を広げられるのでは。と考え、タイトルのとおり『学校教育に取り入れたい!』と、思い至ったのだ。

例えば、中学校で浴衣・高校で着物の着付けを、課外授業のような形でも良いので実施できないだろうか。後に興味を持つか持たないかは、他の科目と同様でそれぞれだけれども、今より身近に感じる人が増えるのではないかと考えている。

そして、想いを実現するための第一歩として、着付け教室を立ち上げた。

私がこれまでに実施したこと

教室開講は、思い立った当初(2017年)から3年後に照準を定めて、準備を進めた。

趣味程度の軽い気持ちではじめた着付けを、人に伝えられるようになるためには、改めて基礎からじっくり学んで技術を身に着けたいと思ったのと、ちょうどオリンピックイヤーで海外から多くの方が訪れるので、学校への働きかけの説得材料のひとつになる。と、考えたからだ。さらに大阪は、2025年に大阪万博も控えている。

さて。予定通り2020年2月に開業し、その前から少しずつSNSで発信をしていたこともあり、早速翌日から着付けレッスン・着付けご依頼のお申込みをいただくようになった。

並行して、学校での着付け実習における過去事例がないかを調べてみると、中学家庭科授業に和装を導入すべく働きかけていたNPO団体(和装教育国民推進会議)を発見した。

が、奇しくも2020年2月に解散していた。。。

・母校へ打診
そこで、母校(私立女子校)へ他校の事例と合わせて打診をしてみた。

→ 撃沈。。。

<断られた理由>
・授業で実施している
・外部講師を招く予定は無い

華道や茶道など、教養講座に力を入れている学校だったが、着付けを実施している様子は伺えないのだが…。

・NPO団体所属 着付け講師の方へメール
しばらく手段を模索しながら、そもそも個人事業主では受け入れ難いのかも知れない。と思い、先述のNPO団体について改めて調べてみた。

残念ながら、現在の問い合わせ先は見つけられなかったが、当該団体より派遣されて高校や中学校へ着付け指導に行かれた方々のblogをいくつか発見したので、メールを送ってみた。

→ レス無し。。。(後に、お一人の方から連絡をいただいた。)

・Clubhouseで現役教育関係者の方々から意見を伺う
同じ頃、新たなSNSである『Clubhouse』が一気に広まったのを機に、学校関係者の方からお話を伺うべくroomを立ち上げようとタイトルを考えていた矢先、たまたま教員・教育関係者が集まるroomを発見した。

「これは!!」と思い入室して想いを伝え、実現の可能性とどのような手順を踏むのが順当なのかを質問をしてみた。

→ 好反応かつ色々とアドバイスをいただき、「とりあえず、大阪市教育委員会に打診するのが吉。」との回答を得る。

・地元の市会議員に相談
とはいえ、教育委員会とのアポが簡単に取れるとは思えず、知人にパイプがある人はいないかと探してみた。

そういえば、いきつけのカフェに地元の市会議員さんがよくいらっしゃるので、店主に繋いでもらおう。とカフェに足を運んだら、なんとその議員さんが先客でいらしたのだ!

驚くと同時に、引き寄せの法則って本当にあるんだな。と思いつつ、恐る恐る声を掛けると…。

「この後、事務所へどうぞ。」となり、
「私の正しい使い方ですね。然るべきルートで打診します。1週間以内に結果をご連絡します。」と、頼もしい回答をいただいた。

→ 道具の問題等もありNG。。。
代替案として、PTA経由はどうか。とのアドバイスをいただく。(とはいえ、そこにも伝手はないんだよなー。。。)

・知人の繋がりを発見!
ふりだしに戻り、改めてNPO団体の取り組み等を調べていると、活動報告レポートの集合写真に知人女性が写っているのに気づいた。(解散した後、それを発展的に受け継ぐ団体として、「和装教育国民推進連合会」が新設され、運営を委ねられた様子。)

早速連絡をし、代表の方に取り次いでもらえないかと依頼をしたところ、快諾をいただき複数の方を介して、ようやく現大阪府支部代表の方に直接ご連絡をすることができた。

入会!いよいよ今月末に開催される総会にはじめて参加する。(例年5月に開催しているが延期になっていた様子。)

大阪府支部は積極的に活動をしているものの、受け入れ先の学校数は、市ごとで差が激しい様子。(高槻市・東大阪市・守口市等は比較的盛んだが、大阪市の事例はほとんど無いらしい。)これは、各教育委員会と各学校家庭科教員のどちらの影響が大きいのかは分からない。

・受講者さまに高校教師現る!
少しずつ、着付け教室の受講者さまも増える中、なんと高校教員の方が習いに来られた。その時は休職されていたのだが、チラリと私の考えを打ち明けてみたところ共感いただき、「復職の際には、学校に打診をしてみる。」というありがたいお言葉をいただいた。

国際教養科のクラスを受け持っておられ、以前から「和装文化等も伝えたい。」とのお考えだったそう。

→ この春から復職をされ、学校からも「是非に!」とのことで、今夏時間を取っていただけることになった!(やはり、学校によってこのあたりの柔軟さは、かなり差があるのだろうか。)


よし。ようやくスタートラインには立てた。

実は、着物業界の先人たちが長らく活動されていた!

