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市内RPG 60 カッパ4人衆

「これがカッパかーーーー」
戦士ヤスが、おかっぱ頭の4人を見て、拍子抜けした声を出した。

「失礼ね。これは、ボブって言うのよ。」
1番背が高い女性が応えた。180cmくらいはある。30代かな、40代かな。母さんよりは若く見える。

「こちら、背の高い順に、白烏ダンススタジオの白烏さん、黒鈴目さん、青木字さん、黄和士さん。」5cmずつ、小さくなっている・・・。
「よろしくーーーーー。」
4人は、声をそろえて言った。

「・・・・よろしくお願いします。」
ぼくらも、おそるおそる挨拶をした。
カラス、スズメ、キジ、ワシ・・・鳥シリーズだな、と心の中で思った。

「私たち、今度の小原合戦武道大会に出たいと思っているんです。ぜひ、稽古をつけてください。」
カナが、一歩前に出て、話しかけた。
「私たち、実践から離れてるから。大丈夫かしら。」
黒鈴目さんが言った。

話を聞くと、数年前4人は勇者パーティーを組んでいたらしい。パーティーを解散した後も、ダンスを通じて親交があるという。カナも小学生のころにダンスを習いに来ていたそうだ。

「呪文も忘れちゃったわ。」青木字さんが言った。

そう言った青木字さんは、右手を前にかざした。
「とっても熱いの。」

手のひらから、2mほどの炎が吹きあがった。
うわっ。ぼくらは、後ずさった。

「あら、まだいけるみたいね。」
口に手を当てて笑いながら、黄和士さんが言った。

「さすがレベル35――――」
カナは大喜びで手をたたいて、喜んでいた。

いや、いや、これは、、、ダメでしょ。ぼくらは、まだレベル16だよ。

あまりの差に、実践の稽古はなしということになった。
それぞれ、マンツーマンのお悩み相談になった。

ぼくは、元勇者のシロカラスさんと話した。
「勇者は主人公みたいだけど、本当はみんなが主人公なのよ。勇者は、それをまとめる引き立て役だと考えた方がいいわ。出しゃばらず、周りをよく見て、判断することが大事よ。そのための優しさと勇気をいつももたないといけないわ。」
「・・・はい。」

「あとは、少しずつレベルが上がるから、大丈夫よ。そして、レベルが低くても、仲間がいるから大丈夫。」
「・・・はい。」

きっとシロカラスさんは、まだレベルの低いぼくらを慰めてくれているのだろう。

魔王ってレベルいくつで倒せるのだろう。

1時間ほどぼくらは話していた。
戦士ヤスは、黒スズメさんと。
魔法使いヒラは、青キジさんと。
僧侶カナは、黄ワシさんと。

白カラスさんが話して、ぼくはうなずくことばかりだったけど、みんなで頑張ればいいということは伝わった。

他の3人はそれぞれの戦い方のこつや心構えを話してもらっていたようだった。

「話せてよかったでしょ。」
帰り際にカナが言った。
「そうだな。同じ悩みをみんな持ってるんだなと思った。」
戦士ヤスが言った。
「話を聞いてみることは大事だね。」
魔法使いヒラもすがすがしい顔をしていた。

さて、来週は、小原合戦武道大会。
いよいよだ。


(続く)

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これまではこちら。

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