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【ダンス経済】路上で踊るおじちゃん(ブラジル/サンパウロ)

ブラジル・サンパウロのオフィス街を横切るパウリスタ通りという大道路で、たくさんの通行人の中、一人だけ明らかに奇妙な動きをしているおじちゃんがいた。
目立つ柄シャツを着て、首からスピーカーをぶら下げて、音楽にノッテ踊っている。投げ銭用に白い袋が地面に置かれている。白髪のおじちゃんだからお世辞にも上手いと言えるダンスではなかったが、「音楽と踊れることを楽しんでいる」そんな第一印象を持った。

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ナンダこの人は⁉ 彼を突き動かしているナニカがある。こんなに高齢で路上ダンス経済をつくっている人は初めて見たので声をかけてみた。
「こんにちは! おじちゃん面白いねー! 1週間に何日こうやって踊ってるの?」
「5日だよ」
「なんでこんなことしてるの?」
「僕は昔ダンサーだったんだ。いくつになっても踊っていたいし、踊ることの素晴らしさを伝えたくてはじめたんだよ」
「1日いくらくらい稼ぐの?」
「50~100RB(約1800 ~3500円)くらいだね」
「他に仕事は?」
「してない」
「お金よりも大切なものって何?」
「健康と良い神(Good God)」
 彼の軽やかなダンスのように、僕のすべての質問にも軽やかに答えてくれた。握手をして、僕は自分のポケットの中の小銭をあげて、「ありがとう」と最後にお互い言い合ってこの場を後にした。

ダンス経済

彼の姿を見た通行人たちは笑みを浮かべていたし、優しい眼差しで彼を見つめる人もいた。彼はそれらのリアクションもちゃんとわかったうえで、オフィス街のど真ん中で舞っている。そんな彼の姿を見て、僕は日本神話の芸術・芸能の神様「天宇受売命(あまのうずめのみこと)」の「神楽舞」を思い出した。

〜天宇受売命の物語〜

世界を照らす太陽神である天照大神が、弟の悪行に困り果て、岩陰の洞窟(天岩戸)に隠れてしまったので世界は闇に包まれてしまいました。天照大神をなんとか外に連れ出す方法を神様たちは考えます。「そうだ、天照大神も楽しそう〜と羨むようなお祭りを開けば、興味を持って岩陰から出てくるだろう」
そこで天宇受売命(あまのうずめのみこと)は、みんなの前で狂ったように舞いました。会場に居る神様たちは大爆笑し最高に盛り上がりました。神様たちの歓声と笑い声は、洞窟に隠れる天照大神に届きます。「私が居ないのになんで盛り上がっているのかしら?」と天照大神は気になって天岩戸から出てきました。その隙に天照大神を外に引っ張り出して、世界は再び光に包まれたのでした。
世界の光を復興させるキッカケとつくった「神楽舞(神様が楽しむ舞い)」を披露した天宇受売命は、それ以降、芸術・芸能の神様となりました。

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