⑤うつ病患者かくみどくむし
実家に帰ってきた。
突然暇になったのだ。もうポイフルはいらない。
眠れない身体を携えて白紙のスケジュールにダイブである。
子供もいないのにインスタで知らないママの育児日記などを見まくっている。
(そんなわけないのだが)うつ病になる人数が決まっていて、それを「うつ神」が毎年選定しているのならこの親子ではなく私を選んでくれて本当に良かったと思ってしまう。
うつ病になって良かったなんて不謹慎だが、勝手にこの親子の身代わりをした気でいる。だいぶヤバい。
うつ神ありがとう。
(うつ病になるとたくさんのことが変わるのだが、そのうちのひとつとしてMacbookが「うつ神」という変換を覚える。)
ただひとつ気がかりなことがあった。
部屋の隅で存在感を主張してやまない緑の光。
そう、LINEだ。
私のやっていた学生団体は結構な人数がいたため、引退した今でも各方面からかなりの連絡が来る。
普通に相手していたら1日が終わるほど、大量の連絡がめまぐるしく送られてくる。
日に900件以上来るのだ。
考えてみてほしい。食事中、読書中、お風呂に入っている時でさえ常に誰かが部屋をノックしているのだ。
怖すぎる。
ドアを開けたら900人が一斉に話しかけてくる。
もはやテロだ。
もしくはサバクトビバッタの群れだ。
聖徳太子を90人連れてきてやっと対応できる人数だ。
自宅に聖徳太子が90人いるのもなんか嫌である。
冠位が90階まで必要になる。
「おい、ちょっとそこのエメラルドグリーン太子!」てなもんである。
彼らが主食とする赤福もそんなに大量に準備できる気がしない。
この案は却下だ。
太子でなければ未読無視である。
コナンくんに諭された後の犯人みたいなことを言うが、こうするしかなかった。
返したらまた返ってくるからこのループからは永遠に抜け出せない。
スマホの画面をそっと下に向けた。
今でも返していない連絡が数百件ほど溜まっている。
本当に申し訳ないが、もう返すことはないかもしれない。
ずっと閉ざしているうちに、もうそのLINEは過去の記憶をフラッシュバックさせるだけのパンドラの箱となってしまった。
そのうち何の気なしに返せるようになるかもしれないし、開けるより前にゼウスが回収しにくるかもしれない。
パンドラにせめてもの投げキッスをして寝るとしよう。
どうも。 サッと読んでクスッと笑えるようなブログを目指して書いています。