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条文に改行とインデントを追加して読みやすくしてみる(法律学習)

(2023/10/12:少し追記・訂正)

条文素読のため、ウェブで公開されている条文をコピペして、適当な改行を付して読みやすくする方法について、考えてみました。

やり方が固まって来たので、ここでまとめてみたいと思います。

初めに実例から。民法第548条の3に、次のような条文があります。

(定型約款の内容の表示)
------------------------------
第548の3条
------------------------------
定型取引を行い、又は行おうとする定型約款準備者は、定型取引合意の前又は定型取引合意の後相当の期間内に相手方から請求があった場合には、遅滞なく、相当な方法でその定型約款の内容を示さなければならない。ただし、定型約款準備者が既に相手方に対して定型約款を記載した書面を交付し、又はこれを記録した電磁的記録を提供していたときは、この限りでない。
2、定型約款準備者が定型取引合意の前において前項の請求を拒んだときは、前条の規定は、適用しない。ただし、一時的な通信障害が発生した場合その他正当な事由がある場合は、この限りでない。

これを、次のように書き換えました。

(定型約款の内容の表示)
------------------------------
第548の3条
------------------------------
 - 定型取引を行い、又は
 - 行おうとする
定型約款準備者は、
  - 定型取引合意の前又は
  - 定型取引合意の後
 相当の期間内に
 相手方から請求があった場合には、
 遅滞なく、
 相当な方法で
 その定型約款の内容を
示さなければならない。

ただし、
定型約款準備者が
 既に相手方に対して
 定型約款を記載した書面を
交付し、
又は
これを記録した電磁的記録を
提供していたときは、
この限りでない。

2、定型約款準備者が
 定型取引合意の前において
前項の請求を拒んだときは、
前条の規定は、適用しない。

ただし、
 - 一時的な通信障害が発生した場合
 - その他正当な事由がある場合
は、この限りでない。

このような書き換えを行う目的は、法律の条文が読みにくいいくつかの理由を、改行や記号を付すことで緩和することです。

法律の条文が読みにくい理由には、まず、

1、一文が長いため、主語と述語が離れすぎること

があります。例えば、第一項の主語と述語を【】で囲むと、

「定型取引を行い、又は行おうとする【定型約款準備者は】、定型取引合意の前又は定型取引合意の後相当の期間内に相手方から請求があった場合には、遅滞なく、相当な方法でその定型約款の内容を【示さなければならない】。」

のようになり、「定型約款準備者は・・示さなければならない」という文の骨格の間には多くの修飾語や、目的語が挟まれています。

もう一つ読みにくい理由は、

2、多くの項目が列挙される場合、どれとどれが同列に比較されているのか、分かりにくいということです。


以上を踏まえて具体的にどういった方法で、冒頭に示したような書き換えを行っているかというと、まず、文章を、大まかに次のようにインデントして、配置します。

主語
 修飾語句・目的語等
 ・・
述語

条文を並び替えるということはしません。書かれた順に、上から下、左から右に書いて行きます。

ただ一つ違うのは、主語ー述語というセットの間にある修飾語等を適宜改行して分割し、その冒頭にスペースを付して、それらが、あらかじめ把握した主語ー述語というペアの副次的要素であることを明確化していることです。

これで、主語ー述語構造が明確に視覚化できる上、間の語句についても細かく分割して、各語句の意味を味読出来るようになります。

こうして、主語ー述語が離れすぎているという、条文が読みにくい理由の1を緩和することができます。(短い文章ならそのまま、主語ー修飾語等ー述語と、加工せず一行で放置するのも可です)


次に、2についてですが、列挙されている項目の冒頭を、さらにインデントした上で、「-」を付して、箇条書きっぽい見た目にします。

条文で用いられる接続詞には、

  1. 英語でいう「and」にあたる、「及び」と「並びに」

  2. 英語でいう「or」にあたる、「若しくは」と「又は」

があります。

そして、1の「及び」は「並びに」よりも細かいグループを指し、同様に2の「若しくは」は「又は」よりも細かいグループを指すという一貫したルールが、法律の条文にはあります。


使い方は、

「及び」で結合される細かい要素が複数ある場合は、最後にだけ「及び」を付ける。

(追記:「かつ」が用いられることもあります)

A及びB
A、B及びC
A、B、C及びD

これらのグループを結合する場合に、「並びに」を使う。

A、B及びC並びにX、Y及びZ

これで、(A、B、C)(X、Y、Z)といった、2つのグループが記述されたことになります。

3つ繋ぐことも出来ます。

A、B及びC、L、M、及びN並びにX、Y及びZ

これは、

(A、B、C)(L、M、N)(X、Y、Z)の3つのグループです。


「若しくは」「又は」についても同じです。

(追記:階層がない場合、「又は」が単独で用いられることの方が多いです)

A若しくはB
A、B若しくはC
A、B、C若しくはD

これらのグループを結合する場合に、「又は」を使う。

A、B若しくはC又はX、Y若しくはZ

これで、(A、B、C)(X、Y、Z)の2つのグループです。

3つだと、

A、B若しくはC、L、M、若しくはN又はX、Y若しくはZ

これは、

(A、B、C)(L、M、N)(X、Y、Z)の3つのグループです。

そして、以上に挙げたような「及び」「並びに」「若しくは」「又は」の用法に従って、これもインデントも含めた箇条書きに直します。

A、B及びC、L、M、及びN並びにX、Y及びZ

なら、

 - 
  - A
  - B及び
  - C
 -
  - L
  - M及び
  - N並びに
 -
  - X
  - Y及び
  - Z

A、B若しくはC、L、M、若しくはN又はX、Y若しくはZ

なら、

 -
  - A
  - B若しくは
  - C
 -
  - L
  - M若しくは
  - N又は
 -
  - X
  - Y若しくは
  - Z


以上の作業を行うのに元の文に追加するのは、スペースや改行、「-」だけで、他には元の文に対して何かを加えたり、削ったりということはしません。

なので、加工した文章が間違っていることに後から気付いた時はいつでも、書き直すことが出来ます。

・・と、こんなことを試しつつ、今、宅建の勉強のため、宅建業法の条文を素読しています。

宅建業法の条文は、民法なんて比べものにならないくらい複雑な構造をしていますが、上記の方法で何とか読めてます。

条文や、複雑な構造の裁判例などを読む際、工夫されていることがあれば是非、教えていただきたいです😊

(続く)


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