ご存知でない方も多いと思うが、実は2012年から中学校の家庭科の教科書に「ゆかたの着方を学ぶ」が、導入されている。

私も調べるうちに知ったのだが、まさにこれは『和装教育国民推進会議』の働きかけの賜物だった。

同会議は、1996年11月、全国呉服専門店協同組合、振興団体、着付け、和裁の各団体が結束し、中学校へ和装教育の導入を目指そうと設立。当時の全呉協理事長・三浦利夫氏(故人)が旗振り役となり、国会への陳情活動をはじめ全国規模の署名運動(98年)を展開しました。
51万余の賛同署名を持って国会に申請した結果、翌99年中学校学習指導要領(技術家庭科)に和装教育の内容が発表され、2001年4月から家庭科の教科書に和装教育の項目が編さん。平成24年度に配本される新しい中学校の教科書(技術家庭科)に「ゆかたの着方を学ぶ」課題が必修学習として採用されました。

▶ 和装教育運動は今後各地の支部で推進! 「きもの情報交換会」開く/幸せプロダクション (NEXT Webolution by PR現代)

ただ、上記のレポートには、「現在47都道府県すべての支部が設立され、全県で支援体制が整っています。」とあるが、そもそも学校側からの要請がなければ成り立たないし、私の周りでも中学校で履修した。という話は聞いたことがない。(先述の通り、地域差はあるようだが。)

なぜ広まっていないのか?

思いつくハードルとしては、

・生徒の浴衣所有率
・浴衣の着付けを教えられる家庭科教員の存在
・教えられても教員1人では無理がある

といったところが大きいのではないだろうか。

そこをサポートすべく当該団体が存在し、複数講師の派遣と浴衣のレンタルも実施しているのだが、それでも受け入れられない理由は何なのか?

・着付けなど不要だ。と考える教員が多い?
・こなすべきカリキュラムが多すぎて時間が割けない?
・だれがどこまで費用負担するのか問題?
・活動自体の認知不足 or 双方のコニュニケーション不足?

まずはこのあたりの原因を知ることで、改善策を模索したい。

その反面、同じく2012年から中学教育に組み込まれ、一気に全国に浸透した文化がある。


ヒップホップダンス だ。

知人のダンス講師から聞くところによると、一時期中学校の教育課程から排除されたダンスが復活するとなった際、いち早く動いた協会があったらしい。

教育大学などとも繋がり、教員を目指す学生向けにダンスの授業を実施したり、それに伴い協会所属のインストラクター達がこぞって地域にダンス教室を立ち上げ、さらには「中学校に入ると、ダンスが必須になりますよ。なので、小学校のうちから踊れる方がよいですよ。」と謳い、早期の取り込みに成功したのだそうだ。

たしかにうちの近所にも数年前からダンス教室ができ、幼い子供達が大勢通っている。

この差は、興味深い。
もちろん時代の流れによる影響も大きいと思うが。

今後、私ができることは?

まだ団体での活動にも参加しておらず、詳細や課題などは分からないが、現状を把握した上で自身のできることから積極的に協力していきたい。取り急ぎは情報発信とコミュニケーションの強化で活動の後押しができればと考えている。(本noteもそのひとつ。)

そして、地元大阪市でも是非取り入れられるよう継続して働きかけつつ、よりよい形で発展させていきたい。

また、私と同じように、着物人口の裾野を広げたい。と考えている企業や個人はもちろん大勢いらして、それぞれの切り口で活動をされている。

例えば、コロナを機に着物業界もオンライン化が一気に加速し、YoutubeやInstagramなどのSNSを活用して動画配信をする方々も急増した。

他にも、和洋MIXでの新しい着こなしの提案、イベント開催、洋服地で作る着物、着物をリメイクした洋服、より印象に残るセレモニーの提供など、さまざま。

手段は違えど、みんなの最終的な願いは、
おそらくひとつに繋がっている。

・  ・  ・

── あなたが最後に着物を着たのはいつですか?


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