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最上の語りは無言、樋口一葉【にごりえ・たけくらべ】岩波文庫チャレンジ74/100冊目

恥ずかしながら初めての樋口一葉。現在の5千円冊の人だが、結核のため24才という若さで亡くなった事も始めて知った。

言語化・語りが圧倒的な、足し算の文学が、男性文豪の雄なら、
無言の語りは心に迫る、引き算の文学は、女性の優


読むならまずは現代語訳

岩波文庫にこだわって読んできて、素晴らしい作品に数多く出会い、岩波が大好きになったが、本作は現代語訳付きが良い・・

というのも、
・雅俗折衷体
1文が異常に長い上、その中に我彼が混在

とんでもなく読みにくい😭

「にごりえ」「たけくらべ」の掲載順で読んだので、そのまま頑張って読んだ「にごりえ」は、樋口一葉を味わえたのか自信がない。実際、後であらすじ解説に目を通したところ、思い違いをしている箇所もあった。

普段大好きな岩波文庫にも初心者に厳しい所はあった。何でもかんでも岩波が良いという訳でもなく、岩波文庫は自分のレベルに合致した時に最高に面白いんだという事を認識。

なぜなら、原文をそのまま読むという体験は言わずもがな、原文にしかないリズムを味わうのも最高に心地良いから。

「たけくらべ」の方は1章ごとに現代語訳を確認しつつ読んだ(有り難しブロガーの皆様✨)ので、目一杯楽しめた😆

無言という最上の語り

教科書チャレンジ第一弾(51〜59冊目辺り)は、全て男性作家。

言語化・語りが圧倒的な、足し算の文学が、男性文豪の雄なら、
無言の語りは心に迫る、引き算の文学は、女性の優
だと思った。

優れている事を指す言葉は「雄」が使われるのが正しいけれど、女性の雄(オス)と書くと何だかしっくり来ない。「優」を使いました。

「にごりえ」も「たけくらべ」も「え!」とか「お!」というエンディングが用意されていた。それぞれ50ページ程の作品なので、内容は細かく触れない

現代語訳だとひょっとするともう少しページがあるのかもしれない。それだけ少ない言葉にたくさんの情報が詰まっている。

読む前はタイトルの意味も全く分かっていなかったが、読んでみると作品の内容を良く反映していると思った。だから読了後の今は、タイトルも好きだ。

どちらにも吉原遊廓という舞台が大きく関わっている。

「にごりえ」は、
吉原で働く(働かざるを得ない)人気情婦と、普通の家庭の妻、社会の片隅で生きるしかない2人の女によって描き出される、濁った社会。

「たけくらべ」は、
15、16歳の少年少女それぞれの世界、まるでたけくらべをしているかのような可愛らしい子供社会が描かれて微笑ましいが、その背後には切っても切れない吉原遊廓という女性にとっての闇が潜んでもいる。

言葉にならない言葉、無言語り。
言葉で描かれる以上に胸に迫ってくるのかもしれない。
無言という最上の語り。

省きすぎて書いていない場面も多い。森鴎外が絶賛して一躍有名になったという樋口一葉。いつか鴎外論にも触れてみたい。

相対評価★3について

チャレンジを通して行なっている相対評価。「たけくらべ」は文句なしの★5。無言語りが心に沁みてくる上に、昔ながらの遠回しの表現も好き。

「天井の鼠があれご覧、と指をさす」とは、人をからかったり、話を軽くあしらったりする時に用いた言葉。鼠が天井にいない現代では全く出会う事の言葉だけれど、嫌な事を直接言わない日本語の文化を感じた。

「にごりえ」の方は自分の理解力のなさも手伝ってか★3かな、という印象。こちらは後日現代語訳付きの本でちゃんと読んでみたい。

ということで、平均すると★4なのだが、もう少し解説が欲しかった箇所もあったので、岩波文庫としては★3としている。

調べてみたことなど

・吉原三大行事

春は夜桜夏は灯籠(玉菊灯籠)秋は仁和賀(俄/にわか)という風物詩があったとか。春は花魁道中、夏は名妓玉菊を偲んだ灯籠飾り、仁和賀というのは、色々な人が芸をしながら練り歩くパレードのようなもの。作中にもこれらの行事は登場する。

・大黒屋

質屋、両替商のイメージが強い大黒屋だが、本作では妓楼を経営していたとされる。20㎝前後、高いもので30㎝あったという花魁が履く高下駄(花魁下駄)を生業としていた大黒屋もあったとか。

・ちゅうちゅうタコかいな

子供が遊んでいる場面として登場(たけくらべ)した言葉。X(旧Twitter)では最近タコにツボっています・・という投稿をしていたのですが、そんな中タコを使った謎の言葉・・!

気になりすぎて語源を調べたところ、2つずつを数える数え唄だった!

にー、しー、ろー、はー、とー、ではなく、
ちゅう、ちゅう、タコ、かい、な、と数える。

諸説あるようだが、平安時代の双六で、「ちゅう」を2ゾロの4、「ちゅうちゅう」で8、8と言えばタコ!と言ったのが由来だとか。

おうち・やすゆきさんという方が作詞した歌・・可愛いな!(笑)

タコの足は8歩で〜
ねずみの足は4本で〜
ムカデの足はちゅうちゅうタコかいな🎵

歌詞の一部を抜粋

最後に、
なぜタコにツボったのかという理由は詳しく触れませんが、タコは足(腕)に脳を持っているという衝撃で、タコ本を読んだ事がきっかけです。

頭足類という名が示す通り、足(腕)にもニューロンが詰まっていて、無脊椎動物の中でこんなに大きな神経系を発展させた「進化史上、特異かつ重要な存在」でもあったのです!ちなみに心臓は3つあります!タコは賢いんです!!

・・とタコ熱はこれくらいにしておいて、

岩波文庫100冊チャレンジ、残り26冊🌟

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