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攻撃回数②-空白の30秒間?

パス数、ポゼッション率より攻撃回数に着目しよう。

ほぼ全ての球技では自らの攻撃が終われば、相手方に攻撃権が移る。例えば、バスケットボールでは、ざっくり言えばシュートの成否にかかわらず、自らがシュートをすると今度は相手のシュートを守備しなければならない。テニス、卓球などのネット系のスポーツにおいては、明白である。この事象に着目して、近年バスケットボール解析では「ペース」という指標にハイライトがあたっている(佐々木クリス、『NBAバスケ超分析 語りたくなる50の新常識』、2022年、株式会社インプレス)。
その指標からの分析をサッカーに当てはめてみようと言うのが本項目の主題である。
(以上、前回まで)

サッカーにおける攻撃回数とは、何か?Football LABのマッチレポートを見てみよう(https://www.football-lab.jp/kobe/report  以下、全ての元データはFootball LAB参照)ここでは、2024年6月16日に行われた神戸×川崎戦を取り上げる。ページを下までスクロールして頂けると、詳細なスタッツが上がっている。その下に「スタッツの定義について」というリンクがあるので、それを見てみると、攻撃回数とは、「ある特定の状況において例外はあるものの、ボールを保持してから相手チームに渡る、もしくはファウルやボールアウトで試合が止まるまでの間を1回の攻撃とする」(https://www.football-lab.jp/pages/about#jstats
ざっくり言えば、自チームがボールを相手から奪い、攻撃の意図をもってアクションを起こした回数である。ここで、攻撃の意図という主観的要素を入れざるを得ないのは、サッカーには「クリア」という攻撃権を放棄する事象がかなりの頻度で起こるからである。
例えば、この試合で神戸は14回、川崎は22回クリアをしている。

さて、この試合の攻撃回数を見てみよう。神戸は109回、川崎は103回攻撃をしている。筆者は、はじめてこのデータを見たとき、「え、そんなに多いの?」と思ったが、冷静にこれを試合時間90分で割ってみよう。すると、1分間に2.3回、30秒間に1.2回、攻守が交代している。
ここで、あなたがこの試合の試合中継の録画を見ていたとする。試合が退屈になって、とりあえず30秒間スキップしたとする。すると、相手チームがボールを保持していたのに、いつの間にか自チームが得点がしていて、焦って30秒間巻き戻したという経験をしたことがないだろうか。ここでは、相手からボールを奪う、得点する。そして攻撃権が相手チームに移ると、攻守が2回交代している。

ここで、お題に戻るわけであるが、この30秒間をパス数、ポゼッション率で分析してみよう。この試合では、データによると神戸が368回、川崎が508回パスを行っている。これを30秒間にならすと、神戸が2回、川崎が2.8回パスをしたことになる。また、ボール保持率で分析すると、この30秒間で神戸が12.5秒間、川崎17.5秒間、ボールを保持したことになる。このデータのみの分析で私が見逃した30秒間の何が分かるだろうか。少なくとも、川崎がボールを握っていたのだなぐらいである。
これを攻撃権という視点から分析してみると、少なくとも私が30秒間スキップすると、攻撃が一回入れ替わり得点するかもしれないし、あるいは失点するかもしれないということである。それを見逃す機会費用を支払っているのだ(ここでは、攻撃権を説明するため、得点率、失点率の話には入っていない。得点する確率が非常に低いことを前提に、機会のみに話に絞っている。確率の話は後に詳細に分析する。)

以上、今日はここまでだが、バスケットボールやテニスほど明確で頻繁ではないが、サッカーでも攻守交代が意外に多く起こっているのである。

一度、試合を30秒間スキップしてみてください。30秒後には全く違う様相が観察(spectate)できますよ。


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