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とても綺麗な夜だった

〝これから先も幸せに暮らせますように〟



ふと、前を横切り、素早く消えていった星に唱えた。


流れ星に願い事を唱えると叶う。
誰が言い始めたものなのか。

こんなロマンスを広めた人は、きっと素敵な人に違いない。


私も何かを広めるとしたら。

そうだな。


願い事を唱えながら、石を投げる。

そんなことだろうか。



私の祖母の家の近くには、綺麗な川が流れている。

橋の上から川を覗くと、可愛らしいハート型の石があるのだ。


見つけた時は、私自身、自覚はなくとも、自然と目尻が下がっていただろう。



ハート型の石を見つめていると、私も素晴らしいロマンスを思いついたのだ。


足元にある小石を、そのハート型の石に目掛けて投げてみた。

初めて投げた割には、センスがいい。



せっかくなら、願い事をして投げてみようか。


また、命中した。



そういう競技を作ってしまえば、優勝できるのでは。



そんなことを考えていると、祖母が様子を見に来た。

私は、せっかくのロマンスを祖母にも教えた。


〝家族が元気でいられますように〟

そう言って、祖母も勢いよく、小石を投げた。

その小石も、見事に命中した。


びっくりするほど、祖母もセンスがある。


その日から、その場所に、訪れる度、願い事をする様になった。


驚いたことに、そこで唱えた願い事は、殆どと言っていい程、願いが叶うのだ。


生きることとは、こういう小さな幸せの積み重ねなのだと、ふと思った。


そんな事を考えていると、綺麗な星が、目の前を素早く横切っていった。

私は、咄嗟に願い事を唱えた。

〝これから先も幸せに暮らせますように〟



その日は、
とても綺麗な夜だった。










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