大学を卒業して、極寒の氷河期の中なんとか就職した。恥ずかしながらその会社は母に知り合い経由で紹介してもらった会社で、決まったのはもうコートが必要な頃だったから、無職生活に片足を突っ込んでいたと思う。皆と同じように就職活動をし、自分が本当に勤めたいと思える会社の最終面接までは何度か行ったが、叶わなかった。まだフリーターという言葉が自由なライフスタイルを表していた頃だったので、プログラマーなどとしてアルバイトをしながら、ミュージシャンを目指そうぐらいに軽く思っていた矢先のことだ。
ニセコの冬は間違いなく一流だ。乾いた雪、息を飲む景色、そしてあの手この手で滞在客を満足させようとする宿泊施設や飲食店。ずっと冬であればいいのにと、妻とよく冗談を交わす。 だが、ニセコは、春も、夏も、秋も素晴らしいのだ。 春は草木が一斉に芽吹き、雪解け後の埃っぽさをリセットする。それにも増して、美しいのは野鳥の鳴き声だ。冬の間は多くの野鳥が南に移動するため、目にするのはお馴染みカラ族かアカゲラ、コゲラ、猛禽類の仲間だが、春には多くの野鳥が戻ってくる。セキレイは少しでも土がで
雪と温泉で有名なニセコだが、農作物も一流だ。「倶知安のジャガイモ」「蘭越のお米」などと比較して「ニセコの〇〇」が埋まらないのは、小規模な農家が多く、多様な品種が生産されているからだろう。ただ、食いしん坊たちには良く知られていて、夏にはメロンをはじめとして、トマト、キュウリ、カボチャ、お米などを求めて、多くの観光客が道の駅「ビュープラザ」を訪れる。ニセコの農家は農協に卸すだけでなく、自分たちで工夫を凝らして商品の価値を上げ、独自に売る方々が多い。これもニセコ町に活気がある理由の
クラフトビールを作るようになって、学校で習ったような知識が必要になることがある。あの頃は「そんな知識がいつ役に立つんだよ。受験のためだけだろ」と斜に構えていたが、今は本当に必要としている。比例は糖分を計算するのに日常的に使用する。風味に大きな影響を及ぼすpHはイオンやモル濃度の知識が必要になる。温度の制御にはカロリー計算の知識が役にたつ。大気圧下で1kcalは1Lの水を1°C上昇させるというものだ。あんなに嫌で5年も勉強することになった電気回路や三相交流の知識も、設備の導入や
以前いわゆる外資系のIT企業に勤めていたときに、社外のいろいろな人たちと付き合いがあった。取引先であったり、同じ業界の方々だったり、取材に来てくれる記者やカメラマンだったり、なんらかの営業に来た人たちだ。たとえ自分たちの商品やサービスをそれなりの料金を払ってくれる人たちであっても、見下した態度を取るような人は稀で、そんな人は所属先でもお荷物がられているように感じていた。営業担当に連れられて、障害でカンカンに怒っている顧客を訪問するという機会も何度かあったが、理不尽な扱いを受け
ありがたいことに、新聞や雑誌などが当社を取材してくれることがある。ご近所の方々や卸先の飲食店の経営者をブルワリーに招いて、試飲してもらったり、興味がありそうであれば器具を指差しながら醸造プロセスについて説明することもある。 そんな時に決まって聞かれるのは、「どうしてクラフトビールを作ることになったのですか?」ということだ。気を遣って聞いてくれているのだろうと思う。「ビールが大好きであちこち飲み歩きまして、自分で作りたくなったんです。」というような答えを期待されるのだろう。そ