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特別な体験をしても発信せずにいられる人はすごい

海外旅行をしても、あるいは何か人が羨むような経験をしても、全然SNSで発信しない友人がいる。自己肯定感が高い人なんだなとわかる。よく「自分の経験をたくさん書いててすごいね」と言われるが、ぼくからしたら「書かなくても耐えられる」ほどに心が満足している彼ら・彼女らの方がよっぽどすごいと感じる。

以前、「HSPにはライターとしての資質がある」というnoteを書いたのも、この話に関係している。ぼくもHSP気質で、書くべくして書いている。でもできれば、「書いてもいいし、書かなくても満足できる」という心持ちになりたい。「文章の内容」だけを見れば悪くないかもしれないけど、「書く動機」には心理的に未成熟な部分が含まれていることがある。

自己肯定感の高い人、承認欲求の低い人は、何かすごいことをやっても、ひけらかさない。誰かに褒められたいわけじゃないから、わざわざ言う必要がない。だからSNSでも自分のことを書く頻度が少ない。でもぼくは違った。小さい頃から、ひけらかしたくて仕方がない。大学時代にブログを始めて、書くことを覚えたら、もう書かずにはいられない。結果的に書くのがうまくなった。

書くスキルがついたことは嬉しい。だけど、その背景となった自己肯定感や承認欲求の問題からは、そろそろ卒業したいと思っている。これはもう、性格に染みついていて変えらないものなのだろうか? それとも努力次第で変えられるものだろうか? というのが疑問だった。最近心理学の本を読みながら、多分、時間はかかるけど変われるはずだとわかってきた。

なぜ、なんでもかんでも発信してしまうのだろうか。それは「認められたい」という心理が働いているからだと思う。自己肯定感の高い人は、自分で自分を認めることができているから、そこで満たされている。でもぼくはそれができていないから、無意識に他者に認めてもらおうとしてしまう。そうすると、認められなかったときに傷つきやすいし、「もっと頑張らなきゃいけない」という心理が際限なく発生して、いつまでも心の平穏が訪れない。また、その裏には「何か立派なことをしないと認められない」という条件付きの自己肯定感が存在している。

「自己肯定感を高めたいなら、まず必要なのは自己受容だ」と先日読んだ本で教わった。自分を認めるのに、「条件」をつけない。うまくいこうが、うまくいってなかろうが、「どんなときも自分はこのままで素晴らしいのだ」と思うこと。ぼくにはその訓練が必要だとわかった。感情を抑圧せず、素直に吐き出す。ネガティブな感情を無理にポジティブに持っていこうとするのではなく、そのまま吐き出す。そして「こんな自分でも丸ごと人に愛される存在なんだ」と心の底から信じることができれば、心持ちは徐々に良い方向に変わってくると思う。

ときどき会う友人は、よく「この前◯◯に行ってきたよ」と海外旅行の話をする。そのたびにぼくは驚かされる。行ったことに対してではない。「行ったのに投稿しないでいられること」に驚くのだ。もしぼくが海外へ行ったら、現地からひたすら発信するのは間違いなく、それどころか行く前から「◯◯へ行く理由」みたいなnoteを長々と書いているだろう。何か特別な体験をしたら、書くのが当たり前だと思って過ごしてきたから、そういう友人と会話していると、いつも「大人だなあ」と思う。

今はまだ、「発信しなくなったら、人が離れていってしまうんじゃないか」という不安が残っている。これまでライターとして発展できたのも、こうした歪んだ性格の恩恵ではあった。だから「心が満たされて全然文章を書かなくなったらどうなってしまうんだろう」とか余計な心配をしているけど、そのことは満たされたときに悩めばいい。でも、「書いてもいいし、書かなくてもいい」という心境になれたときこそ、本当の意味で人がついてくるんじゃないか、という予感もしている。そこに向かっていきたい。

追記:
何名かの方からTwitterでコメントをいただいて、気付いたことがあります。今回は(自分の場合では)自己肯定感や承認欲求の問題として取り上げましたが、それはあくまでいち側面に過ぎず、「自分のことについて書きたい理由・書きたくない理由」には人それぞれ、いろいろなケースがあるのかなと思いました。

「発信はしたいけど、忙しくてできていない」というケースもあるし、その人の置かれた状況(社会的立場や、家族や周囲の存在による制約など)によって「書きたくても書けない」「書きづらい」というケースもありそうです。それらは文章力や自己肯定感の話とはまた異なるし、だけど確実に影響のある要素だと思いました。もっとたくさんの方に心境を聞いてみたいです。

音声配信(stand.fm)でも話しました。

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