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「ファミコンバカ」と呼ばれた5歳児は今でもゲームをしている (10)

前回はこちら ⇒ https://note.com/you1293/n/n134dba2fe63a
まとめ ⇒ https://note.com/you1293/m/mf3a3e862c18b

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キノコの先のワープ土管をくぐり、ワールド8へ降り立った僕。

8-1はこれまでのステージに比べ、とにかく長い。
ジュゲムのおかげでBダッシュができるようになってはいたものの、順調に進んでいても残り時間は容赦なく減っていく。

優雅に10コインなんて叩いていようものなら、すぐにあの悪魔の音が耳に飛び込んでくるのだ。

残り100秒を切ると流れるあのBGM。

「テレッテレー テレッテレー テレッテレー テッテー!」

あれほどまでに、人を急がせ、冷静さを失わせる音を僕は未だに知らない。
6歳の心臓は、あの音を聞くたびにバクバクと速くなり、手のひらからは大量の汗が吹き出してくる。

落ち着いてプレイすれば、それほど難しくない連続穴や、ただ飛び跳ねているだけの緑パタパタすらも、速くなった曲とともに登場するだけで驚異に変わる。

しかも、8-1にはキノコが存在しない。
一発食らえばアウト。慈悲はない。

しかも、中間地点なんていう、甘えたものも存在しない。
どんなに進もうとも、やられれば大きな城の前に戻される。

コインの誘惑を全て振り切り、途中にあるスターでできる限りの距離を稼ぎ、迫りくるBGMでコントローラーをびちょびちょにしながら、やっとのことでたどり着く最後の階段。


8-1階段


もう少し、あと少し!と頑張る6歳の心を、全力でへし折りに来る穴。
何人のマリオが、手の汗とともに散ったのだろう。


ワールド8。それは最終ワールド、大魔王クッパのお膝元。
その最初のステージ8-1はまさに、己との戦い。

マリオをプレイしたことがある人は、一度は必ずこう思った経験があるはずだ。

「焦らなければいける。次は本気出す。」

ファミマガで覚えたコンティニュー。
何度ゲームオーバーになろうとも、Aボタンを押しながらスタートすれば再チャレンジできる。

やられたらやり直す。繰り返しだ!


もう少し。あと少し。

焦る気持ちもだんだん抑えられるようになってきて、プレイにも余裕が出てくる。
スターで進める距離も増え、階段へたどり着く回数も増えてきた。

今回もゲームオーバーになりはしたが、確実にうまくなってきている。
次こそは。いける。

焦りという最強の敵を克服しつつある僕。

そんな僕の前に、新たな敵がどこからともなく現れた。


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油断という悪魔が、僕の頭からAボタンを一瞬、奪い去っていたのだ。


慣れと油断が一番恐ろしい。

ゲームはいつも、人生で大切なことを僕に教えてくれた。


(つづきます)

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