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[63] はじまりの記憶

急膨張が
欺瞞の安息とゆりかごの安眠からの
めざめを促す
広がる巨大な赤熱は
はじまりの記憶
鮮やかな大爆発の光は
封じこめられていた記憶
刻みこまれていた 確かな記憶
ぼくは思い出した
ぼくは思い出した

はじまりのいのちから
孤独のさだめ
産声あげた微生物たちは
進化のために
絶え間ない合唱を繰り返してきたのだろう
基本的には 不信だけれど
ぼくは待ち望んでいる
ぼくは待ち望んでいる
信じられる
たましいの開闢を
幾星霜
待ち望んでやまない

からだのいちばん 奥のほう
広大な宇宙の記憶につながっていること
ずっと
知らないふりをしていた

ちいさな ちいさな
あたまのなかに
こころのなかに
起死回生でよみがえる
はじまりの記憶
かんどうの記憶
ぼくはだれにも語らないだろう
ぼくはだれにも語らないだろう
いずれ
深い眠りに落ちてゆくのだとしても


※幻想宇宙でうたう星々
(耳をすませば星の声 前編)

お読みいただきありがとうございました。なにか感じていただければ幸いです。