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「書くことについて」の特別授業に向けて

今年2月に、都内の私立中高一貫校にて特別授業の講師を務めることになった。授業は1回90分×3日間で、「書くこと」がテーマになっている。より具体的には、「言いたいことが伝わる文章」や「人の心を動かす文章」について生徒たちと考えていくことになる。

自由度が高い分、どんな授業内容にしようか悩ましい。しかし自分の職業や好きなことを通して教育に携われる貴重な機会なので、できるだけ生徒たちに学びや気付きを与えられる時間にしたい。それに、他のライターではなくせっかく自分にお声がけいただたのだから、「一般的で当たり障りのない話」というよりは、自分にしかできない授業をしたい。

ぼくは書きながら思考を整理していくのが好きなタイプなので、ここにあれこれと書いてみる。これから先生と打ち合わせする際のたたき台にもなるかもしれない。

そもそも、言いたいことや書いた内容が伝わらない理由って何だろうか? 「伝わる文章」と「伝わらない文章」の決定的な違いはどこにあるのだろうか? 簡単なようで、深い問題である。

「文章にしてみたものの、言いたいことが相手(読み手)にうまく伝わらなかった具体的な状況」を知れたら、考えやすくなりそうだ。「それならこう書けば良かったかもね」と示すなかで、普遍的なことが語れそうである。

このテーマについては追々考えるとして、授業は3回あるので、初回はまず、「ライター」という職業についての話と、ぼくがライターになった経緯の話をしたい。おそらくそうすることで、「書く仕事」をより身近に感じてもらえると思うから。

ひと口にライターと言っても、世の中にはいろいろな書く仕事がある。「記者」も書く仕事をする人間だけど、ぼく自身は記者ではない。では記者の仕事とはどういう類のものなのか。あるいは、「Webライター」と呼ばれる人たちが書くうえで特に意識することは何なのか(SEOを意識して検索上位にくる記事を目指す、など)といった話もおもしろそうだ。インタビューライター、ブックライター、脚本家、作家、ブロガー(「ところでブロガーってどうやって稼いでいると思う?」みたいな話もいいかも)などなど、書くことにまつわるいろんな仕事の話をしていくことで、生徒たちの「ライターに関する解像度」は上がっていく気がする。

ライターのやりがいや、文章の素晴らしさについても等身大の言葉で伝えたい。この仕事をしていて、どんなときに「嬉しい」と感じたか。どんなときに「書いて良かった」と感じたか。なんだか初心を思い出させてくれそうである。

3年ほど前、古代ローマの政治家ユリウス・カエサルが紀元前1世紀に書いた『ガリア戦記』を読んだ。2000年以上昔の人間が、どんなことを考えて行動を起こしたのか、そのなかでどんなことを感じたのか。遥か昔のことなのに、文字を通して時空を超えて興奮したり、共感したりできた。中国・春秋戦国時代の英雄や歴史を描いた司馬遷の『史記』を読んでいたときも、同じような感動があった。書いた文章が何年もあとの人の心を動かしたり、読み手に良い影響を与えたりする。そういうことが、ぼくは文章の素晴らしさのひとつだなと思う。

時代を超えて価値のある文章とまで言わなくとも、クラスメイトや周囲の人たちの心に何かを残せる文章を書けたら、それで十分素晴らしいことだ。

ぼくは2019年に突然難病を患った。半年間にわたる闘病生活を支えたのは、「いつかこの病気を乗り越えるまでの過程を文章にして、同じ病気で苦しむ人たちに希望を与えよう」という気持ちだった。そして実際に、後日病気についての長い文章を書いた。どのような症状でどんな辛さがあったのか、どのようにして病名がわかったのか、難病とわかったときの心情、治療の過程、闘病中はどんな生活で、どんなことが苦しかったか、あるいはどんなことが症状を和らげるか。そんな内容を赤裸々に綴ったnoteは、これまで多くの患者たちに読まれ、たくさんの感謝のメッセージをいただいた。書くことで誰かの役に立てたことは、純粋な喜びだった。

また、そのnoteがきっかけで翌年テレビ東京のドキュメンタリー番組にも出演した。「発信しても、何も起こらないかもしれない。でも、何かが起こるかもしれない」というのが、これまでのライター人生で学んできたことである。

書いた文章が起こした奇跡を挙げれば、キリがない。そのうちのいくつかでも、生徒たちに伝えられたら嬉しい。たとえばぼくが今回授業を行うことになったのも、以下のnoteを書いたところ、教員の方から突然メッセージをいただいたことがきっかけだった。

「受け身の生徒たちの心を突っつくような、刺激を与える講義にしたい」という先生の想いにも共感して、引き受けることになった。本当に、何が起こるかわからない。

ライターになった経緯に関しては、幸いキャリアを振り返るエッセイを少し前に書いたばかりだから、それを活かせる。母校での講演で使ったスライドも役立つだろう。自転車旅のブログを書き始めたのがきっかけで書く楽しさにのめり込んでいった、という話をしたい。

ところで、生徒たちはなぜぼくの授業を選択してくれたのだろうか? 言い忘れたが、今回の授業は選択制で、中1から高1までの計14名が選んでくれたそうだ。一人ひとり、どんな動機や理由があって選択したのかを知りたい。

書くことは好きですか? もし好きだとしたら、どんな文章を書いていますか? 本は好きですか? どんな本が好きですか? 書くことが苦手だとしたら、どんな点で難しく感じますか? 書いて何を伝えたいですか? 

いろんな質問を投げかけて対話してみたい。教えるというよりも、ぼくも生徒たちと一緒に楽しみながら考えていくような授業ができたらいいなと思っている。

最初はこんなところだろうか。少し思うことを吐き出せた。引き続き書きながら考えていきたい。

「もし私が生徒だったら、こんな授業をしてほしい」というご意見も大歓迎です。ぜひTwitterでコメントをお願いします。昨日兄に相談したら、「生徒たちがnoteアカウントを開設するところから始めて、そこに文章を書いてもらったらおもしろいんじゃない? 有料noteで稼げる仕組みについても話したらいい」という意見をもらいました。確かに時代に即していて良いアイデアだと思いました。

遅くなりましたが、明けましておめでとうございます!
本年もどうぞよろしくお願いします!

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