田舎の線路、真ん中で手をあげる【フォトギャラリー短編】
電車は、1時間に1本。
もうすぐ廃線になりそうだと噂されて、10年くらいたつだろうか。
中学も高校も、この電車に乗って通った。
小さいころから電車が好きだった。踏切の音を聞くとわくわくした。
カンッ、カンッ、カンッ、カンッ。
遮断機が降りてくる。
カンッ、カンッ、カンッ、カンッ。
小さな粒だった電車が徐々に大きくなる。
ゴーーーーーーーッ。
過ぎ去った電車は、もう粒に戻っている。
中学校で習った遠近法がとてもよくわかる。
電車の粒にあらゆる線が集中する。
1時間に1本しか来ない電車の粒。
私はその画面の中心に大きく描かれている。
遠近法を使ったうまい構図だ。
線路の真ん中に立ち、手をあげる。
「ここに、私がいる」
自分の存在をかみしめる。
電車は来ない。
私が支配者だ。私が王様だ。
ワハハハハハハハ
声を出して、笑ってみる。
自分の存在の大きさを感じる。
無敵の存在、、、、、。
カンッ、カンッ、カンッ、カンッ。
急に踏切が鳴った。
後ろをあわてて振り返った。
カンッ、カンッ、カンッ、カンッ。
支配者は走って去っていった。
次の機会に、また支配者になろう。
(お礼)素敵な写真をありがとうございました。祖母の家の近くにあった線路をなつかしく思い出しました。
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