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生きる食事

〝腹が減っては戦ができぬ〟


誰もが知る言葉だろう。
誰が言った言葉なのかは定かでは無いが。


まぁ、これだけ有名な言葉ということは、皆が口を揃えて、

その通りだ

と頷くほど、共感できる言葉だからだろう。


自慢ではないが、私は、昔から、

とても美味しそうに食事する

そう言われてきた。

自慢ではないと見栄を張ったが、本当はグルメレポーターよりも美味しそうに食べられる自信がある。

私は、食ということに、人一倍興味があるのだろう。



そんな私にも、食べることを疎かにしている時期があった。

東京に上京して、慣れない空気感と、毎日闘っているおかげで、

何も食べたくない

そう思う時期があった。

食べたくないと思っていても、腹は減るもので、滝のように水を身体に流し込む毎日。


それでも、当たり前に腹は減る。
身体も肋骨が見えるほど、細くなった。

何か食べたい。
でも、何も食べたくない。

そんな地獄のような日々を、過ごしていた。


ある日、食べない私を気にかけてくれていた、私の上京先での唯一の友人が、味噌汁が入った鍋を持ってきた。


ありがとう

そう言葉にする前に、大きな声で怒鳴られた。

お前は、死にたいのか

と。

か細い声で、

生きたい

そう言った私に、

なら、死ぬほど食え。

初めて友人の真剣な顔を見た。


食べることを放棄する。
それは、生きることを放棄することなのだ。


私は、その時食べた友人が作った味噌汁の味を、一生忘れないだろう。


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