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電子書籍で基本書を読む方法(司法試験)

法律の本って難しいのです。

裁判例なんて、判決文が踏まえているあらゆる事情を盛り込んで書かれているものだから、厳密さ、正確さに関しては安心して読むことができるのですが、読みやすさという点では、この世にこれほど読みにくい日本語の文章はあるのだろうかと思うほどの悪文になってしまいます。

これまで、趣味でたくさん、英語の大学の教科書を読んできた僕の素直な感想とすれば、これは日本語という言語の持つ、制約・不備のためと思わざるを得ません。同じ内容が英語なら、修飾語がどこに掛かるか確認したり、文の切れ目がどこか、どれとどれが同列に比較されているかなどの事項に、文法以外にあれこれ考えなくて良いのにと思ってしまいます。

「普通に」意味を読み取るために要するエネルギーが違いすぎます。法律の文章の場合、唯一の救いは、裁判官なり研究者といった書いている人が、明確な意図を持って文章の構造を作っているはず・・という信頼感のみです。ほんとしんどいです。

学生の頃は、大学の先生が、学術書は英語の方が読みやすいよ~と言うのを聞いて、そんなん東大・京大出て、大学で教えているような先生だからそう思うんやろと聞き流していましたが、長年無職で時間があるに任せて英語を勉強して来た僕の実感としても、「その通り」としか言いようがない、という実感です。

多分、学習の初期で、英語の語彙が日本語の1/4くらいしかない段階でも、学術書の内容は日本語よりも英語の方が遥かに読みやすいと思います。大学受験を終えたばかりだとかなり大変だと思いますが、それから1年くらい、集中的に英語に取り組んだくらいで、学術書は英語の方が読みやすくなる、というのが、僕の個人的な実感です。


しかし、日本の法律の勉強をするのに、日本語の教科書や条文、判例を元にしないという選択肢はあり得ないです。英語で書かれた日本の法律の本なんて、各法律科目に一冊あるかないか程度だと思いますし、直近数年以内に出版されたものといえば皆無でしょう。

日本語で書かれた教科書から、正確に、確実に内容を読み取る必要があります。ずっと、どうすれば良いのか色々試しながら読み進めていますが、これがなかなか難しい。

以前書いたように、電子書籍等から文章をコピペして、改行とインデントを付して、文章の読みにくさを補うという方法はかなり有効でした。たぶん、六法の条文に関しては、素読が必要な主要な条文は全て、記事に書いた方法で加工して、何度も参照することになると思います。

しかし、教科書の文章まで全て同じように加工するというのは、さすがに時間が掛かりすぎる!

紙の書籍を購入して、色ペンで下線を引いたり、マーカーで強調するというのが一番でしょうが、後々何度も全文検索して利用したい僕としては、電子書籍以外使いたくない。

いったいどうすれば良いか・・というのが、ここ数日悩んでいることです。


以下は、今読んでいる『基本行政法』の一節です。行政事件訴訟法第9条2項の意義について書かれた文章です。

この条文は、従来の判例法理を確認するという側面を有することから、これによって従来の判例よりも原告適格を拡大することにつながるのか、疑問に思われるかもしれない。これについては、次の2点を指摘することができる。

第1に、判例によって示された考慮事項は、直接には、そこで問題となった事案および個別法についての判断であって、他の事案や個別法にも当然に妥当するわけではない。これに対し、行訴法9条2項は、一般的に(あらゆる事案・個別法について)上記①~④の考慮を求めたところに、大きな意味がある。

第2に、とりわけ上記④が一般的な要考慮事項として明記されたことは、原告適格の拡大にとって重要な意味をもつ。もともと、処分の根拠規定が個々人の個別的利益を保護する趣旨を含むか否かについて、当該規定自体の解釈によって決しうるという考え方(322頁)には無理があり(小早川・行政法講義下Ⅲ260頁)、水掛け論に陥ってしまう。そこで、上記④の被侵害利益の内容・性質等を考慮に入れることにより、根拠規定が保護する個別的利益を切り出すという方法(塩野・行政法Ⅱ138頁)が、有用と考えられる。その際、建前上は、あくまでも根拠規定を解釈するための要素として被侵害利益を考慮する(下の図でいうと、被侵害利益を見て直ちに原告適格の有無を決するのではなく、視線をもう一度根拠規定に戻して、当該利益を根拠規定が個別的利益として保護していると解すべきか否かを判断する)のであるが、作業の実質としては、被侵害利益の内容・性質を決め手として原告適格の有無を決することになる。その意味で、実質的には、「法的保護に値する利益説」に近づくともいえる(塩野・行政法Ⅱ138頁)。「法的保護に値する利益説」は、「法律上保護された利益説」のいわばアンチテーゼとして、原告適格の拡大に大きな役割を果たしたと考えられるが、現時点では、上述のような形で、「法律上保護された利益説」が「法的保護に値する利益説」の考え方を実質的に取り入れることにより、両説の対立は解消されつつあるといえよう。

僕の短期記憶力と文章処理能力だと、一読で意味を読み取るのは無理です。そこで、コピペして改行・インデントを付したり、マーカーを使ったりして、読みやすくする必要がある。

Kindleの電子書籍だと、黄色、青、赤、オレンジの4色使える。どうするか、というのが今の課題です。

どうしますか?

良い方法があるなら知りたいです。

これまで色々試してみて気付いたこととしては、

  • 重要な箇所にマーク、という方針は使えない。そもそも、最初に読んだとき、読み返したときで、そうやってマークした箇所の重要性は変わっているかもしれないし、一度マークした箇所が邪魔になって、二度目に読むときかなり辛い

  • また、著者の側で初めから、太字にしたり、色を変えていたりしてくれていることもある。一貫した配慮の元に強調された重要事項が、自分が恣意的に付けたマークに埋もれて読みにくくなるのは良くない気がする。

  • テキストの全ての文章について、読みやすさと重要事項を両立した方針で、マークできる方針があるようには思えない。

などなど、色んな困難があります。紙の本ならまだ、やり方があるとは思いますが、電子書籍の4色のマーカー限定というと、本当にどうすれば良いか分からないなあというのが、正直なところです。

今のところ落ち着いた方法は、重要事項に関しては諦めて、文の構造を明示するためのマークに徹する、日本語が読みにくい理由の一つ、主語と述語が離れ過ぎているという点を補うために、文章の着地点を黄色のマーカーで明示すること。黄色で明示した大きな構造の中に小さな構造があるときは、それを同様の方針で、青のマーカーで明示する、といったくらいです。

以下のようになりました。


何とか読めてはいますが、辛いなあ。紙の本にしようかなあ、と、心が挫けそうです。

ちなみに赤のマーカーは、後で読み返したいときのブックマーク的意味合いです。要らなくなったら消す予定。

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