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転職活動を始める前に退職日だけが決まった話(転職体験記 前編)

私は一度転職したことがある。
前職は大手総合化学メーカーの研究開発職だった。
人間関係は良好、上司にも恵まれていたし、大企業が故に研究設備も整っていた。

ではなぜ転職したのか。
ざっくりいうと「人間関係をリセットしたくなかった」「いまの仕事に慣れて成長が遅くなってきた」というのが理由だ。

それだけならよくある転職体験かもしれない。
ただ、私の体験に珍しい点があるとしたら「転職活動を始める前に退職日が決まったこと」だった。
今回は退職の経緯と「なぜ退職したのか」という点を書いてみる。


転勤を断り、転職活動前にやめることだけが決まった(ただし退職日は当月末)

退職したのは社会人9年目のころ。
私が勤めていた会社は大企業にありがちな「3~4年でリーダー、10年弱で係長、15年で管理職・・・」といった年功序列。
そして役割が変わるときに異動するのもよくある話だった。

ただ当時の私は担当テーマだけが変わり、部署はずっと同じだった。
一方で「そろそろ転勤ありの異動が来そうだなぁ」と漠然と思っていた。

そんなある日、部長に呼び出された。
しかも個室。
「これは・・・」と思ったら案の定、異動の通達。
異動先は関西から大きく離れた地方都市。

「〇〇くんにはここで別のテーマを主導で進めてほしい」
「うーん、そうですか」
ある程度予想はしていた、そして結論も決まっていた。

「それならちょっと仕事は続けられませんね」
ポロッと出た言葉。
この言葉が私の今後を決定づけた。

「そうか・・・」と部長は一言。
その後は私がなぜそう思うのか、これからどうするのかを話していた。
初めて部長の若い頃の話や動き方、価値観を詳しく聞いた。
そして面談自体は穏やかに終わった。

次の日、人事からメールが来た。
中身は「退職のお手続きのご案内」
「まぁそうだよな、色々手続きしないとな」と思ってメールを読むと「退職日:3月31日(当月末)」の一文が。

メールを見た日:3月8日
退職日:3月31日
( ゚д゚) ・・(つд⊂)ゴシゴシ  . (;゚ Д゚) …!?

当時の私はまだ転職サイトに登録すらしていない。
ただ、約20日後に退職することだけが決まっている。
これが私の転職活動のスタートだった。

私が退職を選んだ理由

先はどうなるか分からない。だけど決断するなら今だ。

転職活動開始後の話はまた今度書くとして、ここでは私が異動を拒否した理由について書いてみる。

理由1:会社での今後のキャリアが見えてきたから

私の前職は大企業で年功序列。
入社時にどの部署に配属されたかである程度キャリアパスが決まっていた。
もちろん突出した人が花形の部署に抜擢されることはあったけど、それは稀な話。

キャリアパスが見えるということは、良くも悪くも将来を予想できるということ。
私自身が在籍していたのは化学分析系の部署で、各拠点を転々としながら最後は子会社に出向というパターンが多かった。

約10年在籍して、様々な社員の方が似たようなキャリアを経ているのを見ると、自分も同じ道をたどるんだろうなと思った。
ただ「定年までの長い会社員人生の道が決まっている」ことが私にとっては正直面白いとは思えなかった。

理由2:仕事の「やり方」に慣れてきて成長が止まっていると感じたから

転職の決め手になった理由の1つは「成長が止まってきた」と感じたから。
私自身は元々仕事で成長したい気持ちが強く、「できること」を増やしたいという思いがある。

一方で会社の仕事は定型化されたものも多くて、研究開発でも同じ。
まだ世の中に無いモノを作る、材料の新たな使い道を開拓する、新たな製造法でモノを生産する。
テーマ自体は新しいのだけど、テーマを遂行するための手順は似ていることが多い。

「どんなデータを取ればいいか」
「どうやってデータをまとめるか、報告書をどんな感じに作るか」
「誰に何をいつまでに報告する必要があるか」
開発対象は違うのだけど、「仕事の進め方」は段々分かってきた。
そして仕事の進め方と同時に「手の抜き方」も分かってきてしまった。

若手の頃は分からないなりに考え、手を動かして必死に研究をしていた。
それがいつの間にか「ここまでやればいいだろう」というラインにギリギリ到達すればいいと思うようになっていた。
データサイエンスの適用など、自分なりに新しいことを勝手にやっていたけど、一方で若手の頃の全力さがなくなっていた。

もちろんときには手を抜くことも重要だ。
すべての事柄に100%の力を注ぐとガス欠になってしまう。
とはいっても、まだ成長途中である自分なのに「手を抜く」ことが当たり前になっているのは非常にまずい。
それが漠然とした「働く環境を変えないと」という思いになっていた。

理由3:これまでの社外の人間関係を保ちたかったから

転勤すると人間関係がリセットされる。
これこそが転勤を拒否した一番の理由かもしれない。

大学時代を含めると関西在住歴は15年くらい。
長く住んでいるおかげで、大学や会社以外の友人もたくさんできた。
むしろ会社の同期は結婚や異動などで会いにくくなり、社外の友人と会う機会のほうが多くなっていた。

私はこの人間関係を失いたくなかった。
もちろん転勤しても会うことは出来る、ただ圧倒的に頻度は下がる。
また、転勤した先で新たな人と出会うことも出来る。
だけど、ゼロからまた構築するのは大変だ。

異動したてで慣れない環境の中で人間関係も再構築する。
そんな器用なことが私には出来る気がしなかった。
それなら今の人間関係を大事にしたかった。

普段から将来のことを考えていたからこそ、いざというときに決断できる

普段の考えがいざというときに現れる

私が転勤を機に退職を決意したのは以上の理由からだ。
ただ、転勤を命じられたときにとっさに判断できたのは「普段から将来のことを考えていたから」だと思う。
たぶん普段考えていなかったら、私は成り行きで異動に従っていた。

自分は5年後どうなりたいのか、自分は何を大事にしたいのか。
漠然でも良いから普段から考えるクセを付けておく。
そしてたまに書き出してみる。

私にとっては、1つの企業に残り続ける安定性よりも人間関係や成長し続けることのほうが大事だった。
ただ、人によって大事にしているものが変わるのは当然のこと。
だからこそ世の中や周りの人の意見を聞くだけじゃなくて、自分はどうしたいのか考えることが大事。

多くの人が転職、もしくは会社に残るという決断によって良い人生を歩めることを願う。

追記
後編をアップしました。

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