極短小説『俺の彼女』
「いやー、宇多田ヒカルが好きなんてセンスあるね。親の影響?」
「いえいえ。中学の頃たまたま聴いた曲にビビッときて、それからです。
でも、ファンと言えるほどではないですよ。有名なやつしか知らないですし」
「へぇ。何の曲が好き?」
「んー。悩ましいですけど、『あなた』とか『First love』、
『Stay Gold』も好きですね 」
「いいねぇ。俺はね『道』が好き」
「あぁ。いいですねぇ」
「それでさぁ、俺の彼女って知ってる?」
「えっ。俺の彼女?」
「そう。俺の彼女」
「私……知ってるんですか?」
「あっ、知らない?」
「でも……知るわけなくないですか?」
「……」
「……」
「あっ、あれね。宇多田ヒカルの曲のタイトルね。『俺の彼女』」
「そういうことですか。突然先輩の彼女の話になったのかと思いました」
「ははは。俺の彼女は、知らないよね?」
「ということは、いるんですね」
「うん」
「家に帰ったらきいてみます。『俺の彼女』」
了
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