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隣人のこと
ニセコの冬は間違いなく一流だ。乾いた雪、息を飲む景色、そしてあの手この手で滞在客を満足させようとする宿泊施設や飲食店。ずっと冬であればいいのにと、妻とよく冗談を交わす。
だが、ニセコは、春も、夏も、秋も素晴らしいのだ。
春は草木が一斉に芽吹き、雪解け後の埃っぽさをリセットする。それにも増して、美しいのは野鳥の鳴き声だ。冬の間は多くの野鳥が南に移動するため、目にするのはお馴染みカラ族かアカゲラ、コゲラ、猛禽類の仲間だが、春には多くの野鳥が戻ってくる。セキレイは少しでも土がで始めれば帰ってくるし、シメ、カワラヒワなどに続いて、ウグイス、アオジ、ツツドリなど、それぞれ特徴的な鳴き声が森を満たす。
中でも際立って美しい鳴き声を持つのは、クロツグミだ。少し悲しげで予測不可能な音階とリズムに聴き入っていると気が遠くなってくる。天国にDJがいるのであれば、きっとクロツグミが担当していることだろう。しばらく外で聴き惚れていると、センダイムシクイの「ツピツピヂー」と言う唐突で元気な、やや能天気な声で我にかえる。
緑に囲まれ暮らしていると野鳥は隣人のようであり、隣人には優しく接したいなと思う。私たちは野鳥の棲家を奪ってここに住んでいるわけだが、野鳥もうまく私たちを利用している節がある。人間の住処は虫にとって暖かい避難所で、野鳥は狩場として利用するのだ。私たちの自動車の下は冬は雪が少ないので、少ない餌を探したり、夏は涼むのに良い日陰だ。麻紐は巣の材料に持って帰られる。ヤマゲラさんは、これ以上家の壁に大きな穴を開けないようにお願いします。
シカやキツネだって、何度も訪れるうちに徐々に個体識別ができるようり、親近感が湧く。ケガをしているのを見るとたまらない思いになるし、痩せていればさらに心配だ。うちには彼らに荒らされるようなものはないので、ただ「ゆっくりしていって」と思うのである。