②河内、ちょっと裸踊りしてくれ


僕の所属する吹奏楽部には男子が5人いた。
演奏会で超ビッグミステイクをかました先輩が引退してからは、全員同学年の4人だけだった。
(先輩のミスは僕たちに「トロンボーンて、そんな音出るんだぁ!」と、ある種感動のようなものを与えてくれた)


パーカッション(打楽器)のS、ホルンのM、トロンボーンのK、そしてチューバの僕である。

入部時僕はパーカッションを希望したが、Sが「歯の矯正があるから金管は無理」と、ならどうしてこの部活入ったんだという謎の理由でごり押ししてきたのでSに譲ってやった。
結局Sは3年間歯の矯正をしなかった。
その頃はもうチューバに愛が芽生えていて、なんだか捨て猫をつかまされたような気持ちだった。
Sはとにかくよく寝た。ドラムに座っては眠り、ティンパニーの前に立てば眠り、移動の車の中で眠った。


Mは超高カロリーなお弁当を持ってくることで名を馳せていた。
1番華奢な身体をしているのに弁当のレベルが高い。


Kはなぜかモテた。このやろう。
得意のトロンボーンのスライド管を手からすっぽ抜かし、前方に座る当時僕の彼女だったサックスの子にトロンボーンミサイルをお見舞いしたこともあった。このやろう。
Kはコンクールを控えたある日、自転車で帰宅中、砂利道で派手にこけて腕を折った。
「先輩が近くにいたから泣かなかった」という話に当時の僕も「すごい」と賞賛を送っていた。


練習中、仕方なくマウスピース(金管楽器の口をつける部分)だけ吹いていたら、合奏後にに部長が「なぜかマウスピースの音がします」とちょっと怖めの声で告発するという事件もあった。
そりゃそうだろう。よく見なさい。
視線の先には腕を折ったKが寂しげにマウスピースと接吻を交わしていた。


今でもKとは交流があるが、SとMは消息不明である。




練習はめちゃくちゃ厳しかったし先生も怖かったし彼女ともいろいろあったけれど、ステージに立った時の感動は一生忘れない。
その一瞬の身震いが忘れられないから、また何十時間でも練習してやろうと思うのだ。


どうも。 サッと読んでクスッと笑えるようなブログを目指して書いています。